ガイドが選ぶ2016年の映画ランキング
All About映画ガイドの斎藤香氏・ヒナタカ氏の両名による、2016年に公開された映画のベスト10をランキング形式でお届けします。邦画、洋画、アニメーションに良作がそろった今年、二人が選んだタイトルは……?2016年のベスト映画:第10位
斎藤 香氏
原作のイメージ通りの役者を配した見事なキャスティング! このキャストを抑えただけで半分成功したような映画じゃないかと。就活をめぐる若者たちの生き方が立ち上がってくる感じがスクリーンから感じられ、痛いところをグサグサついてくるセリフの数々も印象深い。芝居のような演出が好き嫌い分けたみたいだけど、私は好きです。
ヒナタカ氏
日本のゾンビ映画の最高傑作と断言していいでしょう!R15+指定納得のグロテスクさ、これ以上のない恐怖感を与える演出、ド派手なアクション、役者陣のハマりっぷり、ラストの感動と、娯楽とホラーの魅力がすべて詰まっています!
2016年のベスト映画:第9位
斎藤 香氏
やっとレオナルド・ディカプリオがアカデミー賞主演男優賞受賞した記念作! レオの演技はもちろんですが、作品としても素晴らしく、寒々しさや厳しさや残酷さと美しさが共存する映像が素晴らしかったです。ここまでやって受賞できなかったらレオは映画界を去ってしまうんじゃないかと思ったりしたので、受賞は本当に良かった!
ヒナタカ氏
前半はクスクス笑えるコメディだったのに、“一気に突き落とす”あの瞬間からに戦慄のサイコホラーに変化!主演の森田剛の殺人鬼はトラウマものの恐ろしさ。原作マンガからの改変もこれ以上のないものでした。ヒロイン役の佐津川愛美の濡れ場と並行して描かれる、とある“対比”も凶悪すぎです。
『ヒメアノ~ル』公式サイト
2016年のベスト映画:第8位
斎藤 香氏
2016年の後半いちばん楽しかった映画。エディ・レッドメインが好きだってこともあるけど、ファンタジー映画として良作ではないかと。ハリー・ポッターつながりのネタもあり、続編を期待させるセリフも含んでいて、早く続きが観たくてたまらない。衣裳や美術など『ハリー・ポッター』シリーズ同様にしっかり時間をかけて作り上げた世界観は見事です。
ヒナタカ氏
息子が通り魔事件を起こしてしまった家族の物語です。主演の三浦友和を始め、とにかく不快な気分にさせる人物描写ばかり。観た後に軽く体調を崩してしまうほど、いい意味で最悪の後味を残してくれました。地獄がこの世に偏在していることを教えてくれる傑作ですが、二度と観たくはありません。
2016年のベスト映画:第7位
斎藤 香氏
団地暮らしの母のまわりに集まる娘夫婦、ダメ息子と元嫁、息子が織りなす日常スケッチ。私も団地育ちなので、団地の間取りとか、ご近所付き合いとかもう懐かしくてたまらなかった。また阿部寛のダメ息子っぷりが絶妙で。ホントせこいんだよね、やることが。で、それを見抜かれているところが笑えてかつ憎めない。何度でも観たい作品です。
ヒナタカ氏
ホラー描写が怖い! ラストへ向かう伏線の数々がすごい! ユングのシンクロニシティに言及するなど、大人が唸るシーンが満載! しんのすけやみさえの優しさにもついついホロリ。エンドロールの絵にも注目。悪夢に悩んだことがある、すべての人におすすめです。
2016年のベスト映画:第6位
斎藤 香氏
愛娘4人が国際結婚をしたために起こる騒動を描いたフランスのコメディ。生活習慣や考え方もそれぞれ違う婿たちに振り回されるパパとママの困惑ぶりがもうかわいいやら可笑しいやら。末娘の結婚相手のコートジボワール人の両親の強烈キャラも捨てがたい。爆笑しつつ最後は「家族っていいな」と思わせてくれる暖かさも〇。
ヒナタカ氏
細部まで計算し尽くされた脚本の妙、“影”を重視した絵作り、全編に漂うイヤ~な空気にやられました。役者もすべからく素晴らしく、特に“疲弊していく妻”を演じた筒井真理子は賞を5個くらいあげても誰も異論はないレベル。『葛城事件』とはまた違うタイプの、家族という名の地獄がここにあります。
2016年のベスト映画:第5位
斎藤 香氏
誘拐されたのちに出産したジョイ(ブリー・ラーソン)が息子(ジェイコブ・トレンブレイ)と閉じ込められていた小屋を脱出してからの世界を描いた衝撃作。脱出しても好奇の目で見られて苦しむ母と息子がどう生きていくのかどうにフォーカスしたところが斬新でした。人は成長し、世界は変わることを描いた作品。苦しみのあと希望の光が見える映画です。
ヒナタカ氏
アイルランド製のアニメです。絵本のようなかわいいキャラクターたちがなめらかに動き、唯一無二の美しい世界を見せてくれました。ジブリ映画の影響が随所に感じられますが、それでいて圧倒的なオリジナリティも備えています。ぜひ、親子でご覧になってほしいです。
2016年のベスト映画:第4位
斎藤 香氏
こうの史代の原作漫画のアニメ映画化。広島の呉を舞台にお嫁にきたすず(声:のん)の毎日が綴られていく。戦時中の物語の中にもユーモアや生活の営みをしっかり描き、戦争の中で生きる市井の人々の姿を描く。変に感動を煽らないところが上品だし、落ち着いた色合いの作風も好き。エピソードを丁寧に積み重ねていっているからこそ胸を打つ作品に。
ヒナタカ氏
戦争が起こった世界であっても、懸命に日々を過ごしているキャラクターたちが愛おしくてしょうがありませんでした。のん(前:能年玲奈)の声がほわほわした雰囲気を持つ主人公と絶妙にマッチしており、アニメでしかなし得ない表現も満載です。何度観ても、きっと新しい発見があるでしょう。
2016年のベスト映画:第3位
斎藤 香氏
1980年代のアイルランドを舞台に家庭崩壊といじめの真っ只中にいた男の子が、恋をしてバンドを組んで希望へと走り出すプロセスの爽やかさ!「イケてない毎日を変えるのは自分だ、未来を作るのは自分だ!」とのメッセージがツンと涙腺を刺激します。『はじまりのうた』のジョン・カーニー監督が放った傑作、カーニー映画にハズレなしです!
ヒナタカ氏
新海誠監督の過去作品を顧みて、調整に調整を加えた結果、圧倒的なエンターテインメント性に満ちた大傑作が生まれました。怒涛の展開と音楽はこれ以上なくエモーショナル。その風景は現実よりも美しく見え、現実でもそのような美しさを探してみたいと思えるものになっています。リピート鑑賞する方は、ぜひオープニングにも注目してみてください。
2016年のベスト映画:第2位
斎藤 香氏
アイルランドからアメリカへ渡った少女が女性に成長していく姿を恋愛、友情、姉妹愛のエピソードのひとつひとつが彼女の心情を救いあげ、どんどん輝きを増していく。ヒロインのエイリシュを演じたシアーシャ・ローナンが素晴らしく、メソメソ泣いていた女の子が女になっていく変化をグラディーションのような芝居で観せていく様が圧巻!
ヒナタカ氏
差別や偏見の問題を描いた作品の多くは大人向けですが、本作は子どもにもその問題を深く考えられるようになっていました。メッセージ性が素晴らしい、ミステリーとしてもおもしろい、キャラクターがかわいくて惚れる、ゲラゲラ笑えるシーンもある、黒幕の描写がすごすぎる……と完成度の高さには並々ならぬものがありました。デートでも、家族でも、大人がひとりで観ても、きっと大満足できるでしょう。
2016年のベスト映画:第1位
斎藤 香氏
引退した世界的な指揮者(マイケル・ケイン)が、英国女王の依頼、親友の映画監督との友情、愛娘との関係などを経て、人生の再スタートを切るまでを描く。人生を振り返り噛みしめたあと、再び前を向いて歩み始めるのもありなんですよ、何歳になっても。The Retrosettes Sister Bandの歌唱シーンから心わしづかみにされ、最後の「シンプルソング」まで圧倒的な映像美と役者陣の名演にノックアウトされました。
ヒナタカ氏
テーマは“繋がりたいのに繋がれない”という“コミュニケーション”。劇中には、自分と性格の似ている、自身の人生と重なる登場人物がきっといるはずです。本作を観れば、コミュニケーションで悩んだことのある自分や、恨んだことのある誰かを、少しだけ肯定することできるかもしれません。音楽や、アニメーションならではの表現も素晴らしく、一生大切にしたい作品になりました。