「雷雨ぜんそく」で死者発生…日本で起こる可能性は?

稲妻

雷雨によってぜんそく発作が起こることがあります

先日、オーストラリア南部で「雷雨ぜんそく」と呼ばれるものが発生し、数名の死者を出す被害となったことが報道されました。センセーショナルに報道されたため驚いた方も多いかもしれませんが、実は「雷雨ぜんそく」という正式な病名はまだありません。現時点では、居住地域で起こった雷雨に伴い、喘息発作が引き起こされることで、海外では「thunderstorm asthma」と呼ばれているようです。欧米を中心に確認されていますが、2016年12月現在、日本での報告はありません。

雷雨ぜんそくの原因物質は花粉? 水分や電場の影響とは

まだ解明されていない雷雨とぜんそくの関係ですが、現時点では原因物質は、花粉やカビ、特に花粉なのではないかと考えられているようです。では、なぜ雷雨が起こることで、花粉による重い喘息症状が引き起こされるのでしょうか? その要因は、花粉の2つの性質にあると考えられています。

■花粉は、水分を含むことで膨張・破裂する性質がある 
花粉は水を含むと、大気中との浸透圧の差によって膨張・破裂します。雷雨により、多くの水が付着した花粉は、破裂してアレルゲン(アレルギーを起こす成分)を放出します。通常であれば、花粉の体内への侵入は鼻毛などで防がれていますが、破裂した花粉のアレルゲンは気管支に侵入できるほどの小ささに分割されます。花粉症の患者がこれを吸い込み、気管支までアレルゲンが侵入することで、気管支の内腔を狭める反応が生じ、喘息発作が引き起こされると考えられています。

■花粉と電場の関係
花粉の破裂に関わっているのは、水分だけではありません。海外で発表された論文によると、雷雨による強い電場(電界)の影響も挙げられています。雷雨の電場によって、空気中の様々な成分が電気を帯び、花粉を破裂しやすくしていると考えられているようです。雷雨が起こってから20~30分の間で、地上におけるアレルゲン濃度はかなり上昇すると言われています。
(D'Amato G先生が発表した論文でAllergy 2002:2111-16と Eur Respir Rev. 2012:21:82-87より引用)

補足ですが、雷雨そのものが喘息発作を誘引するわけではありません。雷雨が起こったからと言って、雷雨ぜんそくをむやみに不安がる必要はないでしょう。まだ明確ではありませんが、気候や花粉の種類、人種などの影響も今後明らかになってくるかもしれません。

雷雨ぜんそくの対策…花粉や雷雨の時期と喘息発作の関係

今まで喘息症状がなかった人でも、花粉症を持っていれば誰でも喘息発作を発症する恐れがあり、時折、重度の喘息発作に至る場合もあります。

花粉症の人は、自分が何の花粉アレルギーがあるのかを知っておくと良いかもしれません。また、花粉症があっても雷雨中に窓を閉めて屋内に居た人には、喘息発作は起こらなかったようです。つまり、原因である花粉の多い時期で、かつ雷雨がある時には、窓を閉めて屋内に留まることが第一の予防になります。

たとえば日本に限定して考えると、スギ花粉のピークは2~4月。しかし日本では2~4月に激しい雷雨になることは少ないため、過剰な心配はいらないともいえるかもしれません。

ただし、日本では同様のケースが今後も100%起こらないとは言えません。可能性がある以上、予防と対策はしておきたいものです。日本で仮に起こるとすれば、雷雨の多い「夏場」。飛散する花粉は「イネ科」です。もちろん雷雨かどうかに関わらず、花粉症症状のひどい方は、該当する花粉の飛散時期にはなるべく屋外に出ないことが大切です。花粉症についてはもちろん自己判断ではなく、主治医と相談の上で判断するようにして下さい。イネ科花粉症については、「イネ科花粉症の症状と治療」を併せてご覧下さい。

喘息患者のうち、約70%が鼻炎を持っている

咳

雷雨ぜんそくに限らず、咳が止まらない、呼吸が苦しいなどの症状がある場合は早めに近くの病院を受診しましょう

また、鼻炎は喘息発症の危険因子と考えられています。喘息患者のうち、70%程度の人が花粉を含めた季節性アレルギー性鼻炎、もしくはダニを含めた通年性アレルギー性鼻炎を持っていると報告されています。

日本におけるアレルギー性鼻炎の有病率は全体の39.4%。そのうち、スギ花粉によるアレルギー性鼻炎が26.5%、スギ以外の花粉で15.4%、ダニを含めた通年性アレルギー鼻炎は23.4%となっています。つまり、アレルギー性鼻炎を持っている人は、喘息を発症する確率が高いといえます。

気候、煙、香り、霧…喘息の悪化因子となる現象や物質

気管支喘息の喘息発作には、曇天や台風、気温の急激な変化が関わっているとも言われています。石崎達先生(アレルギー,1974)の報告によると、前日に比べ3℃以上の気温低下があった場合に喘息発作は増加するそうです。こうした気象との因果関係により起こる病気は、気象病と言われています。気象病については、「天気が悪くなると症状が悪化する「気象病」ってなに?」を参考にしてください。

一方で、気圧だけでなく、タバコの煙、線香、蚊取り線香、たき火、花火、調理時の煙、ストーブの煙などを吸い込んだ場合にも喘息発作は誘発されます。また、化粧品、ヘアスプレー、接着剤、殺虫剤、生け花などの強い香りのするものや、ただの霧や入浴中の湯気でも喘息発作を誘発する恐れがあります。このように喘息発作は、大気汚染物質(PM2.5やPM1.0)を含めて、空気に含まれる様々な物質により誘発され得るのです。PM2.5と喘息の関係については、「PM2.5による気管支喘息・気管支炎」、また、黄砂と喘息との関係については、「黄砂が飛ぶとアレルギーが悪化、対策は?」を参考にしてください。

さらに高温多湿であれば、空気中のダニの成分やカビが増加し、それを吸い込むことで喘息になったり、喘息発作を起こすこともあります。「ダニ・カビアレルギーの環境整備」を参考に、日々、ダニやカビに対する環境整備を行ってください。

以上のように、「雷雨ぜんそく」はまだ正式に確立していない病名です。まだ不明な部分が多いですが、万が一に備え、考えられる原因と対策程度は知っておくと良いかもしれません。今回の雷雨ぜんそくに限らず、咳が止まらない、息苦しいなどの喘息に似た症状があれば、まずは自分の環境を見直し、必要に応じて医療機関を受診してアレルギー検査などを受けられることをお薦めします。
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