ずいぶん前から社会問題化しているものの、なかなか解決しないのが「ゴミ屋敷」です。
2006年7月に東京都中野区で「ゴミ屋敷」の住人が逮捕されたというニュースもありましたが、そこまでしたのは極めて異例のことでしょう。
中野区の事例は、ゴミによる悪臭を「公害」とみなしたうえでの対応だったようですが、同じような「ゴミ屋敷」があっても周辺住民は我慢を強いられているケースが大半かもしれません。
全国の市区町村を対象に国土交通省が実施したアンケート調査(2009年)では、ゴミ屋敷が「発生している」との回答が250市区町村、ゴミ屋敷について「特に問題が大きいと認識している」との回答が72市区町村でした。
もっとも、アンケートに回答している市区町村は約67%で、国土交通省の調査に対して3分の1の市区町村が回答しないのはどうなんだろうと気になりますが……。
それはさておき、近年は「ゴミ屋敷」のゴミについて、行政代執行により強制撤去ができる旨の内容を盛り込んだ条例を定める事例が徐々に増えつつあり、自治体によっては指導に従わない住人の氏名公表や過料徴収もあるようです。
しかし、何がゴミで何がゴミでないのかの判断は難しいところです。まわりの誰が見てもゴミでしかない品物も、本人はゴミだという認識がまったくない場合もあるでしょう。
臭いについても同様です。「悪臭公害」とみなされた上記の中野区の事例でも、逮捕された本人は「臭わないはずだ」と主張していたのだそうです。
悪臭にしても見た目の雰囲気や印象にしても、それぞれ個人によって考えかたや感じかたの度合いが違うため、たいへん難しい問題を孕んでいます。
「ゴミ屋敷」の問題だけではありません。事件になるようなトラブルはそれほど多くないかもしれませんが、騒音問題をはじめとして、大問題になるかならないかの境目で起きているような住民トラブルは、日本のあちこちに数え切れないほど存在しているでしょう。
住宅を購入するときには、何らかの住民トラブルが起きていないか、売主や近隣の人に聞いてみることも必要です。
しかし、聞かれた当人が正直に答えてくれるのかどうかも難しい問題です。「資産価値の低下」を恐れ、居住者同士が口裏を合わせてトラブルの存在を隠していたマンションの事例も過去にはありました。
トラブルを隠したからといって資産価値を維持できるわけではないのですが、第三者からはなかなか分かりづらいのが「住民トラブル」の厄介なところかもしれません。
トラブルの度合いも数値化できないだけに、「気にならない程度」といわれればそれ以上は追求できないケースも多いでしょう。人に聞いて単純に納得してしまうのではなく、自分の「目と耳と鼻」で注意深く観察してみることも大切です。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年3月公開の「不動産百考 vol.9」をもとに再構成したものです)
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