アドバイス1 前倒しで買い替えを検討してみる
マンションの買い替えについて考える前に、現状の家計収支を整理しておきます。収支では月14万円を貯蓄に回すことが可能。年間にして168万円ですが、そこから、固定資産税や自動車税、車検等のクルマのコスト、さらには冠婚葬祭費用やその他不定期な支出を支払っているはず。年間で「預金口座の残高が100万円は増えている」とのことですから、概ねそのくらいは貯蓄できていると考えられます。では、この収支で買い替えをしたらどうなるか。
まず、ご相談者が計画されているように「住宅ローン減税が終わった、その5年後に完済し、買い替える」とすると、2027年の買い替えとなります。10年固定が終了後も金利が変わらないなら、2027年のローン残高はおよそ350万円。これを貯蓄で完済するとして、そのとき貯蓄は先のペースが維持されれば今より1000万円増え、合計1700万円になっていますから、金額的には十分捻出は可能です。
ただし、なぜこの時期まで買い替えを延ばすのか、その理由が不明です。現在所有のマンションを売却するのであれば、すでに築年数が今年で33年ですから、11年後にどの程度で売却できるのか。金利も上昇している可能性があります。さらに言えば、住宅ローン減税についても、利用は一度限りではありません。利用条件さえ満たしていれば何回でも、また買い替えた住宅にも適用されます。したがって、貯蓄ペースは高いのですから、もう少し前倒しでもいいのではないでしょうか。
例えば5年後。貯蓄は500万円上乗せされて1200万円、マンションは売却して手元に500万円入ったとします。このときローン残高は830万円ほどですから、貯蓄から330万円を充てて完済すれば、手元に残る資金は870万円ほどとなります。
問題は買い替える物件の価格ですが、現在のローンの支払額と同程度を目安に考えてみます。返済期間は20年、ご主人62歳のときとします。金利1.5%とすると、900万円借りて、毎月の返済額は約4万3500円。手元に300万円残すとすると、上限として諸経費込みで1400万円台の物件は購入できることになります。
アドバイス2 無理のないローンなら買い替えは可能
買い替えについて気になるところとしては、まずこの貯蓄ペースが維持できるかという点があるかと思います。相談者の方が心配されているように、非正規雇用で退職金もないということですから、確かに不安はあります。しかし、そういう中でも年間100万円を貯めることができています。多少の収入ダウンなら、家計管理でしっかり対応できるのではないでしょうか。また、児童手当は中学生までですが、小学校に上がれば今より教育費は下がり、より貯蓄しやすくなるはず。しかも、先の試算は、ご主人の月収が低いときを想定しての数字。年間で見れば実際はもっと貯蓄できている(あるいはその可能性がある)と思います。もちろん、物件価格を下げることで、その分、貯蓄からの捻出額が抑えられますから、そういった調整でリスクの軽減を図ってもいいでしょう。
では、買い替え後の教育費の準備はどうでしょうか。
大学進学を私立文系とすると、大学にかかる費用は4年間で平均390万円。学資保険の満期金が250万円ありますから、140万円用意できれば、学費に関してはカバーできることになります。年間10万円別途貯めると、お子さんが高校3年のときにちょうど用意できますので、これは問題ないでしょう。
そもそも、買い替え後の住宅ローンの金額を今と同程度に抑えれば、年間100万円の貯蓄は可能となりますから、奥様が定年を迎える60歳まで1400万円貯めることができます。買い替え時に出した自己資金の残り300万円と合わせて1700万円。これはこのまま老後資金となりますが、もちろん、その一部を繰上返済に使っても構いません。
例えば、買い替えの3年後に100万円、返済期間短縮型の繰上返済を行えば、返済期間は2年5カ月短縮され、支払利息は約26万円削減できます。これだけでも十分効果があることがわかるはずです。
アドバイス3 保険料が割高でも割り切るしかない
もうひとつ、家計リスクを抑える意味で、長く働くことが大切になってきます。できれば夫婦とも公的年金が支給される(現行の制度では)65歳まで働きたい。老後への不安もあるでしょうが、その対策としてもっとも効果的な対策が、より長く働いて収入を得ることなのです。最後に保険について。確かに現時点で、ご主人の死亡保障は不足しています。状況にもよりますが、少なくとも1000万円(団体信用生命保険に加入しているとして)は確保したいところ。健康面が理由で新たに保険に加入できなかった場合、引受基準緩和型というタイプの保険なら加入できる可能性はあります。ただし同じ保障内容でも一般の保険商品より保険料が割高。そこは、ある程度割り切って考えるしかありません。
そもそも、医療保障も含め、すべて保険でカバーするという発想は、どんな人にも無理があります。とくにご主人のようなケースでは、保険で保障を得られないのなら、その分を貯蓄でカバーするという気持ちで今後も家計管理に励むことが賢明でしょう。
相談者「めーめー」さんより寄せられた感想
不安定な仕事の為、無謀だと言われるかと思っていましたが、貯蓄ペースを誉めて頂いたり前向きな回答を頂いて少し不安が軽減されました。保険については私も貯蓄で賄うという考え方です。除菌後5年経てば加入できるようなのでそれから考えてみても良いかなと思いました。これからも夫婦で資格を取得するなどして長く働けるよう、体調管理と家計管理を続けていきたいと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
【関連記事をチェック!】
32歳、住宅購入で6700万円のローン。今後が不安
44歳子持ち。3200万円の住宅ローン返済で赤字家計に
32歳貯金150万。家を買うため親から借金しますが赤字
38歳、貯金1400万円。3000万円の住宅ローンで不安に