江見シェフがガストロノミーシーンに復活!「エスピス」
2016年10月、神戸にオープンしたフランス料理店「エスピス」
店名の「ESPICE」とは常に円を描きながら上昇を続ける「螺旋」(「SPIRAL」スピラル)と「空間」(「ESPACE」エスパス)を掛け合わせたフランス語の造語です。これから進化していくレストランの店名にピッタリなスパイス(「épice」エピス)の効いた店名ですね。
「エスピス」の内装
大阪で開かれたフェアでグージョンさんの料理に感動した江見シェフはすぐに弟子入りを志願し、その3年後には実際に許可され渡仏して、日本人の誰もいない環境で多くを吸収されました。
その後パリの3つ星「アルページュ(Arpège)」でも腕を磨かれて、2011年に帰国後は「エルデアンジュ芦屋」のシェフを任され、その後は神戸の「ノット」で将来の構想を練りながら、飛び立つ機会を窺っておられたのです。
店内には「坪庭」もあります。
江見シェフを含めてキッチンには4人、フロアには大阪のグランドメゾン「マルメゾン」で長年ソムリエを務められた吉間崇行さんを始め3人、と計7人という充実した布陣です。しかしながら気取ることなく「子供さんも大歓迎」とのこと。小さい頃から本物のフレンチを気軽に楽しんでもらいたいという江見シェフのポリシーからなのです。
「エスピス」ディナーコースより
パンの盛り付け方も面白い
それでは以下、ディナーコース8,000円の料理から御紹介していきます。
・はじまり
アミューズその1「ブーダンノワール」
上写真のアミューズは「土」に見立てた根菜パウダーの上にリンゴを葉巻のように巻いて作った「ブーダンノワール」! 筒状の中にはブーダンノワールのムースと、リンゴのジュレが入っており、口の中でコク・甘味・酸味がバランスよく調和していきます。一般的なブーダンノワールは野趣的で重いことが多いですが、この葉巻状のブーダンノワールはとても軽やかで上品な仕上がりに。
それに「ブーダンノワール」は(豚が土の上で生きているので)どこか土っぽいイメージがありますし、この盛り付け(表現)も実に良いアイデアですね。
こちらは「ムール貝」を使ったタルタル
野菜を使ったタルトレット
・かに 青りんご セロリ
かに 青りんご セロリ
また、あわせるソースには、胡瓜やアボカドを使ったガスパチョと、甘味のある蟹の身を引き立てる程好くビターな抹茶のパウダーを配置。
蟹の身と蟹ミソの二種、どちらも美味しいのはもちろん、素材を活かした繊細な調和感が素晴らしい。思わず唸ってしまう美麗な盛り付けも素敵ですし、職人芸と言うべき神経の行き届いた完成度の高さもお見事! まさに「蟹」を使ったフランス料理の傑作と言えるでしょう。
・ホタテとクルミ 泡雪
ホタテとクルミ 泡雪
ホタテのスフレは滑らか食感で雲のような泡のような軽やかさ、ホタテの持ち味もピュアなまでに活かしてありますし、ここまで隙の無い完璧なスフレ料理は初めて。このホタテのスフレだけでもその美味しさに驚きますが、菊芋のコンソメに白菜の甘味が付与されることで、さらに味わいに奥行き・多層感が生まれるのです。フランス料理は足し算料理だということを改めて実感できる逸品でした。
・サワラ キノコの香りと焦げたピュレ
サワラ キノコの香りと焦げたピュレ
そしてサワラの周りにはジャガイモの輪、黒ニンニクと焼き茄子のピュレ、キノコのデュクセルを詰めた芽キャベツ、さらにポルチーニ茸とマッシュルームのパウダーという手間と時間をかけた圧倒的なディテール! これぞフランス料理! ここまでフランス料理を突きつめていながらも全体的な構成と味わいに今の時代にフィットした軽やかさとエレガントさ兼ね備えているところも、さすがですね。
・鴨 Forest
鴨 Forest
焼きたての鳴門金時!
ちなみに、この料理はシェフではなくサービス(支配人)の吉間さんがデクパージュされます。こういうやりとりもフランス料理らしくて良いですね。ホテルのグランドメゾンで勤務されてきたベテラン吉間さんならではの安定したデクパージュ技術を間近で見ることができるのも「エスピス」で食事をする時のお楽しみの一つといえるでしょう。
・ブルーチーズのクレメダンジュ
ブルーチーズのクレメダンジュ
メイン料理の後のチーズ(フロマージュ)もガストロノミーに相応しい料理として出すシェフの情熱の高さとアグレッシブな姿勢には脱帽ものです。
・チョコレート ほうじ茶 オレンジ 人参
チョコレート ほうじ茶 オレンジ 人参
チョコレート好きにはたまらない一皿
球体の中にはクランブル、人参とオレンジのピュレ、アーモンドクリーム、ほうじ茶のアイスクリーム、スペルト小麦、などが入っており、トロトロのチョコレートと混ぜ合わせて食べると様々な食感・味わいが楽しめるようになっています。まさに「ショコラ・シュルプリーズ」と名付けたくなる珠玉のデセールです。
・La terre
La terre
師匠ジル・グージョンさんへのリスペクトが生み出す料理
こちらは「ルクセンブルク」の白ワイン。フランスワインだけではなく、様々な国のワインを揃えられています。料理に合わせたワインペアリングもあります。
「ジル・グージョンさんの教え「伝統を受け継ぐことがフランス料理人の使命」を守って、そこから自分のこだわり、遊び、そして我儘を手間と時間を惜しまず皿の上に表現して行きたい。そして神戸の地で神戸を盛り上げて行きたいのです」と決意を新たにされる江見シェフ。
「エスピス」という店名に込めた螺旋力で進化を続けてジル・グージョンさんのお店を超えるレストランになることを期待したいですね。
<DATA>
・店名: ESPICE(エスピス)
・所在地:神戸市中央区中山手通2丁目3-25 メゾンエスプリ生田1-1
・アクセス:神戸市営地下鉄「三宮駅」より徒歩約3分
・地図:Yahoo!地図
・TEL:078-333-1919
・営業時間:12:00~14:00(LO)、18:00~21:00(LO)
・定休日:不定休