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心臓麻痺とは? 医学的には存在しない「心臓麻痺」という死因

【医師が解説】「心臓麻痺」という言葉は、実は医学用語には存在しません。心臓はそもそも麻痺しないのです。多くの映画やドラマなどでもよく死因として耳にしますが、実際の医療現場では使わない言葉です。「心臓麻痺」とは正確にはどんな症状か、解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

そもそも心臓は「麻痺」しない? 麻痺とはどのような状態か

心臓麻痺とは? 

心臓突然死の場合、胸痛などを訴えることが多いです

「麻痺」とは、脳や脊髄から筋肉へ命令を伝える末梢神経までの経路に異常が起こり、自ら動かす筋肉の動きが悪くなったり、動かなくなってしまう状態を言います。主に神経の病気によって起こることが多く、結果的に筋肉が動かなくなってしまうのです。

麻痺は、一般的には「自らの意思で動かせる筋肉が動かなくなること」を指すことが多く、手足が動かなくなる「四肢麻痺」と呼ばれるのものが一般的です。また、脳梗塞の後に右手などの一部が動かない時にも「麻痺」という言葉を使います。神経には知覚神経と運動神経の2つがありますが、知覚神経の異常で知覚障害が起こってしまった場合には、「知覚麻痺」と言うこともあります。
 

心臓麻痺とは……医学的には心室細動や心筋梗塞で、全身に血液を送れない状態

一方、心臓というものは、それを作っている1つ1つの心筋細胞が、自律的に収縮したり拡張したりしている臓器です。多くの心筋細胞が同時に収縮・拡張することで、全身に血液を送っているわけです。皆さんも、自分の意思で脈拍を速くしたり、遅くしたりすることはできませんよね? 脈拍は自律神経によって速くなったり遅くなったりしますが、自律神経の異常で心臓が止まることはありません。

フィクションの世界でよく言われる「心臓麻痺」とは、医学的な用語ではありません。あえて言えば、心室細動などで心臓が細かく震えた状態になったり、心筋梗塞によって全身に血液を送れなくなってしまったりした状態を指していると考えられます。心臓が麻痺してしまうのではなく、心臓の機能が突然正しく動かなくなってしまうことで、全身に送るべき血液が送れなくなり、全身の機能が停止することで突然死する状態を、心臓麻痺と表現することが多いようです。
 

「突然死」とは発症から24時間以内の死亡……心臓停止を起こす原因は?

それでは次に、「突然死」という概念について考えてみましょう。突然死とは、病気の発症から死亡まで、24時間以内に死亡する場合を言います。特に心臓が原因で突然死してしまうケースを、「心臓突然死」と言います。心臓突然死を前述の通り「心臓麻痺」と言っていることが多いですが、心臓麻痺は医学的な用語でないために死因として記載されることはありません。心臓突然死の場合は、急性症状が起こってから1時間以内と短時間で死亡するため、医療現場では「瞬間死」と言われることもあります。

一般に、突然死の原因は、クモ膜下出血、脳梗塞、脳出血などの脳血管疾患、心臓の栄養血管が閉塞する心筋梗塞、心臓の筋肉の異常である心筋症、血液の逆流を防ぐ弁の異常である弁膜症、心臓の機能が低下している心不全などの心臓病などがあり、この心臓病による心臓突然死は6割以上です。心臓突然死の主な原因として、遺伝性不整脈、心筋梗塞などによって起こる心室細動と呼ばれる不整脈と言われています。不整脈については「もし学校心臓健診で子どもの不整脈が見つかったら…」などの記事も合わせてご覧ください。

心室細動は、名前の通り、心臓が細かく動いてしまい、全身に血液を送ることができなくなる状態です。心臓は心房から心室へ電気信号が規則正しく送られることでリズムよく収縮したり、拡張したりしてポンプ機能として働いています。しかし、心室だけで電気信号が起こってしまうと、心拍数が増え、130/分以上になると心室性頻拍という状態になります。さらにいたるところで心室に電気信号が起こって、心臓が震えた状態になってしまうのが心室細動です。先天性QT延長症候群とブルガダ症候群は遺伝性疾患では心室細動を起こしやすく、血縁者が心臓突然死している場合に可能性が高く、心電図検査で発見されることがあります。

心臓突然死は、予期せぬ死ではありますが、原因となる心筋梗塞、不整脈などには前兆があることがあります。
 

いわゆる「心臓麻痺」である「心臓突然死」の予防法・危険度チェック法

心臓に異常がある場合、次のような症状が出ることがあります。

□急に失神を起こしたことがある
□動悸や息切れなどの症状がある
□胸が痛くなったことがある
□自分の血のつながっている親戚に突然死した人がいる
□心電図や胸部X線検査で異常を指摘されたことがある

□血圧が高い
□食事が偏っている
□睡眠不足など不規則な生活をしている
□ストレスが多い

複数の項目にチェックがついた場合、医療機関で相談しましょう。特に最初の5つのポイントは重要です。
 

心室細動を起こしたら、まずはAEDの使用を

心臓突然死の症状としてみられるのは、胸痛、肩から腕にかけての痛み、胸の苦しさ、吐き気、嘔吐、発汗などが見られます。心臓のポンプ機能が低下していますので、意識がなくなり、突然倒れてしまいます。

倒れた人を見かけたら、まずは、脈を確認してください。不規則で脈があまり触れない場合は、心室細動を起こしている可能性があります。
AED

駅などの公共の場、職場のAEDの場所を確認しておきましょう

呼吸も確認して、呼吸がない場合は人工呼吸をして、心臓の拍動がない場合は、心臓マッサージをします。

近くに自動体外式除細動器(AED Automated(自動化された) External(体外の) Defibrillator(除細動器)の頭文字を取ってAEDと呼ばれています)がないか探します。あれば、自動体外式除細動器(AED)を準備して使用しましょう。自動体外式除細動器(AED)は心室細動を判断して、電気を流して、電気の流れを整える機械です。注意は、心停止の場合は、自動体外式除細動器(AED)は動きませんので、心臓マッサージが重要になってきます。

自動体外式除細動器(AED)の操作は、機械が自動音声で指示してくれますので、指示通りに使うと、正しく使うことができます。電気が流れる時には、離れてください。

心臓停止から救急処置が早いほど、救命できる可能性があります。あなたが人を救うことができます。

自動体外式除細動器(AED)の使い方は「日本救急医学会 市民のための心肺蘇生」を参考にしてください。

死因としてはフィクションのものである「心臓麻痺」ですが、心臓の機能が異常をきたして結果的に突然死してしまうケースは身近に起こりうることです。特別に珍しいケースではないのが現実です。正しい知識をもって、万が一のときは迅速に対応できるようにしておきましょう。
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