完済79歳の住宅ローンをどうすべきでしょうか?

住宅ローンの返済で悩む

住宅ローンの返済で悩む

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、住宅ローンと老後資金の備えに悩む40代の女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

■相談者
あきさん(仮名)
女性/パート・アルバイト/44歳
神奈川県/持ち家・一戸建て

■家族構成
夫(会社員/56歳)、愛犬(5歳)

■相談内容
年の差夫婦です。住宅ローンの残債が多く、どう返済すべきか悩んでいます。現在、住宅ローンの残債が3000万円弱(昨年借り換え)、完済は夫79歳のとき。夫は定年退職後も雇用延長で65歳までは働けますが、給与はおそらく現在の6割くらいに減ってしまいます。

私がその分何とか頑張って働きたいと思い、昨年末から働き始めたものの、持病もあり、フルタイムでは働けていません。転職をして、もっと長時間働ける仕事に就きたいとは思うものの、なかなか難しいです。

現在、私の給与は全額貯金し、借り換えで浮いた分(年間約30万円)と合わせての繰上返済も考えています。もちろん、退職金からも返済しますが、全額を使ってしまったら老後の資金がなくなります。夫は、せめてボーナス分だけでも完済し、月々家賃並みの返済にできればと言っていますが、現実的に、年金でそれでも暮らしていけるとは思えません。

また、保険料の負担がかなり大きいのではとも気になっています。もし余分なものがあるなら、その分を住宅ローン返済に回したいとも思います。車(普通自動車1台・軽自動車1台)の維持費も大きいのですが、田舎暮らしのため、働いている間は、基本的に車必須です。不安要素ばかりで、どこから手を付けてよいやら、素人考えでは限界があります。是非、ご相談に乗っていただけますようお願いいたします。

■家計収支データ
「あきさん」の家計収支データ

「あきさん」の家計収支データ




■家計収支データ補足
(1)加入保険の内訳
[夫]
・低解約返戻金型終身介護保険(75歳払込終了、死亡・高度障害・介護保険金額300万円)=保険料1万3911円
・医療保険(終身保障、75歳払込終了、入院5000円、先進医療特約/10年間、3大疾病保障特約100万円)=保険料4585円
・所得補償保険(保険期間60歳、補償月額10万円/最長3年、精神障害補償特約付)=保険料2976円
・積立終身共済(勤務先で加入。60歳積立終了後、一時金/350万円前後か終身保険への転換か選択)=保険料1万円
[妻]
妻/低解約返戻金型終身介護保険(60歳払込終了、死亡・高度障害・介護保険金額200万円)=保険料7556円
妻/医療保険(終身保障終身払い、入院5000円、先進医療特約、がん診断特約、女性疾病保障特約付)=保険料4682円
妻/個人年金(55歳払込終了、60歳から10年確定、年金額30万円)=保険料18万3222円(年払い)
妻/共済=保険料1500円

(2)住宅ローンについて
物件価格/3050万円、諸費用/194万円、頭金/500万円
売却物件充当額(※)/マイナス1166万円
借入額3910万円、借り入れ時期/2005年6月
住宅ローン/35年返済・変動0.875%(1年前に借り換え)
毎月の返済額/8万9886円、ボーナス月/16万765円上乗せ
現在の住宅ローン残高/3000万円
(※)夫が所有していた物件の売却によって生じたローンの新たな残高

(3)ボーナスの使いみち
住宅ローンのボーナス月加算分/16万円×2回、年払い保険料/18万3000円、車検費用/年割りで7万~8万円、親への返済(クルマ購入資金/残20万円)年2回返済で計10万円、その他、生活費の補てん、突発的な支出。
貯蓄は平均100万円前後。

(4)退職金と年金の目安
退職金=夫/約1700万円
年金額=夫/約205万円、妻/約58万円

(5)妻の仕事
65歳までは働きたいと思っている。
結婚当初(12年前に結婚)はフルタイムの派遣(月収20万円弱)で働いていたが、持病が悪化し、退職。その後は月5万~6万円の時短勤務を続けている。

■FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 一部繰上返済をしても老後資金は途中で底をつく
アドバイス2 まずは今日から生活費を下げてみる
アドバイス3 思い切って定年時に住宅ローンを完済
 

アドバイス1 一部繰上返済をしても老後資金は途中で底をつく

住宅ローンの完済が79歳というのは、心配されているとおり、マネープランからすればかなり深刻の事態です。今のうちに有効な対策を考え、着実に実行していくしかありません。

そこでまず、ご相談者が考えられている返済プランについて試算してみます。奥様の給与全額と昨年繰上返済で浮いた返済分30万円を貯蓄に回し、繰上返済をしていくとのことですが、それがおよそ年間100万円。ただし、実際の収支を見てみると、毎月貯蓄に回るのは、6万2000円。繰上返済の資金として年間100万円を貯めるとなると、ボーナスから25万円上乗せする必要があります。

仮にそれができたとして、ご主人が定年となるまでの4年間で400万円。さらに、退職金(※1)のうち1000万円を老後資金とすると、700万円を繰上返済に回せます。計1100万円を定年時に繰上返済(返済期間短縮型)に充てるとします。結果、あくまで概算ですが、返済期間は9年短縮され(70歳完済)、支払い利息は約150万(手数料は考慮せず)軽減されます。

その場合、老後資金はどうなるでしょうか。ボーナスから100万円貯蓄できるとして、そのうち25万円を繰上返済に回すと、残り75万円。4年間で300万円が貯蓄できることになり、退職金の残り1000万円に今の貯蓄等を加えると、定年時に老後資金として2170万円が準備できることになるわけです。さらに勤務先で加入している積立終身共済を一時金で受け取り、奥様が60歳から受けとる個人年金保険を加えると、合計で2800万円前後にはなるはずです。

次に、ご主人の定年後の家計収支ですが、老後が夫も妻も90歳まであると仮定します。まず夫が90歳になるまでに受給する老齢年金は夫婦合算で約5880万円。そこから税金と社会保険料を差し引くと、手取りで5100万円ほどになります。夫婦とも65歳まで働くとすると、その間の手取り収入はおよそ2600万円(再雇用後ボーナスなしとして試算)。つまり、生活費に充てられ収入として7700万円となります。

一方、生活費ですが、医療費の発生等も想定して、保険料の支払いが払込期間終了で下がっていく以外は、現在と同じ水準だとします。結果、かかる生活費(消費支出)の総額は1億1500万円ほど。先の老後資金に60歳以降の収入に加えると1億500万円ですから、1000万円の不足となります。計算上、ご主人が86歳のときに貯蓄が底をつくことになります。

しかも、このときまだ奥様は74歳。90歳まで16年もあります。さらに言えば、購入された住宅は、ご主人75歳のとき築30年を迎えます。リフォームや補修は当然必要になってきます。外壁と屋根、さらに水回りを行えば、少なくとも予算として300万円は見ておく必要があるでしょう。
 

アドバイス2 まずは今日から生活費を下げてみる

この試算結果から、リスク回避としてのポイントが見えてきます。
まずは生活費の削減。つまり、毎月の家計赤字を減らし、用意した老後資金の取り崩しを遅らせることで、資金不安はより抑えられます。そして、生活費の削減は老後からではなく、今すぐに着手することが重要です。しかも、思い切って行うことが求められます。

まずは、ご相談者も悩まれている保険ですが、ご夫婦で加入している低解約型終身保険は払済保険に。ご主人の所得補償保険は解約してもいいでしょう。これで月額2万3000円の保険料コストが削減できます。死亡保険金を遺すべき遺族はいません。仮にご主人に万が一のことがあっても、遺族厚生年金とご自身の老齢基礎年金があります。住宅ローンも団体信用生命保険で完済されますので、その後のやりくりは可能でしょう。

あとは、手を付けやすいという点で食費を見直してみる。理想は月5万円程度まで下げること。それが無理なら当初1万円削減を目指してみてください。さらに他の支出費目から7000円削減できれば、月に計5万円を新たに生活費から減らすことができます。現在、家計からの貯蓄は毎月6万8000円ですから、これで計11万8000円。さらにボーナスから100万円を貯蓄に回せば、年間237万円。これに貯蓄から13万円を加算し計250万円にして、その全額を毎年繰上返済します。ご主人が定年となるまで4年間継続すれば、返済期間は合計9年7カ月短縮、支払利息は180万円軽減されて、60歳の時点でローン残高は1450万円ほどになっているはずです。
 

アドバイス3 思い切って定年時に住宅ローンを完済

先の試算で見えるもうひとつのリスクは、住宅ローンの返済が定年後もずっと続くということです。

繰上返済で返済期間を70歳までに短縮したとしても、年間140万円の支払いがそこまで続くことは、大きな家計リスクです。試算はあくまで夫婦が基本的に健康であるという条件付き。返済途中で体調を崩し就業不能になったり、要介護になれば、急速に老後資金は減っていきます。

そこで、退職金1700万円を活用して、住宅ローンを完済します。この時点でローン残高は1450万円程ですから、繰上返済の手数料(一部および全額)は別途発生するとしても、完済後、退職金の一部と貯蓄等で1050万円前後は手元に残るはず。したがって、ご主人の積立終身共済の一時金を加えた1400万円が老後資金となります。

次に、定年後の生活費(見直し後)ですが、それまでボーナスで支払っていた分も毎月の支出に落し込むと、月額21万~23万円ほど。ご主人が再雇用で収入のある65歳までは、夫婦合算で手取り月28万~30万円(※2)となりそうなので、毎月7万円は貯蓄に回せます。5年間で420万円。つまり老後資金が1800万円に増えることになるわけです。

65歳以降、ご主人の老齢年金が205万円。税金と社会保険料を引いて180万円ほどの手取りですから、奥様がパートで働く65歳(夫77歳)までは、収入が月額で21万円。貯蓄に手をつけずやりくり可能な金額でしょう。奥様がパートを辞め、老齢年金を手にすると月1万5000円ほど収入が下がります。それでも、ご主人が90歳までの13年間で老後資金からの取り崩しは234万円に抑えられます。
ご主人が90歳で亡くなられたとすると、その後は遺族厚生年金(非課税)を受給できます。奥様の老齢基礎年金との合算で月額17万円ほど。おそらく一人暮らしなら、生活費はカバーできるのではないでしょうか。しかも手持ち資金として1500万円以上が残ります。奥様の個人年金保険からの年金300万円は、そのままリフォーム資金に充てることもできます。

定年まで貯蓄ペースを高め、退職金で完済してしまうプランは、老後資金が目減りするという点で不安もあるでしょう。しかし、60歳以降も長く住宅ローンを抱えることでのリスクや家計負担はさらに大きいと言わざるを得ません。生活費を抑え、65歳まで元気に働けば、決して不可能ではありません。頑張ってください。

(※1)退職金1700万円は、勤続年数33年以上なら、所得税、住民税とも原則無税。
(※2)再雇用後の収入が定年時の収入の75%未満に低下した場合、一定条件を満たせば雇用保険から65歳まで一定額の支給(高年齢雇用継続給付)がある。
 

相談者「あきさん」から寄せられた感想を紹介

深刻な状況であることに変わりはないもののまだまだ頑張れる余地はあるのだということとその方法まで具体的に教えていただきました。お陰様で、明日からまた勇気を持って前を向いて進んでいけそうです。お忙しい中、こんなにも懇切丁寧なアドバイスをくださいましたファイナンシャルプランナーの深野先生のお陰でこれからの私たち家族の未来が大きく変わる、変えていけそうな気がします。心より感謝いたしております。

教えてくれたのは…… 

深野 康彦さん
 
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業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ





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