2006年12月に損害保険会社による住宅の「火災保険料の取りすぎ問題」が発覚し、大きく報じられていたのを覚えているでしょうか。
2007年3月30日までに損保大手6社から出された中間報告では、合計で約10万8千件、約57億円の取りすぎが明らかになっています。
さらにその後の調査で、火災保険とセットになる地震保険でも取りすぎが判明し、2008年5月21日に公表された集計では、取りすぎた保険料が損保大手6社で約62万件、約237億円(地震保険料を含む)にのぼりました。
なぜそれほどになるまで見過ごされていたのか、疑問に感じる人も多いでしょう。当時、ある損害保険会社は「代理店が商品内容を十分に理解できていないことが原因だ」と弁解していたようですが、それ以前の問題があるはずです。
不動産会社が損害保険会社の代理店となることも多く、私自身も以前に “付き合いで” 代理店資格を取らされたことがあります。もし、その頃と基本的な体制があまり変わっていなければ、正直なところ「保険料の間違いが起きて当たり前」のようにも感じられます。
もっとも、当時はweb環境なども整っていなかった時代であり、現在はだいぶ改善された部分も多いはずですが……。
それはさておき、2007年4月1日からは各社の火災保険料の「横並び」が崩れ、格差が生じることになりました。それ以前はほぼ一律で、保険料の間違いがあれば発覚しやすい状態だったのにも関わらず、膨大な数の取りすぎがあったわけです。
それが、契約する損保会社ごとに保険料が異なり、間違いがあっても分かりにくい構造になったのですから、十分に気をつけなければなりません。
また、火災保険料と地震保険料は2015年から2017年にかけて相次いで引き上げられ(引き上げ幅は地域によって大きく異なる)、火災保険では長期契約(10年超)が廃止されるなど、制度そのものの見直しも進められています。
それと同時に商品の多様化も図られていることから、ますます複雑化し、保険料の取りすぎなどの問題があっても、さらに分かりづらくなっているといえるでしょう。
損保各社も「取りすぎ」の再発防止に努めているはずですが、これを未然に防ぐためには金融機関や不動産会社から勧められるままに火災保険の契約をするのではなく、消費者自身もしっかりと保険内容を吟味したり、数社を比較検討したりすることが欠かせません。
住宅を購入して住宅ローンの契約をするときに、初めて火災保険の説明を受ける人も多いでしょうが、なるべく事前に情報収集をしておきたいものです。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年5月公開の「不動産百考 vol.11」をもとに再構成したものです)