アドバイス1 生活費が今と同水準なら老後に貯蓄も可能
おそらく、相談者のやまさきさんも計算されたと思いますが、セミリタイアとなった場合のキャッシュフローを考えてみましょう。キリのいいところで来年、30歳で退職してセミリタイア生活に入るとします。公的年金が受給できる65歳まで35年間。仮に現在と同じ生活費で済むとすれば、月8万円のアルバイト収入に健康保険料など差し引けば、ほぼトントン。貯蓄はできませんが、貯蓄を取り崩さないこともほとんどないという状態です。
ただし、投資からの配当が年20万円あるとすれば、35年間で700万円。これは別途収入として、保有資産に積み上っていくことになります。
65歳からの公的年金は、具体的な試算ができないのでわかりませんが、厚生年金の加入期間が7年とすれば、あくまで概算ですが、今の水準で老齢年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)は10万~11万円といったところでしょうか。これも、先と同様、今と同じ生活費であれば、相続財産にも金融資産(30歳時には1900万円ほど)にも手を付けず年金生活が送れるということです。
現在の支出に通信費がありませんが、仮にそれを月1万円、さらに自宅(一般的住宅とする)を相続後に発生する固定資産税を加味しても、状況は同じです。わずかですが、年金から毎月貯蓄ができることになります。
もちろん今後、病気で収入が途絶えることがあるかもしれません。20~25年後には自宅のリフォームも必要でしょう。それは相続財産と今ある金融資産からの捻出となりますが、十分まとまった額ですから、おそらく足りなくて困るという事態には陥らないと思われます。
アドバイス2 辞めると決めたなら早い方がいい
大まかな試算ではありますが、セミリタイアは可能となります。では、どのタイミングでリタイアすべきか。個人的には、なるべく早い方がいいと考えています。普通は今度の冬のボーナスをもらってから、と考えたくもなりますが、できるだけ早くが望ましいでしょう。なぜ、やまさきさんは会社を辞めたいのか。詳しい理由は書かれていませんが、20代にして「週5日働くことに嫌気がさした」とのこと。単に「働くのが嫌い」という、性格的なものが起因しているのなら話は別ですが、今の職場で働くことで大きな精神的負担、解消しがたいストレス等を背負っており、そしてそういう事態から逃れるために辞めると決意したのであれば、早いに越したことはないからです。
幸い資金的な余裕もあります。2、3年、いわばリハビリを兼ねて、アルバイト生活、もしくは働かない時期があってもいいと思いますので、心と身体を休めてみてはどうでしょうか。その間、自分自身や仕事のことなどを含め将来のことじっくり考える時間にしてもいいと思います。
アドバイス3 マネープランの中に社会との関わりを
もうひとつ気になる点があります。それは、先の話と矛盾するようですが、年齢を考えるとどう社会と接点を保っていくかということです。「できればアルバイトもしたくない」と言われています。実際、働かないと老後=公的年金の受給まで資金がもたない可能性がありますので、このまま完全リタイアは無理ですが、仮に足りるとしても、働くことで社会との関わりは持つべきだと考えます。
たとえば、支出の内訳を見ると、実家暮らしとは言え、これだけで生活ができることに驚きがあります。と同時に、支出の中に人や社会との関わりが見えて来ません。これで働くこともしないとなると、今後の生活そのものがどうなってしまうのか……。
マネープランとは無関係の話のようですが、人生を豊かにすることがマネープランの目的でもあります。そのためには、一定の人や社会との関わりはやはり不可欠です。まだまだ時間はあります。まずは退職されて、今後の自分をゆっくり考えてみて下さい。
教えてくれたのは……
業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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