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「エコ住宅」はエコじゃない!?

地球環境問題への意識とともに、「エコ住宅」にも関心が高まっています。しかし、それをしっかりと使い続けなければ十分な効果が期待できません。将来的なこともよく考えながら「エコ住宅」を計画することが大切です。(2017年改訂版、初出:2016年9月)

執筆者:平野 雅之


何年か前のことになりますが、横浜国立大学の准教授らによる興味深い試算が新聞に紹介されていました。

それによると、2030年頃までは長寿命・高断熱の「エコ住宅」を建ててもエコの効果が少ないばかりか、かえって二酸化炭素の総排出量を増やしてしまう結果になるのだとか。

「エコ住宅」を建てる時点では、一般の住宅よりも建築資材が多くなるために二酸化炭素の排出量も増えます。しかし、その後の使用によって二酸化炭素排出量が抑制され、長期間のトータルでは環境への負荷を減らすことができるものとされています。

ところが、いま「エコ住宅」を建てると、人口減少などの影響で二酸化炭素排出量の削減効果が出ないうちに空き家となる可能性が高く、一定期間でみたときの総排出量を減らすことができないのだそうです。

もちろん、環境負荷の問題にはさまざまな側面があり、この結果だけをみて「エコ住宅はダメ」などということはできません。「エコ住宅」にもさまざまなレベルがあり、前提条件をどう設定するのかによっても予測結果は変わるものです。

いずれにしても大切なことは、これから建てる家であれ既存住宅であれ、そこに長く住み、使い続けることです。ずっと住み続けることを前提に「エコ住宅」を計画するのなら、いま建てても十分な効果が期待できるでしょう。

逆にこれから建てる家が10年、20年くらいのうちに空き家となるのであれば、「エコ住宅」にかぎらず、どのような仕様の家であってもマイナス面のほうが大きくなりかねないのです。

環境問題には複雑な要素があり、単純には判断できない部分も多いものです。さらに、なかには「エコ」を単なる宣伝材料にしか使っていないような会社もあって、胡散臭さを感じてしまうこともありそうです。

「エコ」には難しい側面が多いことも否めませんが、「自分たちが長く住む家」にすることを考えるのと同時に、「自分たちが住まなくなったときに流通性がある家」にすることも考えなければなりません。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年5月公開の「不動産百考 vol.11」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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