まずは親と関係者の意向を聞いておく
相続が気になり出したら、まずやっておくべきは親や兄弟姉妹など相続に関係する人達の意向を確認しておくこと。特に大事なのは、それぞれの意向に齟齬がある場合。長男だからいずれ家を継いでくれるだろうと期待されたままで実家をしまう相談はできないし、その逆も。どのような場合でも、問題が起きてから考えるより、少しでも早めに時間をかけて意思の疎通を図っておくほうが良い結論が出せるはずだ。空き家になってしまった例のうちには、兄弟姉妹で話し合いがないままに遺産を共同相続、意見が食い違うため、実家が塩漬け状態というケースが少なくない。特にあまり仲が良くない兄弟姉妹での共同相続はトラブルの原因になることが多いので避けたいところだ。
実家の近隣に親族がいる、親の意思決定に親族の意見が反映されることがあるなどの場合にはそうした人たちの意見も聞いておこう。地方での不動産売買では半径1~2キロ圏の近隣居住者が買い手になることが多いので、売却するつもりなら事前の声掛けは役に立つ。
資産の棚卸し、金融資産の組み替えも検討
不動産だけでなく、親のその他の財産も把握しておきたいところ。ご存じのように相続税の申告、納税は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内と決められている。相続放棄、限定承認をする場合には3カ月以内(家庭裁判所への申し立てにより3カ月の期間延長は可能)と意外に短い。しかも、居住地と実家が遠い場合では書類取得などに手間、時間がかかる。住宅以外に財産がなく、かつその住宅に居住あるいは維持管理し続けていくのが難しい場合には「相続放棄」という手があるが、財産の全貌が分からないと、その判断もできない。それを考えると、早めに親の財産を把握しておくことは空き家発生を防ぐために重要なのだ。ただし、兄弟姉妹がいる場合には後日もめないように、必ず、全員で公明正大にやることが大事だ。
また、親が高齢、認知症の疑いが出始めているなどの場合には解約や本人確認に手間、時間がかかるような金融商品は動かしやすい商品に組み替えることを検討してみたい。場合によっては医療、介護に現金が必要なのにおろせなくなるなどの事態が想定できるためだ。
実家、地域の不動産事情を把握
実家を継ぐ人がいない場合、どう対処するかを考えるにあたっては実家の状態、地域の不動産事情を把握しておきたいところ。まず、実家の状態については建物の状況、売買時などに必要な書類が揃っているかがポイントになるが、建物については素人に分かるものではない。とりあえずは必要書類が揃っているか、どこにあるかを確認しておこう。一戸建ての場合で必要な書類としては確認済証および検査済証、既存図面、謄本など。購入時の物件案内の書類などがあればなお良い。古い建物では違法に増改築されていたり、接道に難があることもあるので、その辺りも親に聞いて確認してみよう。また、建物内外、敷地全体などの写真を撮っておくと不動産会社に相談する時などに役に立つ。
地域の不動産事情については不動産会社の有無、その会社の取引状況、取り扱い物件などを調べてみること。実家のあるエリアで活発に取引が行われているようなら売却できると推察できるし、賃貸でも動きがあるなら貸すという選択もできる。当然、その際には価格についても調べておくこと。
取引状況についてはもうひとつ、国土交通省の土地総合情報システム内不動産取引価格情報検索という、平成23年以降からの日本全国の不動産取引の情報が検索できるサイトが役に立つ。市区町村の◎◎町でいつ、どのような不動産がいくらで取引されたかの詳細を調べられるシステムで、取引状況はもちろん、売却時の価格の目安も分かる。残念ながら何年間もほとんど不動産取引がない場所もあるようだ。
自治体のサービスを調べてみる手も
不動産事業者に頼むことが難しい場合には自治体が空き家バンクを作っていないか、維持管理、再生などに助成を行うなどしていないかを調べてみるのも手。ただし、空き家バンクはあっても、あまり成果を上げていない自治体も多いので過度の期待はしないこと。維持管理、再生を行う自治体は増えつつはあるものの、まだまだ全体としては少ない。また、最近では地域の空き家問題に取り組む、地域を再生させるための活動をやっているNPOなどの団体もあるので、そうしたものがないかを調べてみるという手もある。エリアによってはかなり成果を上げている例もあるので頼もしい。
率先して家の片づけを始める
もうひとつ、少しずつ始めたいのは片づけ。空き家となっている家のうちには荷物が多く残されていて片づけられないから貸せない、売れないというケースが多く含まれる。であれば少しずつ片づけておき、最後に過大な負担を残さないようにしたいが、片づけろと言われると人は反発する。それよりも実家に残してあった自分の荷物を率先して片づけ、その姿を示すほうが賢明。片付けながらの「一緒に片づけてあげようか」という提案なら受け入れてもらいやすいことがあるのだ。