成功者から学ぶことは多い
成功者が現れると、「どうせあいつは詐欺まがいのことをしたんだろう」「そのうちダメになるさ」という人が必ず現われます。身近にも、同僚が先に昇進したとき、「なんであいつが」「会社は見る目がない」という人もいるでしょう。しかしたとえばプロスポーツで大成している人は、中高生の頃、同級生が遊びや恋愛をしているのを傍目に、ストイックに生活のすべてを(場合によっては家族全員を巻き込んで)スポーツに捧げてきました。
それと同様、同期を差し置いて昇進した人も、脚光を浴びている起業家も、周囲の人が見ていないところで、膨大な努力をしてきたという過去があります。
デキる人から学ぶというのは誰でもやります。しかし凡人は、そこに好き嫌いという感情を持ち込んでしまい、学べなくなります。嫉妬やプライドといった感情が邪魔するからです。そこで学習能力を上げる方法のひとつは、仕事と人格とを切り離して捉えることです。
たとえば以前、ネオヒルズ族と呼ばれる人たちが話題になったことがあります。彼らの発言や行動は非常識で型破りなので、「生意気だ」「ムカつく」という声は多く、いわゆる炎上もよくありました。そうやって彼らの発言や人間性に注目するから、怒りに支配され、批判するだけで終わります。
こうして人の学習能力は著しく下がります。しかしそれはもったいない。なぜなら、彼らのビジネススキームは、学ぶところが多いお手本だからです。
彼らがやっていることは非常にシンプルで、無料特典を用意して顧客リスト(メールアドレス)を集め、そのアドレスに商品をセールスするだけなのです。実際にセールスするのはアフィリエイターと呼ばれる別の人である場合もありますが、アフィリエイターは自分のメールマガジンやブログ、ツイッターなどで拡散し、売れたら何十%かの手数料をもらうようになっています。ネオヒルズ族の彼ら自身も、アフィリエイターとして他人の商品を販売します。
そして「族」と言われるとおり、彼らは同じくネット業界での仲間同士で結託し、同じ商品を同時期にセールスします。そうやって一気に市場に商品を浸透させて盛り上げ、販売を加速させる。いわゆる「プロダクト・ローンチ戦略」というものです。
しかし彼らのこうしたやり方は、実は伝統的なマーケティング手法です。無料特典と引き換えに顧客リストを集める手法は、どの業界でも使われます。「応募したら抽選で景品がもらえる」「申し込むとサンプルがもらえる」という誰もが知っている大手企業の販促と何ら変わりありません。
売って手数料を稼ぐアフィリエイターは、いわゆる代理店制度と言えます。たとえば「保険外交員」も代理店で、保険会社の代わりに保険を売り、手数料をもらっているので、これも同じ仕組みです。拡散して一気に知名度を上げるのは、キャンペーンを打つのと同じ。電車の車両をまるごと一社の広告で埋め尽くすラッピング広告などもその一環です。
このように、ネオヒルズ族のやっていることは、一般企業もやっている様々なマーケティング手法を組み合わせ、それをインターネット上で個人として展開しているだけと言えます。そうやって彼らの見た目、印象、人格といったものはビジネスと切り離し、一つひとつ分解して研究すれば、自分に応用できる手法やアイデアがたくさん見つかるはずです。
そこに必要なのは、「ムカつく」「うらやましくないね」「どうでもいい」「すぐダメになるさ」などの自分の感情はいったん脇に置き、成功者が何ゆえに成功したのか、その手法や足跡を冷静に捉えようとする姿勢です。そしてこれこそ、成熟した大人だけができる思考と行動ではないでしょうか。
参考文献:『仕事が速いお金持ち 仕事が遅い貧乏人』(学研プラス)