妊娠初期の人工中絶手術には「吸引法」と「掻爬(そうは)法」がある
妊娠初期の人工中絶手術「吸引法」と「掻把(そうは)法」のやり方・違いとは?
<目次>
中絶手術の方法、「吸引法」と「掻爬法」の違い
掻把法と吸引法の違いは?
前処置の後、手術前に麻酔薬を注射し、全身麻酔のもと手術を実施します。
- 吸引法:2種類あります。「手動真空吸引法(MVA:Manual Vacuum Aspiration)」は、プラスチック製のチューブを用いて子宮の内容物を手動で吸引する方法。「電動吸引法(EVA:Electric Vacuum Aspiration)」では、金属管を用いて機械で電動吸引する。
- 掻把法:器具(鉗子)を使って、子宮の内容物をかき出します。
吸引法による中絶手術のやり方・リスク
吸引法は、胎児や胎盤といった子宮の内容物を吸い取る中絶手術方法です。うまく吸引できれば、出血が少なく、負担も少ない方法ですが、まれに子宮内に胎盤の組織などが残ってしまうケースがあります。2012年に世界保健機構(WHO)が発表した「安全な中絶ガイドライン」では、吸引法が推奨されました。しかし、日本では掻爬法が広く普及していて、その傾向に大きな変化はありませんでした。吸引法は徐々に拡がってきましたが、当初、使用されていたのは金属管を用いた電動式の吸引法(EVA)で、2015年9月になりようやく手動真空吸引法(MVA)が厚生省で認可され、最近になり普及してきています。
吸引法でも「手動真空吸引法(MVA)」はより安全性が高い
「手動真空吸引法(MVA)」はプラスチック製のチューブを使用するため、金属管を用いた「電動吸引法(EVA)」と比べても、子宮を傷つけにくく、痛みも少ない傾向があります。しかも医師側も、比較的簡便に使用ができ、施術時間も短くなるメリットがあります。
手動真空吸引法(MVA)は、世界保健機構(WHO)が推奨する吸引法でも、より負担が少なく、低侵襲で安全な方法と考えられ、最近になりようやく現場でも広く使われるようになってきています。
掻把法のやり方・リスク
これまで掻把法は日本では人工中絶手術のスタンダードな方法でした。鉗子(かんし)と呼ばれる器具で、胎児や胎盤といった子宮の内容物をかきだします。リスクとしては、めったに起こることではありませんが、医師の技量不足や子宮の状態によって、器具でかき出す際、子宮内に傷を負ったり、穿孔(せんこう)といって子宮に穴が開いてしまうことがあります。
掻把法vs吸引法、手術時間が短いのはどっち?
掻把法と吸引法には手術時間に大きな時間差はない
全身麻酔をかけた後、吸引法、掻把法とも5分~15分。吸引法の方が、短時間の傾向がありますが、2つの手術法に大きな時間の差はありません。
中絶手術後に再度手術が必要になるケース
吸引法でも掻爬法でも、中絶手術後は、エコーで子宮の状態を確認しますが、子宮に残った内容物をうまく確認できずに見落としてしまうケースも想定されます。その場合、1週間経過しても出血が治まる気配がないといった症状が見られます。自然に排出されそうな場合は自然経過を見ますが、そうでない場合は「再掻把」(さいそうは)と呼ばれる掻爬法か吸引法の再手術をし、子宮の中をきれいにする必要があります。
中絶手術の方法は患者の希望で選べる?
現状では、中絶手術の方法を患者が選ぶことのできる病院は少ないでしょう。吸引法を行っておらず掻爬法だけ、吸引法は実施していても手動真空吸引法(MVA)は行っていないといった病院も多いのが現状です。医師の判断により手術法が決定されるケースがほとんどでしょう。中期中絶は、初期中絶と手術法が異なる
12週以降の中期中絶は、母体の負担も大きくなる
初期中絶手術では、これまで解説してきた吸引法や掻爬法で行われますが、中期中絶手術は、陣痛を誘発し、分娩する方法で行われます。出産と同じ流れのため、日帰りでなく通常は2~3日入院となり、母体の負担も大きくなります。
ここまで妊娠中絶手術の方法やリスクについて解説してきました。掻爬法も吸引法も、適切に行われれば、母体の回復スピードに大きな差はありません。また、12週以降の中期中絶は、母体へのリスクが高く、行っている病院も限定的になります。どの方法を選択しても、リスクをゼロにすることはできませんが、不安な点は事前に担当の医師によく相談しておくことが大切です。
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