VW(フォルクスワーゲン)/パサート

VWのPHV「パサートGTE」の仕上がりは?

ゴルフGTEに続く、フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド(PHV)第2弾、パサート/パサートヴァリアントGTEが上陸した。セダン、ワゴンでは最長となる50km超のEV走行可能距離や21.4km/Lというハイブリッド燃費など見どころは満載だが、仕上がりはどうだろうか?

塚田 勝弘

執筆者:塚田 勝弘

車ガイド

フォルクスワーゲンがプラグインハイブリッド第二弾を発売

フォルクスワーゲン・パサートGTE

パサートGTEのボディサイズは全長4785×全幅1830×全高1470mm。ワゴンのパサートヴァリアントGTEは、全長4775×全幅1830×全高1510mm。ワゴンの方が背は高いが、全長は短くなっている


ディーゼルエンジン車の不正問題もあって、プラグインハイブリッド(PHV)を含めた電動化を推進しているフォルクスワーゲン。

欧州ではフォルクスワーゲンに限らず、充電可能なプラグインハイブリッドが燃費規制(CO2削減上)上、有利になることもあって急激に増えている。充電した電力で走行するEV走行分が多いほど、CO2削減が計算上、軽減されるという欧州の燃料測定法のいわば「抜け道」と指摘する向きもある。

また、充電によるEV走行可能距離の延長と価格の上乗せは、「電池の大型化=コスト増」などトレードオフの関係にあるともいえるだけに、「カタログ燃費や電費がいい」というだけで、飛びつく人はいないだろうが、価格に見合った商品か吟味する必要はあるだろう。

「GTE」は走りとEcoを両立したスポーツハイブリッド

フォルクスワーゲン・パサートGTE

ブルーのラインとGTEのロゴが与えられた爽やかな印象のフロントマスク


フォルクスワーゲンがプラグインハイブリッド(PHV)第2弾として日本にも上陸させたパサート/パサートヴァリアントGTEは、ゴルフGTEに続くモデル。単なるエコカーではなく、同社の看板モデル「GTI」同様に、スポーティな走りを喚起させる「GT」を車名に付け、さらに「E」というEcoを印象づけるグレード名としている。

1.4LのTSI(直噴ターボエンジン)と、PHV用に専用開発された3つのクラッチを内蔵する6速DSGを装備し、エンジンとトランスミッションの間に発電機も兼ねるモーターを挟み込んだGTE専用のPHVドライブユニットを採用しているのはゴルフGTEと同じだ。

ただし、1.4L TSIエンジンは、250Nmの最大トルクこそゴルフGTEと同値だが、最高出力は156psとゴルフGTEから6psアップされ、モーターの出力も80kWから85kWと向上されている。

パワーアップの狙いは、サイズアップによる重量増に対応するものだろう。ゴルフGTEは1580kgだが、パサートGTEはセダンが1720kg、ワゴンのヴァリアントは1770kgで、140kgから190kgも重くなり「GTE」を名乗る以上は、パワー向上は欠かせないメニュー。

試乗会はサーキット内と外周路、一般道と多彩なステージで開催された。重量増でもシーンを問わず動力性能に不満はなく、とくに3つの走行モード(バッテリーチャージモードを含めると4モード)のうち、エンジンとモーターを同時に使う最もスポーティな「GTE」モードにすればかなり元気に走ってくれる。

また、モーター走行の「E」モードは、街中はもちろん、高速道路でも130km/hまでカバーするという謳い文句どおり、充電量が許せばだが、普通に走る分にはほとんどエンジンを始動させずにEVとして走らせることができる。

セダン、ワゴンのPHVで最長を誇るEV走行距離

フォルクスワーゲン・パサートGTE

満充電すると最長で51.7kmのEV走行が可能(カタログ値)


カタログ値だがEV走行時は満充電すると最長51.7kmで、ハイブリッド燃費は21.4km/Lとなっている。このEV走行51.7kmは、PHVモデでセダン/ワゴンモデルでは最長距離を誇る。なお、満充電には普通充電(200V)で約3時間とされていて、急速充電には対応していない。

実走行でどれだけEV走行可能かテストできていないが、半分でも走ってくれれば、日常使いなら大半の人がエンジンをほとんど始動させずにまかなえそうだし、エンジンが付いているPHVだから電欠によるストップも心配する必要はない。

走りで気になるのは、良好な路面が多いサーキット内だけなら乗り心地も悪くないが、一般道に出るとやや硬めで、前後、左右にボディが揺すられることが多く、こちらはガソリン車と同様の欠点といえるかもしれない。高速道路で速度を上げてもフラットライド感が増すということもなく、乗り味にもう少し上質さが欲しいところ。

荷室スペースはPHV化で減っても実用上不足なし

フォルクスワーゲン・パサートGTE

セダン、ワゴンともにベース車の荷室が大きいだけに、フロア上の荷室スペースはPHV化されても健在で、広さを重視する人でも実用上不満は出ないはずだ


また、プラグインハイブリッド化で気になる荷室容量だが、トランク、ラゲッジ内のフロアボードから上の部分は変わっていないように見えるものの、ガソリン車と比べると床下の収納スペースが使えなくなっている。

それでもベース(ガソリン車)が大容量だけに実用上は不足ないはずだ。なお、荷室容量はセダンが402L(ガソリンは586L)、ワゴンのヴァリアントが483~1613L(ガソリンは650L~1780L)と、床下分減っている。

装備面では、フォルクスワーゲンが誇る安全装備が網羅されているほか、上級グレードにはデジタルメータークラスターやヘッドアップディスプレイ、アラウンドビューカメラ、ナッパーレザーパワーシートなどの装備を用意するなど、充実ぶりが際立っている。

セダンであるパサートGTEの価格は、519万9000円~579万9000円。パサートヴァリアントGTEは、539万9000円~599万9000円。ガソリン車のセダンは329万円~、同ヴァリアントは348万9900円~という設定なので、エコカー減税「免税」対象車であっても電費を含めた燃費などのランニングコストで元を取るのは至難の業だろう。

「GTE」の冠が付くスポーティな走りに価値を見いだし、さらにセダン、ワゴンで最長を誇るモーター走行中心でCO2をほとんど排出しない(少なくても走行時は)という環境面に配慮し、しかも大人4人がゆったりと座れる圧倒的な居住性、十分に広い積載性にも惹かれれば買いといえる仕上がりともいえる。

いずれにしてもブランド選び同様に、その価格差(付加価値)をどう判断するかは人によって異なるもの。単に元が取れるか、実用上どうか、という視点だけで見ればガソリン仕様で十分だろう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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