前年度以上の多さ…熱中症による搬送が急増中

救急搬送

例年を上回るペースで急増している熱中症による搬送者数。日中の屋外だけでなく、室内や夜間でも注意が必要です

猛暑日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。報道によりますと、2016年6月、熱中症で搬送された方は前年度よりさらに増えて3500人を超えました。7月に入ってからその数は急上昇しています。以下はそれを伝えるサンケイニュースです。
6月の熱中症3558人 高齢者が半数、死者3人
サンケイニュース 2016.7.15 17:05
総務省消防庁は15日、6月に全国で3558人が熱中症で救急搬送されたと発表した。65歳以上の高齢者が48%を占めた。搬送先で死亡が確認されたのは3人。(中略)
7月に入ってからは10日までに約7千人が搬送された。今後も気温の上昇が見込まれるため、消防庁は小まめな水分補給などの熱中症対策を呼び掛けている。

熱中症の症状と危険性

熱中症になると体温が異常に上がり、自分のからだではコントロールすることができなくなります。重症化すると意識がなくなったり、痙攣したりし、場合によってはいのちを落とすことさえあるのです。

そもそもなぜ熱中症になってしまうのか

普通なら汗をかくことで体温が下がり、体温が自動的に調整されて健康が維持されます。しかし異常に暑かったり、汗が蒸発しないほど湿気が高かったりすると、体温が下がらずに熱中症を起こしやすくなります。加えて、暑さだけでなく個々人の体調や体力も影響します。例えば睡眠不足や二日酔いなどで体調が悪かったり、脱水や塩分不足の状態だったり、小さいこどもさんや高齢者の方のように体が弱かったりする場合には、それまでは何ともなく元気だった人でも、熱中症でいのちにかかわる状態になってしまうことがあるのです。

地球温暖化の影響もあるかもしれませんが、このように個々人の体調を含めたいくつもの原因があることを覚えておきましょう。

大切な脱水予防…喉の渇きを感じる前に水分補給を!

また皆さんにはぜひ、年齢とともに脱水状態になっても喉が渇きにくくなることを知っておいていただきたいと思います。これは加齢に伴い、渇きのセンサーが次第に弱ってしまうためです。本来なら体が脱水状態になればまもなく喉が渇き、自然に水分などを補給しようと思います。喉の渇きが消えるころには脱水も解消しているはずなのですが、60歳を超えるとかなりの脱水でも喉が渇かない、といったことがよく起こります。そのため多くの方が、普段お元気そうに見えるのに、脱水や熱中症になってしまうのです。「喉の渇きをあてにしない」ということを、健康やいのちを守るために、肝に銘じて下さい。

今ご自分が脱水かどうかを判断するには、最近2~3時間に飲んだ水分量や、この数時間の尿の量が参考になるでしょう。暑い日に尿がすでに数時間も出ていない、トイレへ行ってもほとんど出ない、下腹部も張っていない、となると脱水の可能性があります。(注意:前立腺肥大がある方は尿があっても膀胱に貯まっている場合があります。その場合は脱水ではないかも知れません。)

心臓病や心臓手術後の方たちの熱中症対策

また、子どもや高齢者の熱中症リスクが高いことは先に述べた通りですが、熱中症リスクが高い人たちの中に、心臓病や心臓手術後の方たちも含まれるのでしょうか? 残念ながら答えはYesです。

もちろん心臓病や心臓手術後であることと、熱中症のなりやすさが完全にイコールというわけではありませんし、平素の健康管理の良しあしによるところが大きいのですが、油断せずに気を付けていただければと思います。

心臓病と熱中症…心不全を例に予防で注意すべきこと

心不全の場合、減塩食や適度な運動が大切なのですが、あまり汗をかくと塩分補給が必要となります。補給しないと熱中症になりやすくなるのです。しかしその補給が多すぎると心不全が悪化します。調整が難しいわけです。

血圧を例に取っても、健康な人なら多少の脱水状態でも血圧が自動調整されますが、心不全の患者さんの場合は血圧が下がり心配な状態になりかねません。余裕が少ないのです。

さらに心不全や心臓病の患者さんの場合は、肺その他のうっ血を減らすために利尿剤を服用することがよくあります。利尿剤は文字どおり尿を強制的に出させる薬です。脱水で水分不足している時にさえ、利尿させようとします。なので脱水が一段と悪化しやすくなるのです。それ自体も危険ですが、腎臓にも大きな負担になり腎不全になりやすくなってしまいます。

そうするとあまり極端な発汗を防ぐ、あまり重い負担をからだにかけない、という工夫が賢明ということになると思います。たとえば散歩するなら朝夕の過ごしやすい時間帯にするとか、ゴルフなどもあまり暑くない時間帯や季節を選ぶなどですね。

このことはご高齢の方ほど大切です。もともと若い人たちに比べると水分や塩分を含めた体調変化に弱いですので。

狭心症やカテーテル治療、冠動脈バイパス手術後の注意点

狭心症や心筋梗塞などは血管が細くなったり詰まることで起こる病気ですので、脱水や熱中症は血液がドロドロになりやすく、血液量も減るため危険性が高くなります。

ステントなどのカテーテル治療あるいはバイパス手術を受けたあとの患者さんの場合は心筋梗塞になる確率は下がるでしょうが、ステントそのものが自然状態よりは血栓を生じやすいこと、バイパス手術では血栓の恐れは少ないもののバイパスできなかった細い動脈などが詰まって心筋梗塞を起こす恐れは残ります。

またこうした患者さんは頚(くび)や脳の動脈にも動脈硬化が起こっていることが少なくないため、ひどい脱水では脳梗塞になるおそれが高くなります。

血管を広げる薬や血栓を予防するお薬(プラビックスやバイアスピリン、あるいはワーファリン、その他)を飲んでいても、脱水で血液がドロドロになれば薬の効き目が落ちることを知ってください。

弁膜症の場合の注意点

弁膜症にもいろいろありますので、詳細は主治医に相談して頂くのが良いでしょう。

ただ一般的に、やはり上記のようにあまり極端な環境変化や脱水などは避けるほうが安全です。たとえ脱水のあとしっかり水分や塩分を補給しても、量の調整や体内バランスの変化などもあり、不整脈が出たり問題が生じやすいと思います。

弁膜症で心房細動になっている場合は、熱中症の際の脱水によって脈が速すぎる状態になることがあり、そうなると苦しいですし危険です。また脱水の場合はワーファリンその他のお薬を飲んでいても血液が濃縮しやすく血栓や脳梗塞などが起こりやすくなります。

弁膜症の患者さんの場合も、心不全の方と同様、利尿剤を服用しておられるケースはよくあります。前述のように脱水や熱中症になりやすく、心臓や腎臓はじめ全身への被害も大きくなりやすいのです。

大動脈瘤の場合の注意点

脱水や熱中症では血がドロドロになるため動脈瘤の中に血栓ができやすくなり、その部位によっては脳梗塞その他の梗塞の原因になりかねません。

また血圧が低下しやすくそのための二次被害たとえば脳梗塞や腎不全その他も発生しやすくなります。

高血圧の場合の注意点

高血圧の場合はしばしば左室肥大と呼ばれる、左室の壁が分厚くなる状態にあります。こうなると脱水で血液の量が減ると血圧が下がりやすく、だからといって塩分や水分の補給が度を過ぎると高血圧になり、その程度によっては脳出血その他の恐れさえ出てきます。

そのため高血圧の患者さんたちも暑い季節には無理をしないで欲しいのです。

炎天下の昼間以外も注意! 室内や夜間にも多い熱中症

そして、熱中症に注意が必要なのは炎天下の昼間だけではありません。むしろエアコンをつけない室内や、夜間などにも多発しています。室内だから安全、夜だから安全という油断もあるのかも知れませんが、いずれの場合も注意が必要です。

こどもさん、ご高齢の方、そして心臓病をお持ちの方や心臓手術後の方、あるいは脳梗塞や腎臓病、糖尿病、栄養状態の悪い方々も含めて、暑い季節には体への極端な変化をできるだけ避けるようにし、快適に過ごすように心がけましょう。

参考資料:心臓外科手術情報WEBのお知らせのページ: 脱水や熱中症、災害時の対策その他の情報が得られます

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項