アドバイス1 マネープランがボーナス依存の危うさ
住宅購入のためトータルで6700万円を借り入れるとのことですが、相談者の奥様が心配されているように、今後を考える上で気になる点がいくつかあります。まず、夫婦とも十分な収入があるにもかかわらず、住宅購入の頭金や諸費用が支払済としても、現時点での貯蓄が少ないのが気になります。上記の収支データは住宅購入後を想定したものですが、それ以前もずっと赤字家計だったのでしょうか。そうだとすれば、家計データに上がっていない支出がまだあるのかもしれません。あるいは、不定期な大きな支出が毎年発生しているのか。ここはかなり大事な部分ですから(本人が認識していないのならなおさら)、年間の支出をもう一度再確認してみることは必要でしょう。
もちろん、現在の収入でも貯蓄はできます。ただし、それはすべてボーナス依存です。しかし、ボーナスは給与と違い、景気や勤務先の業績によって変動するリスクを抱えています。
さらに言えば、仮に転職せざるを得ない事情ができ、結果的に収入が下がったら、家計は一気に深刻な状況に陥る可能性があります。一方、住宅ローンは今後、30年、35年と毎月返済していかなくてはなりません。そう考えると、やはり家計は早めに見直しておくべきです。
アドバイス2 保険の為替リスクはやはり不安
家計で最初の目標となるのが、安定的な毎月の黒字化です。とは言え、奥様も会社勤務と子育てで、なかなか細かい節約に手が回らないでしょう。となると、支出費目として額の大きい、ご主人の単身赴任先での生活費がひとつのポイント。データでは10万円とありますが、実際は15万円になる月もあるとのこと。仕事上の付き合いもあるでしょうが、ご主人にある程度抑える努力(少なくとも10万程度で毎月キープしてもらうこと)を促すことはしておいていいと思います。
次に金額として大きいのが保険です。外貨建ての終身保険は、保険期間から考えて、教育資金として掛けているのでしょう。保険の詳細はわかりませんが、予定利率が高いとしても、為替リスクを含んでいます。今は円高に大きく触れていますが、その逆も今後当然あり得るわけです。
少なくとも、ボーナスが下がるようなことがあれば見直しの対象になります。払済保険にして、浮いた保険料分は貯蓄に回すか、円建ての学資保険にすべきでしょう。
変額保険も同様。死亡保障と老後資金の両方に備えるのが目的ですが、その分、保険料が割高です。優先順位を考えても、現時点で老後資金は住宅費用や教育資金よりも低いはず。たとえば、夫婦とも2000万円程度の死亡保障を掛け捨ての10年定期で確保すれば、先の終身保険の払済分と合わせて、6万円程度保険料がカットできます。それを貯蓄していけば、それだけで年間100万円にもなるのです。
アドバイス3 貯蓄が増えれば有利な選択肢が増える
もうひとつ、気になるのが教育資金です。お子さん2人、小学校に入学すれば教育費は大きく下がり、家計にも余裕が生まれます。ただし、それは公立に進学した場合です。あくまで平均値ですが、私立小学校では年間150万円(学校外活動費も含む/文部省「子どもの学習費調査」)、私立中学でも年間120万円程度が発生します。2人なら当然2倍です。そのような可能性があれば、それら教育費は確実にボーナス頼みになるはずです。家計が黒字になれば、ボーナスからの生活補てんがなくなります。理想としては、すぐにでも黒字化して毎月数万円程度は貯蓄したいところですが、それは奥様が時短からフルタイム勤務に切り替わった時点でもいいかと思います。今は少なくとも毎月赤字を出さないようにしてください。それだけでも、ボーナスからの貯蓄率は高まります。計算上はボーナスから年間250万円程度は貯蓄できますので、先の教育資金についても対応できるでしょう。
また、貯蓄がある程度まとまってきたら(1000万円以上)、いろいろと有利な選択肢が増えてきます。まず、奨学金がさほど大きくなければ、残金を一括で返済してしまってもいいのでは。もちろん、住宅ローンの繰上返済も可能ですし、毎月、確定拠出年金を始めてもいいでしょう。直接の目的は老後資金づくりですが、節税効果が高いので、現役時代の家計にもメリットは十分にあります。
相談者「もも」さんから寄せられた感想
アドバイスにて私が懸念していた点を指摘頂き、保険の見直しや主人の単身赴任費用の引き締め等しっかりしていきたいと思います。貯金は、もともと主人の収入が現在のようになったのがここ2、3年のこと、結婚式を挙げたこと、車購入での大きな支出があり、やはり不安事項でした。今後はしっかり家計を管理しつつ、まずは貯蓄1000万を目指したいと思います。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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