子育て/子供の自己肯定感・自尊感情

子供の自己肯定感が低い今、親はここに気をつけよう!(2ページ目)

現代版の「自己肯定感の育み方」についてお伝えしていきます。待機児童、少子化、虐待……。子育てにまつわる社会問題は山積みですが、子供たち自身の心の問題も深刻化しているのはご存知でしょうか? 数々の調査で分かってきているのは、今、日本の子供たちの自己肯定感が著しく低下しているということ。「自分が好き」と言えない子供たちに、親はどう手を差し伸べていけばいいでしょうか?

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

なぜ日本の子供たちの自己肯定感はだんだん低くなっていくのか

自己肯定感が育みにくい競争社会 我が子を丸ごと受け止めるコツとは?

自己肯定感が育みにくい競争社会 我が子を丸ごと受け止めるコツとは?

この現象を「年齢的な変化」と片づけるわけにはいきません。前述のとおり、諸外国の子供たちの自己肯定感は損なわれていないからです。日本に存在する何かしらの要因がそれを引き下げてしまっていると思われます。

筆者は、現代の“競争社会”と”完璧主義社会“が絡んでいると考えています。

例えば、こういうことはありませんか?
  • 子供が100点を取ったら「なんていい子なの!」
  • でも、50点なら「なんてダメな子……」
競争社会の中で完璧を目指そうとすると、子供のことを「点数」「順位」「条件」などで評価してしまうことがあります。心の中で思っているだけならまだしも、うっかりこれらを口に出してしまうと、子供の自己肯定感はどんどんと傷ついていってしまいます。

「ボクは50点だからダメなんだ」
「1位じゃなければ、パパとママはワタシのこと嫌いになっちゃう」
のように……。

 

親が設定するハードルが高い日本

筆者は海外生活が長く、外側から日本を見つめる機会も多いので、日本人と外国人のメンタルの違いに触れることもよくあります。何より感じるのは、日本人は「設定するハードルが高い」ということです。ママが母親として自分に課すハードルも高く、子供に求めるものも高いと感じています。

かつて日本に住んだことのある外国人の友人がこんなことを言っていました。

「日本人はみんなきちんとしていい子だから、親に怒られることなんてないでしょ?」

でも実際はそんなことはありませんね。朝から晩まで怒ってばかりという方もいるのではないでしょうか。外国人から見れば、日本の子はとてもきちんとしているのに、親のハードルが高すぎるゆえに「ダメな子」と感じる回数が多いとしたら、とても皮肉なことです。

これで分かるのは、「自分はダメだ」と感じる感覚は、設定されているハードルと格差があるときに生まれやすいということです。今は競争社会ですから、親は子供に、「いい成績」「いい学歴」「いい仕事」を期待しがち。でもそれが行きすぎてしまうと、子どもは否定されることが増えてしまいます。たとえ親は叱咤激励しているつもりでも……。

先ほど、中学生、高校生になると、自己肯定感が低下するというデータをご紹介しましたが、この時期はテストや受験などで競争が激化する時期。点数などで自分の存在価値をはかるクセがついてしまっていると、競争の中で「自分はダメだ」と感じることも多くなり、自己肯定感が下がっていってしまうのでしょう。

だからといって、競争すること自体、悪いことではありませんし、人間の歴史を見ても、競争が存在しない時代はありません。しかし、競争が絶えず行われている現代の特徴を踏まえると、親が「自己肯定感とはなにか?」「どうすれば高くなるのか?」を正しく理解し、子供たちに働きかけてあげる必要があると思います。

 

自己肯定感と自己効力感、その違いをクリアにしよう!

ここでまずお伝えしておきたいのが、自己肯定感と自己効力感の区別についてです。育児書に「自己肯定感を育みましょう」や「自己効力感を高めましょう」と書いてあることがあります。どちらも、「自己」ではじまり、「感」で終わるので、パッと見はよく似ていますね。それもあり、同義語のようにとらえている方もいると思います。たしかに、両方とも高い方がよく、低いと問題になりがち。しかし、中身は全く違います。

自己効力感とは、なにかにチャレンジするとき、「私ならうまく遂行できる」と信じられる気持ちのこと。自分の実力や可能性への自信です。自分を丸ごと肯定する「自己肯定感」とはニュアンスがだいぶ違いますね。

自己効力感が自分の”ポジティブな側面”に着目しているのに対し、自己肯定感は自分のポジティブな側面だけでなく、”ネガティブな側面”にも目を向けます。自分の長所だけではなく、欠点、弱点、苦手分野も全て受け入れて「好き」と言える感覚、それが自己肯定感なのです。その点からみても、自己肯定感の方がもっと土台的な役割を果たしているのがお分かりいただけるでしょうか。

 

自己肯定感アップ! そのために親がまず気をつけたいこととは?

自己肯定感を育てるには、その子を無条件に肯定することが不可欠です。

親がやってしまうミスが、
  • テストで100点だと「いい子」、でも、50点だと「悪い子」
  • お手伝いしてくれると「いい子」、でも、してくれないと「悪い子」
  • よく笑うから「可愛い子」、でも、泣いてばかりだから「面倒な子」
のように、条件をつけた形で子供を見てしまうこと。確かに「50点よりも100点」「お手伝いをしてくれないよりはしてくれる」「泣いてばかりよりはよく笑ってくれる」、その方が、親としては嬉しいです。でも、それをその子の評価につなげてしまうクセは止めなければいけません。

先述したように、今は競争社会。子供たちは、「点数」「条件」などで評価されることが非常に多くなっています。そんな社会だからこそ、親だけは、我が子を全身で受け止めてあげる必要があるのです。

「100点だって、50点だって、あなたへの気持ちは変わらないよ」

という無条件の愛です。

先日、安田成美さん主演のドラマ「朝が来る」を見ていたら、こんなシーンがありました。安田成美さんの息子役のあさと君が、同級生のそら君に、「ぼくはパパとママの宝物なんだ」と言われ、ママ(安田成美さん)にこう尋ねます。

「ぼくも宝物になりたい。そら君はなんでもよくできるから、だから宝物なんだよね」

しかしママはこう切り返します。

「そんなこと関係ないの」
「鉄棒なんかできなくたって、あさとはお父さんとお母さんの宝物だよ」
「あさとより大事なものはお母さんたちにはないの」
「あさとがいてくれるだけでいいんだから」

自己肯定感の育みのど真ん中をいくフレーズばかりで、とても温かい気持ちになりました。今の時代だからこそ、「できるできないは関係ない」「いてくれるだけでいいんだよ」をたくさん伝えていってあげたいですね。


*1:国立青少年教育振興機構「高校生の生活と意識に関する調査」
*2:日本青少年研究所が実施した調査の経年比較

 

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