間違っていませんか? 吐き気の対処法
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吐き気で気持ち悪いと悩んでいるなら、まずは原因を調べることが大事。症状だけを抑えても、根本的な対処法にはならないからです。
今回は、吐き気の原因や吐き気から考えられる病気をふまえて、吐き気の正しい対処法を解説します。
吐き気・嘔吐の原因と病気
吐き気が起こる理由は、脳の嘔吐中枢が刺激されるからです。さらに、嘔吐中枢が刺激されるルートはいくつかあります。具体的には、頭や内耳の病気などの中枢神経系、内臓などからくる末梢神経系、大脳の第4脳室底にある化学受容器引金帯(CTZ)の3つです。■中枢神経系
頭の病気や内耳の病気、咽頭の刺激に加えて、不安や恐怖、ストレスによるものなど。
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
- 偏頭痛
- 緑内障
- メニエール病
- 乗り物酔い
- 歯磨きなどの咽頭の刺激
- 心理的要因
胃腸のほか、胆石や尿路結石など内臓系の病気で起こります。心筋梗塞でも吐き気が起こることがあります。
- 食べ過ぎ
- 食中毒
- 急性胃腸炎
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 胆石
- 尿路結石
- 膵炎
- 虫垂炎
- 腹膜炎
- 心筋梗塞
- 腸閉塞
- 各種内臓癌
- 便秘
脳には血液脳関門というバリアーがあり、有害な物質が入らないようになっています。しかし、化学受容体引金帯(CTZ)という吐き気・嘔吐センサーがある第4脳室には血液脳関門がありません。体内の代謝物や薬剤、ホルモン、細菌の毒素に反応して、吐き気や嘔吐を引き起こしてしまいます。
- 飲みすぎ
- 薬(抗がん剤、抗うつ薬など)
- 肝不全
- 腎不全
- 急性肝炎
- 糖尿病性アシドーシス
- 感染症
- つわり
吐き気・嘔吐の原因の調べ方
吐き気・嘔吐を引き起こす病気は、非常にたくさんあります。しかし、経過や病状を組み合わせることで、原因を推測することは可能です。- 吐き気+飲酒→アルコール
- 吐き気+傷んだ食べ物→食中毒
- 吐き気+発熱・下痢・腹痛→急性胃腸炎
- 吐き気+食直後の嘔吐・嘔吐習慣→心理的な要因、神経性食思不振症
- 吐き気のない嘔吐・頭痛→くも膜下出血、脳出血、髄膜炎、偏頭痛
- 吐き気+めまい→メニエール病、内耳の病気
- 吐き気+乗り物→乗り物酔い
- 吐き気+腹痛、腹部膨満、大量の嘔吐、便臭→腸閉塞
- 吐き気+油っこい食事後の腹痛→胆石
- 吐き気+胸痛→心筋梗塞
- 吐き気+腰痛→尿路結石
- 吐き気+頭痛、眼痛→緑内障
- 吐き気+月経異常→つわり
原因別 吐き気の対処法
■食べ過ぎ吐き気への正しい対処法は?
消化不良による吐き気には、消化酵素が含まれている胃薬を飲んでみると良いでしょう。
【参考】胃もたれ・食べすぎ・胸焼けの対処法
■飲み過ぎ
飲み過ぎによる吐き気は、アルコールからできる有害なアセトアルデヒドが分解されていないことやアルコールによる胃炎が原因。水分をこまめにとる、アルコールを分解するのに必要な糖分をとる、あるいは胃炎に対しての胃薬は効果的が期待できるかもしれません。
ただし、飲みすぎに対して即効性のある治療法はありません。アルコールを摂取する際には、量を控えるとともに、水分やつまみを適度にとるように心がけましょう。
【参考】してはいけない!「飲み過ぎは吐いて解決」
■食中毒・急性胃腸炎
食中毒や急性胃腸炎による吐き気や下痢は、体内に毒やウイルス、細菌などが入ってきたものを排除しようとしている生体の防御反応です。吐き気や下痢は、毒素が排除されるまで続きます。
無理に固形物をとろうとすると腸を刺激して悪化することがあります。固形物は無理にとる必要はありません。ただし、脱水になりやすいため、水分はこまめに摂取するようにしてください。
自己判断で吐き気止めや下痢止めなどを飲むと、毒素が体内に留まる時間が長くなり、病気を悪化させる可能性があります。病状が強い場合は、医療機関を受診してください。
【参考】食中毒になりやすい人の6つの要因
■つわり
つわりの原因ははっきりしていませんが、胎盤の絨毛からでるホルモンによる嘔吐中枢への刺激や父親由来の遺伝子を異物とみなしておこるアレルギー反応から生じていると考えられています。
気分が悪いときはすぐに休む、おなかがすく前にこまめに食べるなどという方法で対応します。ただし、朝から晩まで吐く、体重が減る、水分を受け付けない、フラフラするなどの症状がある場合は、医療機関での治療が必要になります。
【参考】つわりを軽減する10の対処法
■乗り物酔い
乗り物酔いをする人は、前日から体調を整えたり、乗り物酔いの薬を飲んでおくなど事前の防止策が重要です。
酔ってしまってからは、可能なら乗り物から降りて衣服をゆるめて横になりましょう。降りられない場合は、揺れが少ない中心部分に乗り、衣服をゆるめてシートを倒し、楽な姿勢をとりましょう。
【参考】乗り物酔いの原因・症状・対策
■心理的な要因(ストレス)
心理的な吐き気は、おおもとのストレスから解消されないと治すことができません。小さい子供などでは本人が心理的なストレスを自覚していないこともあります。
ストレスを避けるということが根本的な治療になりますが、専門的な知識が必要なケースも多いため、医療機関での治療をお勧めします。
吐き気は病気のサイン! 意外な病気が隠れていることも
吐き気は病気のサイン!
吐き気も、病気に対しての異常を知らせるサイン。吐き気だけを抑えて、吐き気の陰に隠れている「くも膜下出血」や「心筋梗塞」などの重要な病気を見逃してはいけません。
私自身が実際に経験した例でも、吐き気が主訴で歩いて受診した中年男性が「心筋梗塞」であったり、整体で腰痛が治らずに吐き気で受診したおばあちゃんが「尿路結石」だったりしたことがありました。
原因不明の吐き気は、吐き気だけを抑えても、根本的な治療にはなりません。原因がわからない吐き気は、自己判断で吐き気だけを抑えようとせず、医療機関に相談したほうが良いでしょう。