一番風呂とは……「湯が薄い」の意味・湯の成分は?
気持ちがいい一番風呂。でも実は肌には刺激が強いことがあるのです
日本の水道水は世界的に見てもとても質が高く、全国どこでも安心して飲むことができます。現在、日本の水道水は1957年(昭和32年)に制定された水道法によって厳しく規制を受けており、その安全性は折り紙つきです。当然、お風呂に使うのにも全く問題がありません。
しかし、日本の水道水は狭い国土で採水されるものなので、雨で降って水が地中に滞在する時間が大陸の諸国よりも短いために、ミネラル分が少ないいわゆる「軟水」が一般的。当然、一番風呂の湯にも溶け込んでいるミネラル分は少ないのです。
「一番風呂は体に悪い」理由…人体の濃度とお湯の濃度の差が問題
一方、人体の皮膚の内側は細胞や血液などで満たされていますが、細胞や血液といった体液中にはたんぱく質や様々なミネラル分などの成分が含まれており、日本の水道水と比べるとずっと濃くなっています。この体の内側の濃度(濃い)とお風呂のお湯の濃度(薄い)の違いが皮膚にぴりぴり感や違和感といった刺激をもたらすと考えられています。温泉水で言えばその濃さの違いで「低張性」「等張性」「高張性」三段階に分類されますが、そのうち人の体液と同じ濃さである「等張性」が最も刺激が少なく、肌に負担が少ないと言われています。
水道水は人の体液より薄く、温泉水にならって分類するとすれば「低張性」になります。低張性の湯が皮膚と接すると水が皮膚の中へ移動します。その結果、長湯をすると指先がふやけるなどの現象が起こってきます。この水の皮膚への移動が皮膚への刺激になり、敏感な人は皮膚の不調を感じます。
一番風呂と二番風呂の違い…湯に起こる変化とは?
実は一番風呂と二番目以降のお風呂では、湯の成分が異なります。人がお風呂に入ると、その人の皮膚に付着している汚れ、皮脂、汗、古くなった角質などの不純物が湯に溶け込みます。その分、わずかですが、湯の濃度が濃くなります。このわずかな変化が皮膚への刺激を和らげます。二番風呂の湯ざわりが柔らかいというのはこういう理由があったのです。あるテレビ番組の検証で、この一番風呂と二番風呂の濃度の差を簡易的に測定したのですが確かに二番風呂で湯の濃度が濃くなっていました。実際に一番風呂と二番風呂の入浴による皮膚への影響を、お風呂上りにそれぞれ皮膚を拡大して見る測定機器で観察したところ、一番風呂では皮膚のキメが乱れていましたが、二番風呂の方は予想以上に皮膚のキメが細かく整っていてふっくらしている様子が観察できました。
また、水道水には細菌の繁殖を抑えるため、少量の塩素が含まれています。多くの人には問題がありませんが、皮膚や弱い方やアトピーのある方は、この塩素が刺激になることがあります。二番風呂ですと、最初に入浴した人の不純物がこの塩素を中和してくれます。結果として二番風呂は塩素が減り、湯触りが柔らかくなるのです。
一人暮らしの人は入浴剤を活用するのも手
二番風呂がいいことが分かっても、一人暮らしの人はいつも一番風呂で、二番風呂に入ることは不可能です。また、二番風呂では汚れが気になる方もいるでしょう。その場合、解決策としてお勧めなのは、入浴剤です。入浴剤にはさまざまなミネラル分が配合されており、湯に溶かすことによって二番風呂と同じような効果をもたらします。多くの入浴剤は塩素も中和してくれます。もちろん湯もきれいなままです。また、ゆずを浮かべる、菖蒲湯などの季節ごとの薬湯でも、湯に物質を溶かし込むという点では入浴剤と同じような効果が期待できます。
一番風呂が苦手な人は一工夫して肌に優しいお風呂を楽しんでみましょう。
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