お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

57歳、貯金はあるが、85歳の母親と兄の医療費が不安(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、母親と兄の医療費に悩む50代の女性の方です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 親の介護は親の資産の範囲内、これが基本

相談内容からも、桜さんが家族思いであることが十分伝わります。もちろん、肉親ですから、経済的に支えたいという気持ちも理解できますし、そう思うのはごく自然なことでしょう。

桜さんの不安は、お母さんとお兄さんの医療費や介護費用も含めた経済的支援にどのくらいかかるかわからないこと。かかる費用によっては、自分たちの老後資金も大きく減ってしまうのではないか。日本と離れて生活している点も、そういった心配を増幅させているのだと思います。

結論から言えば、自分たちの生活に影響が出るほどの支援は不要です。お母さんに今後発生する、さまざまな費用はお母さんの資産から捻出する。これが基本的な考え方。お兄さんについても同様です。

桜さん自身に経済的に余裕がありますから、ついあれもこれも、という気持ちになりがち。しかし、それにかかる費用はどこから支払われるのかを考えて上で、ときにはそれ以上の支援はあえてしないことも必要。ドライに割り切ることは桜さんには酷かもしれませんが、これがFPという立場からのアドバイスです。

もちろん、お母さんとお兄さんに資産も収入もないのなら、支援の仕方も変わってきますが、幸い、贅沢はできないまでも、ともに生活しているだけの公的年金を受け取っています。今後は、どう家計管理をし、ときに節約するところはして、年金の範囲内でどう老後を過ごしてもらうか。直接の資金援助よりも、それについていろいろ手を貸していくことが、桜さんのすべきことになってくると思います。
 

アドバイス2 介護保険のさまざまな支援制度を活用

では、お母さんとお兄さんに今後かかってくるであろう費用については、具体的にどう考えておくべきでしょうか。

医療費については、もちろん月に数千円でも、現在の収入からすればそれなりの負担ですが、一度に数十万円がかかるようなことは基本的にはないと考えていいと思います。国民健康保険に加入しているため、高額療養費制度が受けられるからです。1ヵ月の間に一定額を超えた医療費が発生した場合、その超過分の金額が健康保険から支給されるという制度ですが、70歳以上で収入が年金だけの場合、自己負担額は1万5000円で済みます(ただし、高度先進医療等、保険適用外の治療は対象外)。これなら、年金からの捻出も可能ではないでしょうか。

介護費用にしても、ホームヘルパーの方に自宅に来てもらい、入浴の手伝いや食事の準備をしてもらうといったい在宅介護はもちろん、介護保険の適用となる施設の入居も、施設数の不足という別の問題はあるものの、条件によっては本人の年金だけで費用をまかなうことは不可能ではありません。

そのためにはまず、介護が必要になった時点で市区町村の窓口に出向き(もしくは郵送)、「要介護認定」の申請をすること。それにより、上限内の費用(月額5万300円~36万350円/要支援・要介護度に応じて上限額が異なる)については、自己負担はお母さんのケースなら1割で済むはずです(一定の所得を超えると2割負担)。

もちろん、上限を超えてコストがかかることもあるでしょう。その場合は、「高額介護サービス費」という制度が利用できます。本人もしくは世帯の所得等により、超過分について上限額が決められ、それを超える費用は介護保険から支給されます。

加えて、医療費と介護費を合算して払い戻しをしてもらえる「高額療養・高額介護合算制度」というものもあります。いずれにせよ、介護負担を抑えられるよう、いろいろな制度があるということです。

要支援・介護の度合い、受ける介護サービスの内容等によって差はありますが、在宅介護と通所介護を併用して、自己負担額の目安は月額2万~5万円(要介護1~3)、介護保険適用の施設に入所した場合、同じく5万~15万円(要介護3)がひとつの目安と考えてください。
 

アドバイス3 成年後見人と十分なコミュニケーションを

現在の状況ですが、お母さんについては、すでに成年後見人の方が世話している。離れて暮らしている以上、いい選択だと思います。

ただ、今回不明だったのは、お母さんに渡す生活費、それ以外に家賃、成年後見人への報酬などの生活コストで年金は余るのかどうかという点。「貯蓄がない」とのことですので、余らないとすれば、その理由(支出内容)を把握しておく必要があります。

そういうことも含めて、成年後見人の方と十分にコミュニケーションを取り、そして、桜さんの希望もしっかり伝えておく(たとえば、貯蓄が少しでもできないか、など)といった作業が必要です。

また、介護であれば、お住まいの地域包括支援センターや、担当するケアマネージャーと密に連絡を取ることです。離れて生活しているため、よりそのことが重要になってきます。

お兄さんに関しては、自身で家計管理をしているわけですが、お母さんと違いまだ61歳。貯蓄の必要性はより大きいと思います。統合失調症ということですから、可能なら、お兄さんについても成年後見人制度は利用されてもいいのでは。そこでしっかり家計を管理してもらえば、貯蓄も不可能ではない気がします。

また、2人のために毎月10万円ずつ積み立てられていることについては、桜さんの家計に大きな負担とならなければ続けても構いません。ただ、現段階での支援は、年間20万円程度の食料などの援助プラスアルファにとどめておいた方がいいでしょう。すでにカードローンの清算を肩代わりするなどしているわけですから、それだけでも十分支えてこられたわけです。

葬儀やお墓の費用については、お2人の年金から今後貯蓄ができていくようなら、まずそれが原資となります。あとは、多少なりとも桜さんが出すことになるかもしれません。もちろん、桜さん自身の気持ちもあるでしょうが、それが簡素なもの、割安なものであっても、それはそれで自分の役目を果たしたと納得することが必要だと考えます。
 

相談者「桜」さんから寄せられた感想

深野先生からのアドバイスを読んで、温かいお言葉に涙が出ました。とても的確な上に精神的な対応を教えて頂けてありがたいです。今の母と兄が出来ない事、「正しい判断」や「正しい情報収集」を私が代わりにしていく事が大事だと再確認出来ました。母は既に「要介護1」に認定され、ケアマネージャーさんとはメールでやりとりできる状態ですが、また日本に帰るので、その時に今後の介護保険の様々な支援制度を相談させていただきます。後見人司法書士とも毎週メールで連絡していますが(母がわがままなので小さな問題が多く)、今後の貯蓄についてもじっくり相談します。色々とありがとうございました。プロのアドバイスが頂けて、とても感謝しています。

教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
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業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ




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