交渉過程の内容などを記録することの大切さについては ≪不動産契約の「言った、言わない」を防ぐメモの取り方≫ でも説明しましたが、最近は不動産会社の営業担当者などと話をするときにスマートフォンの録音アプリやICレコーダーなどを使う人もいるようです。
自分で手書きのメモをする代わりに、このような録音機器を使うことも有効でしょう。その際に隠し録りのようなことをする必要はまったくなく、堂々とテーブルの上に置くなどして相手に見せながら録音をして構いません。
最初に「録音させていただきます」と、ひとこと添えればよいのです。
相手の営業担当者は「細かいお客様だな」と感じるかもしれませんが、不動産の契約交渉では他人より少し細かいくらいがちょうどよいものです。「相手からどう見られるか」などを気にする必要はありません。
逆に相手の営業担当者がそれを拒絶したり、露骨にイヤな顔をしたりすれば、「これから話そうとする内容に自信のない営業担当者」「いい加減な話や嘘でごまかそうとしている営業担当者」などのケースも考えられるでしょう。
そのときの対応や表情が、数か月におよぶ住宅購入の過程を安心して任せられる相手かどうかを見極める材料にもなるでしょう。自信のある営業担当者なら「どうぞ!!」と明るく対応してくれるはずです。
ただし、いちばん大切なのはお互いの信頼関係です。
営業担当者だって感情をもった生身の人間ですから、契約交渉過程の途中まではメモをすることすらなかったようなお客様が、ある日突然に録音機器を持ち出せば、「あなたが信用できない」といった意思表示にも受け取られかねないでしょう。
録音機器を使うのであれば、やはり最初のアクションが肝心です。初めに話をするときから「そういうお客様だ」と印象づけておくことが秘訣かもしれません。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年10月公開の「不動産百考 vol.16」をもとに再構成したものです)