LINEに関東財務局が立ち入り検査
LINEが提供するパズルゲームLINE POP
毎日新聞の記事では、「LINE POP」に使われている宝箱の鍵が、資金決済法で規制されるゲーム上の通貨である可能性があり、本来届け出等がを求められるものを、宝箱の鍵の仕様変更で処理した、という内容が書かれています。記事中には「当時の未使用残高は約230億円。長期間使っていない利用者分を除いても数十億円の供託を求められる可能性があったという。」と書かれ、額の大きさも相まって大変にセンセーショナルな記事となりました。
一方、LINEはこの記事に対し、関東財務局の立ち入り調査があったことは認めているものの、立ち入り調査は定期的なものであり、LINE POPの宝箱の鍵に関して資金決済法上必要な届け出をしなかった為ではない、と公式発表をしています。また、数十億円の供託についても、現金での供託ではなく、銀行と、発行保証金保全契約を結ぶ方法があることを指摘し、財務状況に与える影響は軽微だとしています。
【関連サイト】
LINE関東財務局が立ち入り検査(毎日新聞)
【コーポレート】一部報道内容に関する当社の見解について(追記・更新あり)(LINE株式会社公式サイト)
毎日新聞の報道では、宝箱の鍵の仕様変更というところが大きくクローズアップされていますが、ゲーム業界にとっては、注目すべきポイントは必ずしもそこではないように思います。ことはLINEのみならず、ゲーム業界全体に関わる可能性があります。
法律に関わることなのですごく難しいところもあるのですが、できるだけかみ砕いてご説明できればと思います。
資金決済法と前払式支払い手段
コンビニなどで売られているプリペイドカードは、前払式支払手段ということになります
すごく簡単に言うと、インターネットの時代にも対応できるようにお金のやり取りについて考えたきまり、ということです。主には、前払式支払手段、資金移動、資金精算の3つがありまして、今回関係があるのは、前払式支払手段についてです。
【関連サイト】
資金決済に関する法律(法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ)
前払式支払手段というのは、読んで字のごとく前もってお金を支払っておく支払い手段ということで、法律には細かい定義が書いてあるんですが、簡単に言えばプリペイドカードとか、商品券ののようなものを指します。前もってお金を支払っておいて、後からそれと商品やサービスを交換できる、というものですね。
元々は「前払式証票規制法」という法律があったんですが、これは利用者の手元に金額の情報が無くて、発行者のサーバー上などで管理されているサーバ型前払式支払手段に対応していませんでした。そのため廃止されまして、新たに資金決済法でカバーした形となります。前払式支払手段の発行者として資金決済法の規制が適用される場合、いくつかのルールを守らなければいけません。
代表的なものを言うと、未利用残高の総額が1,000万円を超える場合や、自分の所以外でも使えるようにする場合は届け出をしてね、というもの。発行者や苦情の窓内など、ルールに従った表示をしてね、というもの。未利用残高の総額が1,000万円を超える場合は、利用者を保護する為に、未利用残高の半分を供託するか、銀行などと契約して保証できる仕組みを使ってね、というものです。
ちなみに、毎日新聞が指摘する、数十億の供託金が求められる可能性というのは、この利用者保護のルールによるものです。ただし、これは供託金のほかに、銀行と発行保証金保全契約を結ぶ、あるいは信託会社と発行保証金信託契約を結ぶという方法もあるので、LINEが主張している通り、必ずしも現金による供託をしなければいけないというわけではありません。
ちょっと話がそれましたが、つまりプリペイドカードのようなものを発行する場合は、インターネット上の電子情報でのやりとりであっても、届け出をして、必要な表示を行い、万が一の場合にも消費者が守られるよう備えてね、というきまりになっています。
しかし、様々な形でアイテムなどを販売しているオンラインゲームにとって、どれがプリペイドカードのようなもの、に該当するのかが難しい話です。