中古住宅を不動産会社が自ら買い取って、リノベーションして販売するのが「買い取り再販」です。中古マンションでは多いのですが、一戸建てでも増えつつあります。そのひとつ、「西荻窪の家」を見学しました。

ハーフビルド・リノベーションで販売するという発想

「西荻窪の家」の売り主はリビタ。1棟丸ごとのリノベーションによる分譲などで、数多くの実績がある会社です。今回リノベーションした一戸建ては、建築設計や再生プロデュースを手掛けるSPEAC、内装や外構に関わる素材やパーツ、職人による工事サービスを提供するウェブショップ「R不動産toolbox」と組んで、家の素地だけ用意して、最後は住み手が完成させる、ハーフビルド・リノベーションという手法を採りました。

築31年の一戸建ては、いわゆる建売住宅として売られたものです。どこにでもありそうな中古一戸建てでしたが、安心して快適に住めるようにするだけでなく、住み手が自分たちらしく暮らせる空間にするために、自ら完成させることをゴールに置いたのが、大きな特徴です。
改修前

改修前(写真提供:リビタ)

改修後

改修後は外観もすっかり変わっている(写真提供:リビタ)

まず、内装等を取り除いて基本構造に戻し、もともとの骨組みを耐震性能と断熱性能を向上させるように補強しました。そのうえで、窓の位置などを大きく変えています。隣家と目線が合う面の窓を減らし、南側の窓を大きく取ったほか、新たに天窓を設けることで屋根の上から日差しを取りこみ、2階床のポリカーボネイト(透明で燃えにくいアクリル板)を通して1階に広がる設計になっています。
室内

2階の天窓から日差しが入り、階段奥のポリカーボネイトの床から1階へとつながる

室内1階

1階土間の天井がポリカーボネイトなので、柔らかい日差しが1階に広がる (写真提供:いずれもリビタ)

間仕切り壁や収納などは設けていません。住み手が自分なりの暮らしを想定して、後付けするのがハーフビルドの考え方です。

住宅の基本性能は向上させるが、箱の中身は住み手が考える

住宅の基本性能となる耐震性能については、耐震診断を受けて補強工事を実施し、今の耐震基準に適合させたうえで「耐震適合証明書」を取得します。断熱性能は、開口部はすべて複層ガラスのサッシにし、外壁や屋根、床の断熱改修を実施することで、平成25年に改訂された高い水準の省エネ基準を確保しています。

こうして、住宅の箱の部分については、安心して快適に暮らせる環境を整えていますが、住み手が内装などを選んで工事を終えたものがゴールになります。今回筆者は、ゴールの段階で見学をしました。

説明会

見学日の説明会

見学日は、西荻窪の家を担当した、リビタの田中亜沙美さん、SPEACの宮部浩幸さんから詳しい説明がありました。

JR中央線西荻窪駅から徒歩15分、敷地面積88.53平方メートル、建物面積85.52平方メートルの木造在来工法の2階建ての築31年の一戸建てです。

購入して住まわれるのは、30代のファミリー。販売価格の中には住み手が選べる内装分100万円分が含まれているので、住み手が選んだものを仕上げて完成となります。実際には西荻窪の家の住み手は、100万円を超える内装や外構を選びましたが、まとめて住宅ローンを借りることもできますし、検査と保険がセットになった「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」にも加入しているので、住宅ローン控除の適用も可能です。

住み手は何を選んで完成させた?

当初提示されていたメニューには、間仕切り壁や収納のほかにも、タイル張りや塗装、ウッドデッキ、ミラー、フックやラックなどのアクセサリーといった多様なツールが用意されていました。

では、その中から住み手が選んだツールについて、見ていきましょう。
住み手が選んだ内装

住み手が選んだ内装

まず壁や天井については、塗ったり貼ったりせずに素地のままにしました。
1階の土間に「オープン棚」、土間横の洋室に「窓付きの壁と扉」を設置し、左上の写真手前に当たる洋室と土間横の洋室には「クローゼット」を設置。さらに、1階の浴室には「ガラス壁&扉」(左下写真) を設置しました。

2階は、ワークスペースとなる洋室に「ハンモック」と「オープン書棚」(右写真)、キッチンに「キッチンキャビネット」を設置しました。ほかにも適宜、「タオル掛け」などのアクセサリーも設置しています。
室内

土間側から見た完成後の1階室内。右にオープン棚、左に窓付きの壁、奥にクローゼットが見える(提供:リビタ)


外構

ウッドフェンスの外構で完成

最後に、駐車場が不要な住み手は、庭をウッドフェンスで囲む選択をしました。このセレクトで工事を終えて、引き渡しとなります。

住み手は、当初豊富なツールをあれこれ選ぼうとしましたが、「今本当に必要なものはなにか」を考え、優先順位を付けて絞り込んだそうです。

ただし、後付け可能な家なので、子どもが大きくなったタイミングなどで、ツールを増やしたり、変えたりといったこともできるでしょう。
10年後どうなっているか、見てみたい気もします。


中古住宅、なかでも築年数の経った一戸建ての流通促進が大きな課題となっています。消費者にとっては、中古住宅を買って自分でDIYやリノベーションをしたり、リノベーション済みの中古住宅を買ったりすることに加え、ハーフビルド・リノベーションという選択肢が増えることで、希望の住まいに出会える可能性が広がると思います。
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