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2016年公示地価は全国平均で上昇、各地の動向を探る(2ページ目)

2016年1月1日時点の「公示地価」が発表されました。全国平均では8年ぶりの上昇となりましたが、3大都市圏よりも「地方中枢都市」の伸びが目立ったほか、一部では下落率の拡大などもみられます。今年の公示地価の傾向を確認しておきましょう。

執筆者:平野 雅之


東京圏の住宅地は下落率の拡大も

東京圏全体では、住宅地がプラス0.6%(前年はプラス0.5%)、商業地がプラス2.7%(前年はプラス2.0%)となり、いずれも3年連続の上昇となっています。とくに東京23区では、横ばいだった12地点のほかはすべての地点が上昇でした。

住宅地の市区別平均をみると、東京都は青梅市がマイナス0.6%で前年のマイナス0.3%から悪化しましたが、それ以外の市はすべて上昇しています。

神奈川県は横浜市、川崎市、相模原市ですべての区が上昇したほか、藤沢市、鎌倉市など5市が上昇、埼玉県はさいたま市、川口市、所沢市など15市、千葉県は千葉市、木更津市、君津市など13市が前年に引き続き上昇となっています。

しかし、神奈川県では下落だった11市のうち8市で前年より下落率が拡大し、座間市は前年の横ばいから下落へ転じています。埼玉県と千葉県でも一部の市で下落率の拡大がみられました。

東京都中央区が9.7%、千代田区が9.4%の上昇など、都心部での地価上昇が目立つ一方、千葉県君津市が5.4%、木更津市が3.2%の上昇で、都区部平均の2.8%を上回る上昇となっています。

東京圏の住宅地で上昇率が大きかった上位10地点には、月島、佃、勝どきなど複数の湾岸エリアが2年ぶりに顔を出しており、五輪開催に向けた開発ラッシュが再び影響力を増しているのかもしれません。

商業地の市区別平均では、東京都がすべての区市で上昇、神奈川県、埼玉県、千葉県でも多くの市が上昇し、横浜市、川崎市、相模原市、さいたま市、千葉市の政令指定都市は、横ばいが2区あったのみで他はすべて上昇しています。

東京圏の商業地における上昇率上位10地点のうち、8地点を中央区銀座が占める状況は前年と同じであり、高額エリアでの上昇傾向はさらに強まっているといえるでしょう。

全国における公示地価の最高価格地点は、10年連続で中央区銀座四丁目(山野楽器銀座本店)となり、その上昇率は東京圏で2番目の18.6%でした。金額は1平方メートルあたり4,010万円、1坪あたり1億3,256万円に達し、公示地価における史上最高額を更新しています。


大阪圏は商業地の伸びが顕著に

大阪圏全体では、住宅地がプラス0.1%で8年ぶりの上昇、商業地がプラス3.3%で3年連続の上昇となっています。商業地は3大都市圏の中で最も高い上昇率となり、とくに大阪市の中心6区は平均で10.9%の高い伸びを示しました。

住宅地の市区別平均では、前年、前々年と同じく大阪市、堺市、神戸市、京都市の平均がいずれも上昇だったものの、いくつかの区で引き続き下落している状況も変わっていません。

それ以外に大阪府では豊中市など10市、兵庫県では西宮市など4市、京都府では宇治市など2市、奈良県では奈良市など4市が上昇しました。下落が続く市ではおおむね下落率の縮小がみられるものの、一部では下落率が拡大、あるいは前年の上昇や横ばいから下落へ転じています。

大阪圏の住宅地で上昇率が大きかった上位10地点のうち5地点を大阪市、3地点を神戸市が占めていますが、2ケタの上昇は1地点にとどまり、東京都心などに比べて緩やかな上昇のようです。

また、商業地では大阪市中央区心斎橋筋2丁目の地点が全国1位となる45.1%の上昇を示し、全国2位も大阪市中央区道頓堀1丁目の地点における40.1%でした。これらを含め大阪市内の6地点が全国の10位以内に入っています。

大阪圏、とくに大阪市では比較的緩やかな住宅地の動きと対照的に、商業地の伸びが際立っているといえるでしょう。


名古屋圏は名古屋駅周辺の商業地が目立った動きに

名古屋圏の住宅地はプラス0.8%で前年と同じ、商業地はプラス2.7%(前年は1.4%)で、いずれも3年連続の上昇でした。

住宅地の市区別平均をみると、名古屋市では港区を除いて他の区がすべて上昇し、尾張地域と西三河地域のおよそ4分の3の市で上昇となっていますが、そのうちおよそ半分の市は前年よりも上昇率が縮小しています。

また、前年の上昇から横ばいへ、または上昇から下落へ転じた市も一部にみられ、上昇傾向が一様に広がっているわけではありません。

名古屋圏の住宅地における上昇率の上位10地点のうち5地点を名古屋市内の地点が占め、東区や昭和区では高い上昇率となっているものの、名古屋市の平均では1.6%の上昇にとどまり、みよし市や日進市、豊田市など6市を下回っています。

商業地では、名古屋市中村区椿町の地点における38.4%を筆頭に、名古屋市の5地点が20%を超える上昇となったほか、名古屋圏の商業地における上昇率の上位10地点はすべて名古屋市内で、そのうち6地点が名古屋駅周辺となっています。

リニア中央新幹線の開業に向けた再開発が大きく影響しているのでしょう。


地方圏は24年連続の下落

地方圏の平均では、住宅地がマイナス0.7%、商業地がマイナス0.5%で、1993年から24年連続の下落となりました。

下落率は6年連続で縮小しているものの、「地方中枢都市」と位置づけられる札幌市、仙台市、広島市、福岡市の影響も大きいでしょう。

4市の平均は住宅地が2.3%の上昇、商業地が5.7%の上昇で、「4市を除いた地方圏」は住宅地が1.0%の下落、商業地が1.3%の下落でした。

また、地方中枢都市における半年ごとの地価動向では、商業地が前半は2.6%の上昇なのに対して後半は4.3%の上昇となっています。3大都市圏ではおおむね後半に上昇率が縮小しており、それとは対照的な動きがみられます。

人口10万人以上の市で平均が上昇したのは、住宅地で24市、商業地で34市にのぼりますが、全体的にみればまだ厳しい状況であることに変わりはありません。

前年は住宅地における全国の上昇率上位10地点のすべてを福島県いわき市が占めていましたが、今年のトップは北海道倶知安町の地点だったほか、6地点を札幌市内の地点が占めました。東日本大震災の被災地における移転需要も、落ち着きを取り戻しつつあるといえるでしょう。

商業地では、前年に全国で最も高い上昇率となった金沢市の地点が、今年は7位にとどまっています。また、札幌市内の8地点で20%を超える上昇率となったのが特徴的な動きです。


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