東京・銀座の地価は軒並み大幅な上昇となった
全国(全用途)平均は前年比0.1%のプラスで、2008年以来8年ぶりの上昇となりましたが、上昇地点の割合は35.0%にとどまり、45.2%の地点は引き続き下落しています。
住宅地の全国平均は8年連続の下落となるマイナス0.2%(前年はマイナス0.4%)でしたが、その下落率は6年連続で縮小しました。
その一方で、訪日客の急増や金融緩和、再開発などを背景に好調な動きをみせる商業地は、全国平均で0.9%のプラス(前年は0.0%)となり、8年ぶりの上昇を記録しています。
3大都市圏では住宅地平均が0.5%のプラス、商業地平均が2.9%のプラスで、いずれも3年連続の上昇でした。上昇幅は前年を上回っているものの、3大都市圏の住宅地における上昇地点の割合は前年を下回るなど、地価上昇の動きが一様に広がっているわけではありません。
2016年(平成28年)の公示地価について、その主な動きを確認しておくことにしましょう。
公示地価とは?
公示地価とは、地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づき、国土交通省による土地鑑定委員会が毎年1回公示する、1月1日時点における標準地の価格で、公共事業用地の取得価格算定の基準とされるほか、一般の土地取引価格に対する指標となることを目的としています。2016年の公示対象市区町村は1,376(東京23区および785市530町38村)、対象地点(標準地)の数は前年から1,890増えて25,270(うち280地点が選定替え)となっています。ただし、このうち原発事故による避難指示区域内の15地点については、引き続き調査が休止されています。
ちなみに、調査対象地点の数は2004年の31,866をピークに、その後は年々減らされ続けていましたが、今年は12年ぶりの増加となりました。
公示地価はその土地本来の価値を評価するため、現存する建物などの形態に関わらず、対象土地の効用が最高度に発揮できる建物などを想定したうえでの評価がされることになっています。
なお、公示地価についての詳しい内容は、国土交通省の「土地総合情報ライブラリー」にアクセスすることで、1996年(平成8年)以降のものをみることができます。
3大都市圏よりも地方中枢都市が高い伸びを示す
公示地価はリーマンショック後の2009年に下落へ転じましたが、2011年以降は下落率の縮小傾向が続き、住宅地はほぼ下げ止まり水準へ、商業地は上昇へ転換したところです。3大都市圏では、大阪圏の住宅地がようやく上昇へ転じ、それ以外は住宅地、商業地とも3年連続の上昇でした。ただし、名古屋圏の住宅地は前年と同じ上昇率にとどまるなど、住宅地は全体的にあまり大きな変化はみられません。
それに対して「地方中枢都市」として位置づけられた札幌市、仙台市、広島市、福岡市の4市平均は、住宅地が2.3%の上昇、商業地が5.7%の上昇を示し、いずれも3大都市圏の平均を大きく上回っています。
前年と比較可能な公示地点のうち、上昇地点の数(全国・全用途)は8,100で前年の7,569から少し増えていますが、その増加スピードにはあまり勢いが感じられません。横ばい地点の数は4,560(前年は4,288)、下落地点の数は10,425(前年は11,186)でした。
上昇地点の内訳は、東京圏の住宅地が2,129となっています。前々年は2,368、前年は2,266でしたから、2年連続で減少している状況です。平均の上昇率は拡大しているため、上昇する場所と下落する場所の差も大きくなっているといえるでしょう。
東京圏の住宅地を除けば、それ以外は地方圏も含めていずれも上昇地点が増加しました。その一方で、大阪圏の住宅地における上昇地点数は依然として下落地点数を下回っており、東京圏や名古屋圏と対照的な傾向をみせています。
地方圏では、「地方中枢都市」(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の住宅地で77.6%、商業地で84.8%の地点が上昇となり、いずれも3大都市圏を大きく上回る結果でした。
しかし、「地方中枢都市」を除いた地方圏は住宅地、商業地とも依然として約7割の地点が下落となっており、厳しい地価の状況から抜け出せていません。
都道府県別平均は、住宅地で9都県、商業地で16都道府県が上昇
都道府県別平均では、住宅地で熊本県、商業地で北海道、石川県、兵庫県、広島県、福岡県が新たに上昇となりました。2016年の公示地価が上昇だったのは、住宅地で宮城県、福島県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、福岡県、熊本県、沖縄県の9都県、商業地で北海道、宮城県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、石川県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、沖縄県の16都道府県です。
それ以外に住宅地では埼玉県と大阪府、商業地では奈良県が横ばい(0.0%)でした。このうち埼玉県は前年と同じで、大阪府と奈良県は前年までの下落から横ばいに転じています。
住宅地で最大の上昇率だったのは前年と同じく福島県の2.9%でしたが、前年に2.3%の上昇だった宮城県は1.9%に減速し、東京都の上昇も1.6%にすぎません。
宮城県と神奈川県では前年よりも上昇率が縮小し、三重県と滋賀県は下落率が拡大しています。平均変動率でみれば、住宅地は比較的ゆるやかな変化にとどまっているといえるでしょう。
その一方で、商業地は大阪府の4.2%や東京都の4.1%をはじめ、前年よりも大きな上昇となった都道府県が目立っています。上昇率の縮小や下落率の拡大も、商業地ではみられませんでした。
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