アドバイス1 思っている以上に貯蓄ペースは高い
「貯蓄がなかなかできない」というご相談ですが、いただいた情報を見る限り、思われているほどではないように思います。毎月、2万円定期預金に積み立てられていますが、それ以外にも実は保険で貯蓄形成されていらっしゃいます。加入されている保険のうち、学資保険と養老保険、そして低解約返戻金型の終身保険が2本。これらは貯蓄性のある保険商品です。さらに変額終身もマーケットの影響はあるものの、貯蓄性のある商品と考えていいでしょう。結果、それら保険料の合計は月額3万1000円ですから、実際には毎月5万1000円貯蓄していることになります。住宅ローンを抱えての額ですから、決して低い貯蓄額ではありません。
とは言え、相談文には「貯蓄を取り崩すこともある」とありますから、家計のやりくりは苦労されているようですね。
その要因を考えると、貯蓄性の保険料を捻出するために別の貯蓄を取り崩している面もありますが、そもそもの大きな要因は住宅ローンでしょう。返済額や金利から判断して、おそらく借入額は3500万程度ではないでしょうか
これは世帯収入の約7倍ですから、やはり多めと言わざるを得ません。もし奥様の収入が途切れたら、ご主人の収入の40%が住宅ローンの返済で消えてしまいます。ボーナスの大半がボーナス払いに充てられるのもきびしい状況を作っています。
では、住宅コストをどう抑えるかですが、住宅ローンのテクニックとしては、借り換えが挙げられます。
適用金利は0.75%ということで十分低い水準ですが、3年固定とのこと。マイナス金利の影響もあってか、いまなら同程度の金利水準でより長めの固定期間タイプもあります。あるいは、変動金利タイプを選択すれば、適用金利を下げることもできます(もちろん変動金利を選択すれば、金利変動のリスクが増えます。ですが、いまも固定期間はわずか3年なので、それほど大きくリスクが増えるともいえないでしょう)。
とはいえ、借りて間もないので、手数料が割高です。借り換えは慎重にご検討ください。また、返済が始まったばかりで買い替えも現実的ではないでしょう。となると、貯蓄を増やすのなら、住宅コスト以外の支出を見直すことを検討した方がよさそうです。
アドバイス2 「今は我慢の時期」と考えておく
まず、収支を見ると3万円ほど行く先が不明となっています。奥様は「たぶん支出していると思う」とのことですが、その内容は把握したいところ。不定期の支出(冠婚葬祭、突発的な支出)に使われていることもありますが、年間で36万円にもなりますから、侮れません。一部は削れる支出の可能性もあるでしょう。まずは、そこを明確にしておきましょう。あとは、細かく家計を見て、無駄遣いをなくす努力や、スマホの契約プランを見直すといった工夫が必要となります。
ただし、先に触れたとおり、貯蓄自体はそれなりにできています。また、お子さんが幼稚園、保育園に通うころは、どうしても家計が苦しくなる時期でもあります。私はこの時期を“プチ貧乏期”と呼んでいますが、特に共働きの場合、妻の収入の減少に加え、高い保育料負担となると、一気に貯蓄ペースがダウンすることからストレスを抱える人も多いようです。ある意味仕方ないと受け入れることも大事です。子供が公立小学校に上がれば、教育費がグッと下がりますので、今は我慢の時期と考えておけばいいと思います。
アドバイス3 妻の継続的な収入が不可欠
お子さんについては、2人目、できれば3人目もほしいとのことですが、とても応援したい気持ちです。もちろん、住宅ローンや教育費など、資金的に不安もあるでしょう。しかし、個人的には経済的な理由であきらめてほしくないなと思います。あればあるなりに、なければないなりに工夫しよう、くらいに思うことも大事ではないかと思います。とはいえ、向こう見ずがいいわけでもありませんから、教育費は、どれだけかけるのか、あるいはかけられないのかを事前に検討しておくといいでしょう。児童手当を全額貯めれば200万円ほどになります。それとは別に1万円積み立てていけば18年間で216万円ですから、合計で約400万円が用意できます。この資金を私立大学の進学資金として考えることができれば、高校までをどうやりくりするかです。
高校まで公立であれば、日ごろの収入から捻出すると考えてもいいでしょう。私立を検討するのであれば、さきほどの月1万円とは別に準備しておきたいところです。子供の成長は待ったナシなので、いつまでにいくら準備しておいた方がいいかは事前にある程度計算しやすいと思います。あまりがちがちに計算する必要もありませんが、子供が奨学金を借りるにしても、いったんは親が出してあげないといけないですから、準備は検討しておきましょう。
また、住宅ローンは、完済がご夫婦とも67歳のとき。老後にズレ込むリスクがあります。今後、繰上返済することは大前提と捉えておきましょう。効果を考えれば早い時期から繰上返済するのが望ましいですが、今、貯蓄を大きく取り崩すことも難しそうなので、教育資金とは別に貯蓄が増えてきたらこまめに行いたいところです。将来的には低解約返戻金型終身保険の解約返戻金をその原資にしてもいいかもしれません。
第2子以降をどう考えるにせよ、今後、奥様には継続的にお勤めるになることをお勧めします。子育てとの両立はなかなかに難しいとは思いますが、無理のない範囲で継続することが大事です。それが結局は、いまご自身がかかえられている不安解消にもつながることなので、前向きに取り組んでいただけるといいなと思います。
それには家族の協力は不可欠です。ぜひ家族全員で思いを共有し、気持ちよく働ける環境づくりも心がけてみてください。
少し現実的なことを考えると、もしかしたら第二子は早めがいいかもしれません。間が空くと、フルタイム勤務に戻ったとなったらまたすぐに産休や育休、時短勤務となっていまいます。それが絶対的によくないわけではありませんが、ご自身の体と相談して、できるだけ負担なく継続的に働けるタイミングもあわせて考えてみてはいかがでしょうか。
老後資金についてはまだ30年も先の話。当面の優先順位は、教育費や住宅ローンの支払いでしょう。とはいえ、日々の生活は老後に通じるものです。健康で継続的に働くことはもちろん、日々のムダ遣いも累計すれば侮れません。現状の使途不明の月3万円も30年ともなれば1080万円にもなります。共働きはややもすると、どんぶり勘定になりやすいので、そうならないよう月々の金額は小さくとも侮らず、ムダ遣いをできるだけなくし、本来必要な教育費や住宅費に充てるよう心掛けてみてください。
教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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