2016年3月の、クラシックのおすすめ新譜CDをご紹介!
毎月大量に発売されるクラシックの新譜CD。その中からレコード会社が自信をもってオススメするアルバムをセレクト&オススメコメントをもらい、更にガイド大塚が聴き手としての感想をつけて紹介していきます。2016年3月のオススメはこれだ!(発売前、発売延期、売り切れなどの場合もございます。ご了承くださいませ。直接CD店に行く場合などはご注意くださいませ)
山田和樹(指揮)、 マーラー:交響曲第2番『復活』
国内外から最も注目を浴びる山田和樹が、全身全霊を傾け挑んだマーラーの「復活」が遂にCD化。昨年1月スタートした「山田和樹 マーラー・ツィクルス」の第2番をライヴ・レコーディング。輝かしい響きと情熱的な演奏で、会場は大いに沸き上がりました。山田が正指揮者を務める日本フィルと、音楽監督を務める東京混声合唱団という最高のサポートのもと、自身をマーラーの世界へ捧げ、ひたすら音楽へ勇往邁進していきます。
■ガイド大塚の感想
実に堂々たる、山田和樹の力量を十二分に伝えるアルバム。特に伸びやかな音、爽やかで穏やかな情景などは彼らしい特徴的なもので比類なく、全体としても一画一画に意識を張り巡らせ、壮大な物語を感動的に描き切る。オケも完全に棒に応えた一体感のあるもので、さらに林正子(ソプラノ)、清水 華澄(アルト)が荘厳さを加えている。
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ホープ(ヴァイオリン) 『メニューインに捧ぐ』
幼少期よりユーディ・メニューインの身近で育ったダニエル・ホープは、11歳でメニューインの招きにより共演。以降、60回を越す共演を重ね、メニューイン最後のコンサートにも出演するなど、彼の最も近くでその芸術に接することができた弟子の一人でした。2016年のメニューイン生誕100年を記念するこのアルバムは、メニューインと密接な関わりをもつ作品ばかりで編まれています。オーソドックスなクラシック作品と斬新な手法が取り入れられた現代作品が美しい綾をなし、ダニエル・ホープの磨き抜かれたヴァイオリン・トーンが聴き手を魅了します。
■ガイド大塚の感想
ホープの母はメニューインの秘書をしていたことがあるそうで、また子どもの頃に送られた手紙などが解説に掲載され、本当に親しい仲だったことが分かる。演奏は磨かれた美しい音色で尊敬と慈しみを持つように丁寧に奏でられる。選曲がバロックのヴィヴァルディから現代のライヒまで幅広いのも面白く、メニューイン自身の広さ、関心の深さに改めて気付かされる。
フラング(ヴァイオリン) ブリテン、コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
アンネ=ゾフィー・ムターの秘蔵っ子であり、確かな技巧とナチュラルな音色で高い評価を集めるノルウェーの女流ヴァイオリニスト、ヴィルデ・フラング。バックは、ルツェルン交響楽団の首席指揮者を務めるかたわら、世界中のオーケストラに客演して注目されるアメリカの若手ジェイムズ・ガフィガンが務め、「音楽の内側に秘められたこの作品の魂が、初めて明らかにされているかのよう。全てにおいて魅惑であり感情的な物語が編み出されている」と高評価を得ています。
■ガイド大塚の感想
これは……、思わず息を呑む美しさ。雪を掻き分け息吹く若芽のような透明な美しさと、か弱そうに見えて力強い彼女のヴァイオリンに浸れるアルバム。オーケストラもこれ以上を考えられないような違和感のない合わせ方で、2つの作品で目指す方向も一致し大きな音楽を生み出している。特にコルンゴルトは映画音楽でも活躍した作曲家だけに物語的で「クラシックはちょっと難しい……」という人にもすんなり受け入れられる内容・演奏になっている。逆にクラシック通にはまだ「俗っぽい曲」と思われている節があるかもしれないが、とても馬鹿にできない内容になっている。
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LSO弦楽アンサンブル シューベルト:弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』(弦楽オーケストラ版)、ショスタコーヴィチ:室内交響曲(弦楽四重奏曲第8番の編曲)
LSO弦楽アンサンブルによる第2弾アルバムは、ふたつの傑作カルテットの弦楽合奏版が取り上げられました。弦楽合奏版編曲によるシューベルトの「死と乙女」は、すぐれた指揮者であったマーラーのたしかなセンスを証明するもので、変奏曲での慟哭表現など、凄みと深みが一段と増した内容です。ショスタコーヴィチのお墨付きを得たバルシャイ編曲による弦楽四重奏曲第8番もまた、オリジナルの性格を際立たせるものです。
■ガイド大塚の感想
2017年からサイモン・ラトルが音楽監督に就任する予定で話題のロンドン交響楽団。共に作曲家が絶望の中で書いた傑作曲で、ほの暗さを増した弦楽合奏版だが、流石LSOというか、ダイナミクスの大きさ、ぼぉっとした絶望感、生を叩き付けるかのような弾き切る力強さなどをもって作品の世界観を広げ、掘り下げている。