アドバイス1 教育費は大学院まで十分用意できる
結論から言えば、このまま順調に貯めることができれば、沖縄移住について資金的には何の問題ありません。理由のひとつとして、世帯収入が高く、沖縄移住までに十分な資金が用意できるということがあります。現在の貯蓄ペースは、確定拠出年金も加えれば年間470万円ほど。長女の方が大学進学する8年後までに3760万円、貯蓄を上積みできます。投資商品の評価額が変わらないとすれば、その時点での保有する金融資産は約7000万円となるわけです。
心配されている教育費については、学資保険で500万円用意されていますので、希望どおりの国公立であれば大学から、さらに大学院まで進学したとしても、追加で必要となる資金は2人合わせて350万~400万円といったところでしょう。
ただし、文面では判断できませんでしたが、ご夫婦が沖縄移住後、自宅を貸し出すとのことですから、お子さんたちはそれぞれ1人暮しということでしょうか。だとすれば、生活費負担として、ある程度の仕送りが必要かと思います。
しかし、仕送り費用は全国平均で月7万~8万円ですから、貸し出す自宅の家賃として月15万円が期待できるのであれば、それを全額仕送り費用に充てることで、新たに貯蓄を取り崩す必要はありません。また、実際の家賃収入が想定より低かったとしても、これだけ貯めることができれば、貯蓄から十分カバーできます。
アドバイス2 60歳リタイヤも資金的には可能
理由のもうひとつが、沖縄移住後も安定して収入を得ることが期待できるからです。夫婦とも薬剤師の資格をお持ちですから、おそらく現地での求職にはさほど困らないはず。給与水準は東京や大阪よりは低くとも、生活費も下がりますから、それもさほど問題ありません。仮に、沖縄での収入が予想されている月額(夫婦合算手取りで35万円)とします。次に、現地での生活費ですが、教育費が不要になりますし、沖縄での生活を考えれば、趣味娯楽費や家族の小遣いも半減するはず。住まいは賃貸か購入かは不明ですが、毎月家賃が発生したとしても、収入の範囲内で十分まかなえると思います。
60歳で完全にリタイヤした場合ですが、公的年金が支給されるまでの5年間は、貯蓄を取り崩すことになります。生活費は保険料の支払いもなくなりますから、30万円以内に抑えられるとすれば、5年間で1800万円。先の7000万円から、教育費および仕送り費用として、多めに1000万円を差し引けば、残り6000万円ですから、それでも年金支給開始時に老後資金として、手元に4200万円は残る計算になります。
公的年金は28万円とのことですから、おそらく65歳以降の生活費としては、余ることはあっても不足することはないでしょう。さらに老後資金の試算には、退職金と年金型損害保険の受給額が含まれていません。結果的に、そこから夫婦の介護費用も十分捻出できますし、賃貸住宅ではなくマンションか一戸建て住宅を購入するだけの資金的余裕も、物件価格によっては、あると考えます。
アドバイス3 リタイヤ後は投資の割合を落としていく
現時点で気になる点としては、まず、保険の加入過多があります。思い切るならば、学資保険と年金型損害保険以外は終身タイプの死亡保険は払済保険に、医療保険は解約されていいと思います。持ち家で、まとまった貯蓄があれば、あえて貯蓄性のある保険に加入する必要はありません。医療保障も、今後かかる医療費は貯蓄でまかなえます。浮いた保険料を貯めておく方が、ずっと合理的です。
死亡保障が必要と思えば、ご夫婦それぞれ10年定期、死亡保障1000万~1500万円程度のものに加入すれば十分。それで保険料は2人合算で月額5000円前後となりますから、月6万円は確実に保険料コストが下がります。
もう1点は、資産管理です。リタイヤ後は、投資商品を徐々に現金化していくことをオススメします。もちろん、インフレ対策などのために運用も必要ですが、収入が年金だけとなった場合、あまりリスクは取りたくはありません。利益確定をしながら、少なくとも金額的には現在の半分程度には下げたいところです。
また、現在、企業型の確定拠出年金をされていますが、節税効果もありますので、移住後も個人型で継続してもいいでしょう。ともあれ、投資のハンドリングには気を配っておくことが大切です。
相談者「ゆまはるパパ」さんより寄せられた感想
この度はマネープランクリニックにて取り上げていただきありがとうございます。尊敬する深野先生にアドバイスをいただけ感激しております。今まではどの程度の貯蓄が必要かが分からず漠然とした不安に包まれておりました。この度のご意見を伺い一歩前に踏み出すための勇気を持つことができました。夫婦の夢の実現に向かって明日からサラリーマン生活に励もうと思います。この度は、本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
【関連記事をチェック】
40歳、早期リタイヤし10歳年上の妻と老後を楽しみたい
47歳公務員、貯蓄1億3000万。念願のリタイヤできるか
50歳資産2000万。3部屋の家賃収入で早期リタイア希望
40歳貯蓄4500万円。夫が50歳でリタイア希望し心配に
50歳、資産は1億3000万円。でも早期リタイアが不安