住まいの中に「公である自分」と「私である自分」の2つが存在
新しい生活スタイルを始めている人が見られるようになりました。1週間のうち3日しか会社に行かず、あとは自宅で仕事をしている人達です。毎日出社しなくても、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)等を利用して働いているのです。SNSは情報ばかりではなく人や物までも新しい関係をつくり出し、当然住まいづくりにも影響を与えていることでしょう。
影響とはつまり、自宅で過ごす時間が長くなれば住まいの中に「公である自分」と「私である自分」の2つが存在し、その切り分けをどんな空間でメリハリをつければよいのかを検討しておく必要があります。
今後どのような空間のあり方が求められるのかをみていきましょう。
働き方の変化をみてみる
空間のあり方を考える前に近年の働き方の変化をみてみましょう。平成26年度「テレワーク人口実態調査」でもわかるように在宅型テレワーカーの人口はある一定の割合の数があることが分かります。特に自営型在宅型テレワーカーは70万人~100万人くらいの変化で続いていくでしょう。今後自宅にいる時間が長くなれば、当然自分の居場所をどこに設けるのか、どうしたら充実させられるかを考えなければなりません。
自宅の中に自分の小さなオフィスをつくる、あるいは書斎をつくるなどアイデアはありますが、敷地が狭い、予算の問題などなかなか思い通りにはいかないかも知れません。そこで考えられるのが小さなスペースを上手く利用したり兼用スペースをつくることです。
1坪(1.8×1.8)の書斎をつくる
書斎というとやや大げさになるので「俺のコーナー」ということで良いのです。コーナーに必要なのは机と椅子とカラーボックスです。コーナーはあくまで視覚的には他のスペースとひと続きになるようにし、ブラインドやよしずなどで出入口をつくります。椅子だけは少し高価で座り心地のよいこだわりの専用椅子にしてください。自分の居場所というものを意識させてくれるからです。
1坪の書斎(コーナー)を設け自分の居場所をつくる。
家事室スペースの充実
近年は共働き世帯も多くなっています。奥様が外で働いている時は家事室スペースが空きます。家事室をこれまでの家事室とは違った用途で、一言でいえば多目的に使えるコーナーです。家事動線はスムーズにし、さらに誰もが利用しやすい位置です。つまり住まいのへそにあたる部分に家事室スペースを設けパソコンを置き、自分の居場所をつくるアイデアです。中央奥の家事コーナーを中心に、右側にキッチン、手前がダイニングと動きやすい三角形の家事動線になっている。
非日常を感じさせる工夫
日本人はもともとハレの日(行事などを行う非日常の日)には調度品をそろえ、床ノ間に掛軸や生花を飾ってきました。生活に潤いや楽しみを与え、精神性をも感じさせる非日常性を住まいの中で演出することは、日々の生活をいきいきとしたものにしてくれます。採光の入れ方、素材の使い方、照明、色使いなどちょっとした工夫で非日常を感じさせる工夫をしてみて下さい。ちょっとした変化は在宅している時間が長い時にはささやかな潤いを与えてくれるものです。廊下などの壁に開口部を設け、南側の光を楽しむ工夫
ソーホーやスペースの工夫
〇ソーホーソーホーとは自宅に小さなオフィスを設けて工事を行うスタイルです。もし床面積に余裕がなければ階段下を利用する方法もあります。
〇こだわりスペースを設ける
薪ストーブ、ホームシアター、廊下ギャラリーなど自宅での過ごし方を考えながら間取りを考えて下さい。
〇ガーデンスペース
草花を手入れすることで在宅仕事からの切替もできます。
〇ペットとの共生
自宅に居ることが多くなれば規則的な時間のつくり方が重要なポイントになります。そういう時はペットを飼うことで規則的な生活のリズムをつくることができます。さらに家族間、夫婦間のコミュニケーションも豊かにしてくれます。ペットのスペースも設計段階から考えておくことです。
以上働き方に応じた住まいづくりの具体例やアイデアを上げましたがこの他にもたくさん工夫するところはあるでしょう。
大切なことは生活のリズム、空間のメリハリといったようにダラダラとならない工夫をつくり有効な時間の使い方が出来るような空間づくりと仕掛けをすることです。