くちびるはなぜ赤い?
くちびるや皮膚は表面から表皮と真皮という組織にわかれています。表皮は皮膚の一番表面を覆い、皮膚を乾燥など外からのダメージから守る作用があります。その下には真皮があり、ここではコラーゲンやエラスチンといった組織が皮膚を支え、細い血管や神経が多数走っています。くちびるではこの真皮の血管が通常の皮膚に比べてとても多くなっています。
また、くちびるは皮膚とは表皮の構造が異なり、薄いうえ角化しません。通常、皮膚は外界に接しているので、一番表面の細胞は角化して、外的な影響から体を守るためにより適した構造になっています。角化した細胞は白く見えますが、くちびるの表皮は角化しないので、その下の血管が透けて赤く見えるのです。
くちびるは表皮が薄く透明であり、その下に豊富な血管が存在するために赤く見える
くちびるほどではありませんが、指先の皮膚もほかの部分の皮膚よりも赤く見えます。これも同じ理由で、指先には豊富な血管が存在するからです。
冷たいプールに長時間入ると、くちびるが紫になるのはなぜ?
健康な状態であれば呼吸により十分な酸素を取り入れて、くちびるは赤く見えます。プールに長時間入ったあとにくちびるが紫色になるのは、体温が低下して血管が収縮し、酸素の供給量が不十分になってしまうからです。血管の中を流れる血液の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」が酸素を運ぶのですが、ヘモグロビンの酸素化が不十分になると、血液は黒っぽい色になります。またプールに入るなどの原因がなくても、くちびるや指先が紫色に見えることがあり、医師はこれを「チアノーゼ」と呼びます。酸素をうまく体内に取り込めなくなる病気のサインとして診断に利用しています。
紫色の指先はチアノーゼと呼ばれ、血中の酸素が足りなくなっているサイン
くちびるの色の異常で考えられる病気は?
冷たいプールに入ったためにくちびるが紫になったとしても、暖まればすぐに赤色に戻るので、特に治療は必要ありません。ところが、病気によるチアノーゼでくちびるが紫色になっている場合には酸素がうまく取り込めていない証拠なので、治療が必要な場合があります。血液に酸素がうまく取り込めない理由には、肺が原因の場合、心臓が原因の場合があります。肺の原因には肺の血管がつまる肺塞栓、喫煙などが原因で呼吸機能が低下する慢性閉塞性肺疾患(COPD)、重度の喘息や肺炎が挙げられますし、心臓の原因には生まれつきの心臓の構造異常(先天性心疾患)や心不全が挙げられます。
チアノーゼは子どもにも大人にも起こるので、原因が思い当たらないのにくちびるの色が紫色であることに気づいた場合は、注意してください。