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アメリカではどんな美白の商品が売られているか?

国を問わず、健康な肌を保つための化粧品やぬり薬が多く店頭に並んでいます。白人の場合はもともと色が白いこともあり、美白(whitening)を謳った製品は目立たず、若返り(rejuvenization, anti-aging)やシワに対する効果(anti-wrinkle)を売り出したものが目立ちます。どんな製品がアメリカでは使われているのか、見ていきましょう。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

ハイドロキノン

「ハイドロキノン」はメラニンを作るのを抑えることによって、美白の効果を発揮します。日本では美容クリニックで処方されることの多い美白の成分ですが、アメリカでもよく使われているのでしょうか?

このハイドロキノン、2−3%という低い濃度の製品であればWalgreensといった日本で言うマツキヨのような一般の薬局、もしくはAmazon.comで$10前後という非常に安い価格で手に入ります。ただし、主要なメーカーからの製品にはハイドロキノンは使われておらず、ハイドロキノンを含んだ商品は店頭でも目立たない位置にいくつか並んでいるくらいです。売れ行きもそれほどないのではないか、と予想されます。

ハイドロキノン

ハイドロキノン2%が入った製品は、10ドル程度と格安でアメリカの薬局では手に入る


これにはいくつか理由が考えられますが、白人が中心のアメリカでは、日光による皮膚のエイジング全般に効果のある「レチノール」や「トレチノイン」の方に人気があり、美白にしか効果のないハイドロキノンは魅力的に映らないのではないかというのが私の意見です。

白人が最も気をつけているのは「皮膚ガン」とその原因になる「日光によるダメージ」です。ハイドロキノンはメラニンの生成を抑えてしまうので、日焼けには逆に弱くなってしまう可能性があります。また、ハイドロキノンはメラノサイトというメラニンを作る細胞に対して弱いものの毒性があり、リスクは低いものの塗った部分が白く抜けてしまう、逆に色素が濃くなってしまう、といった副作用があると報告されています。

そのため、皮膚科医の処方なしに薬局でハイドロキノンの入った美白のぬり薬を買うことには抵抗があるのかもしれません。さらに、アメリカに住んでいるアジア人は日本に住む日本人ほど美白しようという意識がありません。カリフォルニアやニューヨークの街を歩けば、日本人がいかに肌を白く保つことに気を使っているか、ということはすぐにわかります。

日本人、美白

日本人は美白への意識が高い


ただし、色素の異常が起こるというハイドロキノンの副作用は稀です。私も日本では処方していましたが、ハイドロキノンでカブれてしまった、という以外の副作用の経験はありません。

アメリカの美容皮膚科診療でもよく使われていて、Tri-Lumaというハイドロキノン4%にもうひとつの美白の成分であるトレチノイン0.05%と、炎症を抑えるステロイドの入ったぬり薬があります。肝斑など幅広い種類のシミに効果があります。日本ではこのTri-Lumaは手に入りませんので、皮膚科ではハイドロキノンとトレチノインを別々に処方しています。

トレチノイン

トレチノインはビタミンAに似た成分で、日光による皮膚へのダメージを改善し、シワ・シミのどちらにも効果があります。アメリカではニキビに対する処方薬でもあり、Retin-Aという名前で知られています。日本でも保険適応ではないものの、皮膚科では美白やアンチエイジングの目的でよく処方されています。

ハイドロキノンと作用が異なるため、その相乗効果を期待して同時に処方されることが日米ともに多く、前述のTri-Lumaという両者を最初から混合したぬり薬もアメリカでは一般的です。

ただし、使い初めに肌が赤くなったりカサカサする 副作用が出やすいこと、妊娠中には使えないこと、などから医師の処方なしでは日米ともに使うことはできません。化粧品として手軽には手に入りませんが、古くからある薬でその効果は確立されているので、シミやシワの改善目的にはオススメできる製品です。

レチノール

レチノールは名前からもわかるようにトレチノインに類似した成分で、トレチノインの作用を弱くしたものと思っていただければわかりやすいです。レチノールはトレチノインに皮膚の表面で変換され、吸収されると言われています。シミやシワに対してトレチノインに似たような効果があるとされていますが、レチノイドほどのはっきりとした効果は報告されていません。

レチノール

レチノール(retinol)はシワにもシミにも効くので、wrinkle repair(シワ改善)、tone repair(シミ改善)と同じレチノールが入った製品でも別々の商品として売られている


レチノールのいいところは、医師の処方が必要なく、またレチノイドのように皮膚が荒れることが少ない、という点です。日米ともに多くのブランドの製品に含まれているレチノールですが、特にアメリカでは有名ブランドの多くがレチノールを改良した成分をそれぞれ独自に開発し、大々的にプロモーションして販売しています。

皮膚のメラニンが少なく日光の影響を受けやすい白人では特に、30代から40代になると細かいシワが目立つようになってきます。レチノールはこのシワに効果がありますので、多くの製品がanti-wrinkle, anti-agingとパッケージに大きく書いて宣伝しています。シワに対する治療というとその他にはレーザーが有名ですが、こちらはクリニックを受診して高い施術料を払わなければいけないので(アメリカでは美容手技の施術料は高く、日本の倍はします)、気軽にアンチエイジングを実践できるレチノールは人気の商品になっています。

飲む日焼け止め、ヘリオケア(Heliocare)

ヘリオケア

飲む日焼け止め、ヘリオケアのパッケージ

アメリカではヘリオケアという飲む日焼け止めがAmazon.comなどで一般的に手に入ります。価格も$20程度で60カプセルとお手頃です。私も試しに使ってみましたが、少し大きめのオレンジのカプセルです。日本でもAmazon.co.jpを調べると平行輸入品が見つかりますし、美容クリニックで処方していることもあります。Polypodium leucotomosという中米にあるシダ植物から抽出される成分が使われています。天然の成分でローカルには古くから使われてきたものですし、研究で安全性は問題ないとされています。では効果はどの程度なのでしょうか?

ヘリオケアカプセル

ヘリオケアのカプセル

いくつかの研究で効果は実証されてきていますが、SPFでいうと一桁程度と言われています。塗る日焼け止めではSPF 30以上が推奨されていますので、ヘリオケアを飲んでいれば日焼け止めを塗らなくていい、というわけではなく、あくまで補助的に使う、という位置づけです。また、陽に当たると赤い発疹が出てしまう多形日光疹(polymorphic light eruption)という病気がありますが、ヘリオケアはこちらにも効果があるとされています。


今回はいくつかの美白、アンチエイジングに使われている製品の日米での違いを紹介してきました。そのほかにも日本では飲み薬、ぬり薬としてよく使われるトラネキサム酸はアメリカではあまり使われない、日本で開発されたもののあまり一般的でないコウジ酸がアメリカでは美白成分として使用されている、といった違いがあります。

これらの違いはいずれも人種の差と、より科学的な根拠を重要視するというアメリカの国民性から生じているのではないかと思っています。


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