海外か距離延長か、可能性の広がるモーリス
サラブレッドにはそれぞれ得意なレースの距離があり、距離ごとにその時代の王者が存在するものです。先ほどのドゥラメンテが得意とするのは、2000m~2400mあたりの中距離戦線。一方、「マイル」と呼ばれる短距離の1600m戦線でも、今年大きな期待を集める馬がいます。「モーリス」です。“今年”大きな期待を集める……と言いましたが、モーリスは昨年すでに大仕事をやってのけました。
2015年、4歳だったモーリスは、年明けの時点でまだ下級クラスの1頭にすぎなかったのです。それが、昨年1月の勝利を皮切りに、年末までなんと破竹の6連勝。しかも、後半はマイルのG1を3連勝してしまったのです。さらにさらに、最後の一戦はG1香港マイル(芝1600m/シャティン競馬場)という、海外のビッグレースでした。
2015安田記念のレース映像(モーリスは赤帽の6番)
2015マイルチャンピオンシップのレース映像(モーリスはピンク帽の16番)
言うならば、ついこの前まで友達だった男が、1年でテイラー・スウィフトと付き合ってしまったような、そんな大出世を見せたのがモーリス。ただ、この馬の真の戦いは今年から始まると見ています。というか、それを期待しています。
「真の戦い」として考えられるのは2つ。1つ目は「本格的な海外進出」です。昨年末に香港のG1を勝って世界的な知名度を持ったのですから、もしマイル路線で戦うなら、どんどん世界の強豪とぶつかってほしい。実際、この春にはドバイで行われる国際G1レースに向かう方針です。ヨーロッパにも行って欲しいですね。
そしてもうひとつ、モーリスに期待したいのは「異分野への挑戦」。つまり“距離延長”です。昨年は1600mのG1を勝ちましたが、血統的に見ても、あるいはこの馬のレース内容を見ても、もっと長い距離で戦える可能性は十分。となれば、2000mあたりのG1や、それ以上の距離に挑戦して、ボクシングでいう2階級制覇・3階級制覇を実現してほしいのです。
なお、モーリスの今年初戦はG2中山記念(芝1800m/中山競馬場)になる可能性も……。その場合は、あのドゥラメンテといきなり対決?? 少なからずその可能性もあります。いずれにせよ、モーリスのさらなる飛躍に注目すべき1年です。
2戦目でのG1制覇を決めた、新星リオンディーズ
3歳馬たちによる三冠レース。ドゥラメンテがその舞台でスターになったように、この戦いは競馬ファンを熱狂させてくれます。もちろん、2016年に3歳となる2013年生まれのサラブレッドたちも、この舞台で今年素晴らしいドラマを生んでくれることでしょう。そんな2016年の三冠レースにおいて、見てもらいたい馬がいます。それが「リオンディーズ」です。
先述したように、サラブレッドは2歳からデビューするため、今年3歳の馬たちはまだ数戦しか戦っていません。リオンディーズに関して言えば、たった2戦しかしていないのです。
ただ、その2戦がすごい。昨年11月のデビュー戦を圧勝すると、約1ヶ月後、いきなり2歳馬のチャンピオンを決めるG1朝日杯フューチュリティS(芝1600m/阪神競馬場)の舞台へ。そして、わずか1戦のキャリアで優勝してしまったのです。
2015朝日杯フューチュリティSのレース映像(リオンディーズはピンク帽の15番)
新人王決定戦として行われてきた朝日杯ですが、キャリア1戦の馬が勝ったのは史上初。何より、ほぼ最後方の位置から直線でゴボウ抜きしたレースぶり。これをスターの誕生と言わずして、なんと言えば良いでしょうか。間違いなく、今年大注目の1頭です。
ただし、サラブレッドの2歳暮れは、まだまだ子どもの時期。そのまま強くなるかどうかはこれからにかかっていると言えます。テレビに出てきたスーパー小学生の成長を見るような気持ちで、2016年のリオンディーズを見てみるのが良いでしょう。
ここで挙げた3頭以外にも、もちろん注目すべき馬たちはたくさんいます。あくまで紹介した馬たちは「きっかけ」。ピックアップした馬たちを入り口に、ぜひとも1年を通じて競馬を楽しんでいただきたいです。
(リンク)
2016レーシングカレンダー|JRAホームページ
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