親の家をどうするか?頭を悩ませる子どもたちが増えています
でも、親との話し合いがないままに、死後にどうするかを決めなければならないときは、残された子同士が考えを一つにまとめることはとても大切です。ひとりでも異を唱えるものがいれば、事は前には決して進みません。
相続トラブルが一番多いのは親の財産が「一戸建てだけ」
親の財産が、一戸建てだけで預金はほとんどなし。それを複数の兄弟・姉妹で相続する場合が一番トラブルが多い、ということを税理士さんから聞いたことがあります。相続の考え方でひと悶着が生じるのです。例えば、生前、一人暮らしができなくなった親としばらく同居していた長男と嫁に行った長女が、親の家の相続を巡り争いに。争点は親と同居したのだから、相続分にそれを反映したい。それならと高卒の長女が大学院卒の長男に、かけた学費の差額分を上乗せして、等々互いの言い分を譲らず対立するのです。
また、親の家をたたんだ後の活用方法について、売却してその代金を分割したい。手離すのはいやだから賃貸にしたい、等々考え方の違いでいつまでたっても平行線、相続申告期限の10か月以内では決着がつかない、ということもあります。現金のように簡単に分割できないことも大きな原因です。
そして、決着がつかない親の家は、近所迷惑にならないように草むしり、樹木の選定、窓の開閉、室内掃除などの保全策にお金と労力がかかりますが、親の家に近いところに住む者と遠隔地で暮らす者間で、負担の押し付け合いが生じます。
推進役をたて知識・情報を共有しあう
こうならないためには、良識を働かせて乗り切るしかありません。1.親の家についての共通認識を持つ
築何年でどの程度の傷み具合か、売りやすさ、貸しやすさ、価格・家賃相場などの情報を共有することが大切です。それぞれが親の家にたいして異なる見解を持っていると、立ち位置が違うため、意見の一致をみることは困難です。例えば、ある者はすぐに高く売れると楽観的、ある者はこの家は売るのも貸すのも難しいと悲観的であれば、並行線をたどります。
2.親の家をどうたたみ、どう有効活用するのかについて、互いに理解納得のいくまで話し合う
そのためには、有効活用の選択肢がいくつあるのか、「親の家を放置空き家にしないための選択肢」で得られた情報をもとに親の家に向くのはどの方法か、など話し合いの基礎となる情報や知識を共有しておく必要があります。事前に親の意向が表明されている場合は、意見がまとまりやすいのですが。
3.兄弟・姉妹で役割分担、金銭の負担割合、相続額(家の売却代金、家賃)分割割合を決める
難しいのだけれど、中立、公正、平等を旨としないと、欲に絡め取られ、骨肉の争いに発展することも。そうなってしまうと何の策も講じられず、時間ばかりが過ぎていきます。
4.兄弟・姉妹の中心になって話し合いや手配、手続きをする推進役を決める
上記1~3の話し合いを円滑に進めていくには、いずれも重たい問題なので、推進役がいないと、兄弟・姉妹間で押し付け合いが始まったり、無関心な者が出たり、口だけだす者がでたり、でうまく事が運ばないからです。親がなくなって1年後に一戸建てを売却した沖縄県のOさん(51歳)は、弟、妹の3人で話し合い、仏壇を見る弟にすべてを任せ、口出しはいっさいしなかったとのことです。
推進役は、要所、要所で他の兄弟に報連相を行うことが重要です。これを怠ると兄弟・姉妹間で疑心暗鬼が始まります。面倒でもメールなどできちんと意思疎通を図ることで、推進役への信頼が確立されます。お金のからむ問題なので、良識ある行動で互いに信頼しあってこそ、納得のいく解決策が導き出せるものではないでしょうか。
親の家が兄弟・姉妹の仲をより緊密にしてくれる
前述の1~4を実践することは実は兄弟、姉妹のなかを見直すことにつながります。恐らく、推進役は他の兄弟、姉妹より多くの労力を使います。でも、推進役としての当事者意識が、やれる者がやるしかない、と不平・不満を封じ込めるでしょう。そのことを感じた他の兄弟、姉妹たちは、推進役に感謝と信頼の念を持つはずです。社会人となり、それぞれが家庭を持てば、おのずと兄弟、姉妹のなかは遠くなりがちです。久々に親の家を通して緊密に交流を図ることで、確実にお互いの距離は縮まるのではないでしょうか。