家をどうしてほしいのか?生前に聞いておくのもよいですね
話し合うことで家をどうしたいのか、親の意向が確認できる
東京都板橋区のAさん(51歳)は生前に親と話し合ったという少数派です。Aさんは一人っ子、親の家は佐賀県にある7LDK、築35年の一戸建てです。来春よりお母様が有料老人ホームへ入所することになったのを機に、母と娘で「家をどうする?」と話し合ったそうです。一人っ子のAさんは、将来実家にもどる予定はありません。放置しておけば、どんどん古くなり、近所迷惑になることが懸念されます。そこで二人が出した結論は、思い切って売却しようというものでした。今年の秋ころから売り出すことにし、帰省のたびに、家の片付けをなさっているとのことです。
一方、事前に話し合うことなく夫の親が亡くなってしまったという愛媛県のTさん(57歳)の事例では、空き家のまま1年が過ぎてしまいました。親の意向を確かめる機会を逸し、親の家財道具にも思い入れがあり、なかなか処分できず今日にいたっている、のだそうです。
こうした事例からも分かるように、親の意向が分かっている、いないでは、親の家に戻らないと決めている子の対応はずいぶんと違ってくるものです。親の家を空き家にしない、空き家にしてしまっても短期間で終わらせるには、親が元気なうちに「どうするか?」について率直に話し合う機会を是非持ちたいものです。
でも、それがなかなかできないのは、何故でしょうか?
話合いの好機は親の終活が始まったとき
それは、死を隠ぺいしがちな現代の一つの傾向かもしれません。親は自分の死を、子も親の死について語ることをはばかります。生をできるだけ長くまっとうすることには積極的ですが、生の延長である死と死後については、忌むべきものとして遠ざけてしまいがちです。そのために、介護、看取り、葬儀、墓といった問題は言うまでもなく、さらには相続、遺言、登記といった手続きについても親の生前に、きちんとしておくことについては消極的です。
その結果、親の死後に親の家問題で苦しんだ方々は、生前に親の意向を確かめておけば、親の思いを推し量りかねて、残された家についてつらい逡巡から逃れられたのに、と反省されています。と同時に、親の家でした苦労と同じことを、自分の子供たちには決してさせてはならない、という教訓を得ておられるのです。
また、親との語らいを通して、自分の知らない親の人生を垣間見ることができます。親がどのような思いで生きてきたのか、家族に伝えたいことは何なのか、が浮き彫りにされることで「親子の関係がより深まる」という心の財産づくりができるのです。
では、どのタイミングで親子の話合いは持つのがいいのでしょう?
親が終活を始めたら「どうする?」を話し合う
親がまだまだ元気で、趣味や旅行に勢力的な活動をしているのであれば、時期尚早かもしれません。話を持ち出すと「私に早く死んで欲しいと思っているの?」とあらぬ誤解を招くことになってしまいます。波風たてず、素直な気持ちで話し合いができる心持になるのは、親が終活を考えはじめたときではないでしょうか。生前のうちに自身のための葬儀やお墓の準備を始めたり、残された者が自身の財産の相続を円滑に進められるための計画を立てておくことなどの言動、行動が始まってきたときが、話し合いの時期ではないでしょうか。
親の家をいたずらに空き家にしないために、生前に親の意向を確認するタイミングをどうぞ逃しませんように。