「やめたいレベル」を見極める
子どもの正直な気持ちを聞き出すところから始めましょう
そうしたサインに気づいた時には、子どもの「やめたいレベル」がどの段階なのかについても、見極めましょう。
レベル1) めんどくさい
このレベルであれば、急いでやめる決断はしない方がいいかもしれません。何かをマスターするというのは、いくつもの「壁」にぶつかり、それを乗り越えていくことかもしれません。ずっと右肩上がりに上達していくわけではなく、必ず「スランプ」はありますよね。友だちにどうやっても勝てない、頑張ってもレギュラーになれない。思っていたスピードで上手になれない。自分には才能がないのではないか、向いていないのではないか。投げやりな気分になった時は、練習が「めんどくさくなる」ものです。
めんどくさいという「消極的な拒否」の場合は、なぜそれを習いたいと思ったのかという「初心」に返ることを援助したり、何回かお休みをして、自分の気持ちを見つめ直すという選択をしてもいいかもしれませんね。
「行ってみれば、楽しかった」といったことがよく聞かれる時は、「もうちょっと頑張ってみたら?」と、継続の後押しをしていいでしょう。子ども自身も積極的にやめたいと思っているわけではないというのが、この段階です。
レベル2) いやだ
黄色信号です。この段階になると「積極的拒否」ですから、赤信号までの距離がどれくらいあるのかの見極めがとても大事になってきます。子どもの様子を慎重に観察すると同時に、先生に相談するタイミングをはかりましょう。前ページに書いた「問題点をはっきりさせる」ことができやすい時期でもあるでしょう。習い事の話をすることをいやがることも多いでしょうが、子どもの「いやだ」という気持ちを受け止めて前向きに考える姿勢を見せれば、気持ちを話してくれるでしょう。
うまくなりたいという気持ちと現実とのギャップに苦しんで思いつめている場合は、好きな気持ちの裏返しですから、クールダウンする必要があるのかもしれません。
「いやだ」と言えるのは、子どもに力がある証拠です。この段階でじっくり話を聞かず、「どれだけ応援してきたと思ってるんだ!」と頭ごなしに怒ったり、「お前は何をやらせてもダメだな」など、子どもの人格を否定するようなことを言ってしまうと、子どもは自分の気持ちを出せなくなり、レベル3に進んでしまいます。
レベル3) つらい
赤信号です。習い事に行くフリをしてサボったり、習い事の時間が近づくと号泣したり体調が悪くなったりといったことが続けば、ただちに休会を考えた方がいいでしょう。壊れる寸前かもしれません。「つらい」は「いやだ」と表現されることも多いので、「行くのがいやなの? それとも、行くのがつらいの?」と聞いてみましょう。
「つらい」場合、つらさの内容を具体的に表現できないこともしばしばあります。ですから、あまり根掘り葉掘り聞かず、「つらいんだね。じゃあ、しばらく休もうか」と、気持ちを受け止めて休会を提案しましょう。追いつめられると「このまま頑張り続けるか、やめるか、どちらかしかない」と極端に考えがちで、「しばらく休む」という選択肢は自分から出てこないことが多いからです。
また、この段階が進むと、鬱っぽくなって自尊心が低下し、拒否するエネルギーさえも残っておらず、しばしば、レベル1の「めんどくさい」と混同されやすいので注意が必要です。
子どもの習い事をテーマに書きましたが、この3つの段階は、登校渋りも、大人の出社拒否にも、共通するところがあります。自分や家族の元気がないとき、「めんどくさい、いやだ、つらい」の、どの段階にいるのかに注目すると、対応を誤らなくて済むでしょう。
なお、うつの最初のサインは睡眠と食欲に現れます。なかなか寝つけなくなったり、夜中何度も目が覚めたり、昼夜逆転したり、急に体重が落ちるようなことがあれば、心療内科の思春期外来などの受診も視野に入れましょう。