ティッシュペーパーのパッケージは、「お洒落なインテリア」を一瞬にして普通の部屋に変えてしまうパワーがある気がしませんか? 箱の柄が気に入らなかったりロゴを隠したいときにはティッシュケースで覆ったり、来客時には収納して隠してしまう人もいる模様……。
そもそもティッシュペーパーはどう生まれたのでしょう。そしてパッケージデザインはこんなに種類が多いのでしょう。
そこでインテリア空間で意外と存在感を発揮するティッシュペーパーと「どう付き合っていくか?」ということを考えます。
アメリカ発祥のティッシュといえば「クリネックス」
ティッシュのルーツは第一次世界大戦中のアメリカ。戦地用の医療用コットン(脱脂綿)が不足したために、代わりにウッドファイバー(=木質繊維、パルプなど紙の原料)を丸めて使用していました。これが戦後、大量に余ったため、この技術を転用して「使い捨てができるタオル」としてキンバリー・クラーク社が1924年に発売したものが現在のティッシュの原型。当初は女性の化粧落としとしても使われていました。
日本では日常品のティッシュペーパー、実はミリタリー由来なのです。
最初のティッシュペーパーのブランド名は「Kleenex Tissue(クリネックス ティシュー)」。
これはアメリカでは実質的に固有名詞化していて、日本で言う「ティッシュ」は今でも海外では「Kleenex」と呼ぶ国が多いそう。
この「Kleenex」のロゴデザインは世界的グラフィックデザイナー、ソール・バス氏によるものです。
バス氏は、ユナイテッド航空(1973年)、 ワーナー・コミュニケーションズ(1972年)、日本企業でもミノルタ(1978年)など、おなじみのロゴを数多く手掛けています。そして『サイコ』(1960年)など、映画のタイトルデザイナーとしても知られています。
おなじみのブランドも、それぞれ特徴があります
日本のティッシュ製造会社は、現在「日本製紙クレシア」
「大王製紙」
「王子ネピア」
のシェアが大きいようです。
以下、それぞれのメーカーが展開するブランドを紹介します。
日本製紙クレシア系ブランド
ティッシュペーパーが日本に入ってきたのは、アメリカで発売されてから約40年後の1964年。この年の2月に「山陽スコット」(当時)が「スコッティ フェイシャルティシュー」を発売しました。ティッシュではなく、“ティシュー”。普通は「ティッシュ」と呼びますが多くの商品名表記はティシューが多いよう。これは今でもよく見かける「scottie」の欧文ロゴで有名なブランドですね。
[スコッティ]
スコッティの約4カ月後に、十條キンバリー(当時)が、本家アメリカの「Kleenex」ロゴを冠した「クリネックス ティシュー」の販売を開始します。
[クリネックス]
1993年に、山陽スコット(後に「クレシア」に社名変更)と、十條キンバリーは合併して「日本製紙クレシア」になりました。
そのため現在、クリネックスとスコッティは同じ日本製紙クレシアのブランド名です。
日本製紙クレシアの、スコッティとクリネックスは専用のマグネット「くっつくん」でスチール製の冷蔵庫の扉に張り付けることもできます。我が家の白い冷蔵庫では生活感が漂いますが、最近のデザイン性の高い黒家電に似合いそう。
大王製紙系ブランド
ドラッグストアなどでは「エリエール」という商品名のティッシュペーパーもよく見かけます。これはスコッティ、クリネックスの発売から約15年後の1979年に「大王製紙」が発売を開始した製品。すぐに人気商品となりました。現在、CMで松本潤さんが紹介しているものはエリエールです。[エリエール]
[エリエール キュート]
結構リアルな花の絵がプリントされている、その名も「キュート」。よく見ると白いレースもありちょっぴりメルヘンチュックです。いい意味で昭和感、というか実家に帰った感、があって「これぞ日本のティッシュ」という雰囲気です。
王子ネピア系ブランド
もう1社、主要メーカーとしてネピアで知られる王子製紙グループの「王子ネピア」があります。数年前に浅田真央さんが出演していた「ネ・ピ・ア♪」のCMでおなじみのネピアの発売は1971年。特にネピアの商品名「ネピネピ」の小紋柄は人気があり、「ネピネピどこ?」と指名で買う主婦の方々も多いとドラッグストアの店員さんが言ってました。[ネピネピ]
[ホクシー]
[鼻セレブ]
中国の方々のいわゆる「爆買い」でも大人気。都市伝説的に「鼻セレブは舐めると甘い」という話をよく聞いていたので舐めてみました。結果、たしかに甘い! 保湿成分が甘く感じるらしい。人体には無害ですが、お菓子じゃないので良い子はマネしないでくださいね。
実際に使うとティッシュペーパーの概念が変わるほど肌(鼻?)触りが違います。
プレーンな白のパッケージも人気ですが、ウサギ、アザラシ、ミニブタなどの動物写真のパッケージをコンプリートする多くのファンがいます。
花粉症の方向けと思われる商品では、他に、エリエールの「贅沢保湿」、クリネックスの「至高」などといった商品もあります。これは使ってみないと自分の肌に合うかどうかは分からないのですが、すべて実勢価格1箱500円前後という高級品。
ティッシュの存在感を消すためにボックスを使う?
クリネックスはアメリカンなインテリアに似合いそうですし、シャープなデザインのスコッティも存在を主張しないデザイン。エリエールはいい意味で和風でかっこいいし、ネピネピやホクシーの連続模様は、カラフルな内装に溶け込みそうです。でもネックとしては、販売上、5箱パックなどの色柄違いで流通しているので、お気に入りの色や模様があっても、単品では入手しづらいし、あってもコスパが悪い。
松潤さんが宣伝しても、ソール・バス氏デザインのロゴがあっても、紙パッケージの蓋を開けたとたん、薄い紙が「ホニョロ~」と出てくると、なぜか所帯じみた感じになるような気もします。それを回避するためにボックスに入れたり、ダイニングテーブルの裏に取り付けて隠す人もいるそう。パッケージ自体のデザインもいいし、使い勝手もどんどん進化して、薄い樹脂の隙間からポップアップして取り出しやすくなっているのですが……。
さっそく、100均やニトリ、無印良品などに行ってみました。
ダイソー、キャンドゥ、セリアなどにはティッシュシースに転用して使えそうな箱はたくさんありますが、商品としてのティッシュボックスは見当たりません。流行りの鼻セレブ風の大きなティッシュ本体はありました。
比較的安いティッシュケースを探してみました
300円ショップ、3COINS(スリーコインズ)をのぞいてみると編み込みのティッシュボックスがありました。
無印良品の「アクリルティシューボックス」(税込み800円:約幅26×奥行13×高さ7センチ。これは落し蓋式になっていて、紙の量が減ってくると、ちょっと取り出しづらい感じもあります。サイズが小さいティッシュを入れると、穴の幅が広いので、スポッと抜けてしまいました。
あえて内部の紙を見せるタイプの透明樹脂製ボックスは、業務用のものも各種流通しています。透明なので減りを確認して補充しやすいという理由もありそうです。
ただし落し蓋方式のものは洗面などの水まわりに使うときには水が入りやすいので置き場所に注意した方がいいでしょう。
ニトリは、ティッシュケースのラインナップが豊富。天然木製の箱や、ハンガータイプなどいろいろなタイプが充実しています。ネット通販もあるのでチェックしてみてください。
イケアには私が立川店で探した限りではティッシュケースはありませんでした。欧米にはティッシュケースそのものが存在しないか、あったとしてもレアなものなのかもしれません。
これは都内の公共施設で見かけた成型合板製のティッシュケース。大きめのティッシュも箱ごとスッポリ入るサイズ。でも中は空っぽでした。木製で雰囲気はいいのですが外から見えにくいので補充しづらいのかもしれません。
ティッシュペーパーの大きさと枚数、組数
一般的なティッシュペーパーのサイズは約20センチ×20センチと言われています。でも正方形ではありません。先に紹介したクリネックスは、縦18.8センチ横22.8センチ。ネピアのネピネピは縦19.7センチ横21.7センチ。鼻セレブは縦20センチ横22.5センチ、とバラバラ。そして、ほとんどのティッシュはダブル=2枚組なので、実質的に表記してある枚数の半分をどんどん消費していくことになります。最近では3枚組の商品も発売されてるよう。1枚仕様もありますが入手困難。
ちなみにポケットティッシュも約20×20センチ。クリネックスのポケットティッシュは縦20.5横21.5センチ、街でもらった広告付きポケットティッシュは実測で約縦19横20センチでした。ポケットティッシュは小さいと思い込んでましたが箱のものとほぼ同じサイズです。
国内で流通しているティッシュは、消費者庁が定める「家庭用品品質表示法による表示」という、結構くどい表現でmm単位の寸法と枚数(組数)が箱の裏面に書かれています。
ティッシュ裏面の「家庭用品品質表示法による表示」。上が「ネピア ネピネピ」下が「クリネックス」。他の製品も微妙に寸法が違います。普段、気にしませんでしたが、ティッシュの裏面にはいろんなプレゼントキャンペーン情報や、箱のたたみ方のイラストなど、すごい量の文字やイラスト情報でぎっしり埋まっています。
和菓子が入っていた白い箱の上面に穴をあけて作ったティッシュケース。グラフィックがないだけで、なんとなくモダンな感じ? 実験した結果、空き箱にあける穴は15センチ×3センチくらいにして両端をテキトーに半円形にカットするといい感じでした。小さな段ボールなど、いろんな箱で試せそうです。
近年は紙箱でなく簡素な樹脂で覆ったプライベートブランドも登場。上はマルエツ系列の「牛乳リサイクルティッシュ」。牛乳パック類を60%リサイクル使用。下は西友系列の「きほんのき ティッシュペーパー」。中国製です。文字やブランド名がないところがシンプルでいい。両方とも5個パックで税込み200円程度。紙箱と違い、かさばらないので「大きなポケットティッシュ感覚」で私は花粉症の季節にはカバンに入れて携帯します。
トイレットペーパーやペーパーナプキンを使うことも考えてみましょう
数十年前までは新聞紙などの古紙と、ちり紙やトイレットペーパーと「物々交換」する「ちり紙交換」という業者さんがいました。いま考えると素晴らしいシステム。いま古紙回収は行政の仕事になっていますね。トイレットペーパー(オシャレな言い方では「トイレット・ティシュー」)も、ティッシュ代わりになります。数年前、大久保エリアのコリアンタウンにある焼肉屋さんに行ったとき、ペーパーナプキンの代わりにトイレットペーパーが食卓にドンと置かれていて潔さすら感じました。
セレブとか至高とか贅沢保湿とか、しゃらくせー! という向きには、こんな業務用トイレットペーパーの芯を抜いて使うことをオススメ。もちろん、ダブルではなくシングルのゴワゴワしたもの。当然、切り取り用ミシン目もなし! かつて、ちり紙交換ではこんなトイレットペーパーがもらえました。「ちり紙交換」といえばスネークマンショーの名コントを思い出す人もいるのでは?
アメリカで生まれたティッシュ(ティシュー)ペーパーですが、いまでは生産、使用量ともに日本が本家の数倍あり、その消費量も世界一らしい。アメリカではティッシュは高価であまり流通しておらず、ペーパーナプキンをタオルや布巾の替わりに使う人が多いそう。
ニューヨーク在住の友人に聞いたところ「ペーパーナプキンをDELI(デリ:お惣菜も売っている軽食屋)で、『ちょうだい!』と言ってたくさんもらってくるよ」とのこと。また普通、家庭でクリネックス、ティシューのボックスを見たことがない、とも言ってました。
大きさは25×25センチで「6折」と呼ばれる業務用ペーパーナプキンを空き缶に放り込んでみました。実際、脂っぽい料理やポテトチップスなどを食べた後、口まわりを拭くときは、ティッシュより心地いいです。枚数から考えるとティッシュペーパーとは比較にならない安さ。昔の洋食屋にあったようなステンレス製のナプキン立てが欲しくなりました。
ホームパーティなどできちんとテーブルセッティングをした食卓では、ペーパーナプキンを使うのがコスパ的にも見た目にもいいかもしれません。実際、イケアにはカラフルなグラフィックパターンの安価なペーパーナプキンがたくさんあります。
鼻をかんだり、布巾、ときには雑巾がわりに超高級パルプを原料とした紙を、惜しまず使う国は日本だけでしょう。かなり安価になったとは言え、おかしな気もします。
ひと昔前より少なくなりましたが、ちょっと街にでると「ハイクオリティちり紙」が、タダでもらえる国です。市販品のポケットティッシュ(クリネックスの場合、20枚10組)に比べると枚数はやや少ないですが、すべて上質でダブル(2枚重ね)でした。贅沢というか、豊かというか……。
最後に……。実は、とても日本的な「ティッシュペーパー」
日本では、すごくつらい花粉症に悩む人々が多いですし、清潔で丈夫なティッシュに、いろいろな場面で助けられたことが私には幾度となくあります。でも、ときに「オシャレなインテリア空間の厄介者」になったりもするティシュペーパー。ちょっと不憫……。
小さなお子さんがいる家庭では、「ちょっとティッシュ、とってー、ティッシュー」という状況はよくあること。ティッシュは、ちょっとこぼしたものなどをサッと拭ける、便利グッズであることには間違いありません。
そして、「そういえば『台拭き』って、あんまり見なくなったなー」と思うこともあったりしますし、最近の外国映画でも、ティッシュではなくハンカチで鼻をかむシーンをみたりします。
もとは「アメリカ生まれの使い捨ての高級化粧紙」。それを製紙産業の努力でさらに質を上げ、「ハイクオリティなちり紙」に昇華させ、パック売りなどで安価に流通させることにも成功させました。
ティッシュペーパーは独自に進化し、いまやジャパニーズ・オリジナル。それまで布巾やちり紙を使っていた日本人のライフスタイルまで変化させたともいえるでしょう。
今回はティッシュを題材にしましたが、日常、当たり前に使っている、いろいろなモノの歴史や変化について、あらてめて考えて調べてみると新しい発見があるかもしれませんね。
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