自らを奮い立たせるものを模索していたが……
広島・黒田博樹投手(40)から鈴木清明球団本部長に「来年もやります」と連絡が来たのは12月8日のことだった。今季、8年ぶりにメジャーから復帰して、40歳という年齢を全く感じさせない11勝(8敗)をマークした。防御率2.55と変わらぬ安定感も示し、低迷した古巣ヤンキースのファンから「なぜクロダを出したんだ」との声が出たほど。日米通算200勝まであと7勝と迫った。
しかし、黒田は来季の現役続行について悩んでいた。11月末に「心技体の心の部分が大事。体を動かすのも気持ち。今年はモチベーションが高かっただけに、それを超えるものを探すのは難しい」と発言。自らを奮い立たせるものを模索していた。
男気・黒田のモチベーションを上げるものは、記録でもない。もちろん、お金でもない(お金だったらメジャーに残留していた)。
「決めた以上は当然、頑張るしかない」と黒田
一番大きかったのは、エース・前田がポスティングシステムを利用してメジャーへ移籍することだろう。そうなるとカープ投手陣は20代がほとんどと若手ばかりになる。「黒田さんから学びたい」との声はシーズン中から起こっていたが、来季はもっと多くなるのは間違いない。また、ファンの熱意も痛いほど肌で感じている。残留を願うファンの思いは、日を追うごとに増すばかりだ。「これに関しては、これだ、という一つの部分ではない」と黒田は言う。
2015年の広島の観客動員数は初の200万人突破で、前年比12.3%も増加した。しかし、これは黒田1人の力ではないにしろ、“黒田効果”が大きかったことは誰も否定しない。そして、何よりも優勝への思い。今季、結果を出せなかった悔しさを来季につながればいけないのだ。
12月15日現在、「まだ契約をしていない」(編注:12月17日に、2億増の6億円(金額は推定)でサインしたことが報じられた)と前置きした上で、現役続行決断後、初めて来季について言及した。
「それなりのプレッシャーはありますし、責任もあります。当然、やらなければいけない。結果を求められるので大変だと思いますけど、決めた以上はやるしかないですから」
熟考を重ね、現役続行の道を選んだ。現在は、体のケアをする一方で、「やれるときはやっています」と並行してトレーニングも行っている。
「自分のできる範囲のことしかできないですけど、精いっぱいやる。決めた以上は当然、頑張るしかない」
プロ20年目、41歳で迎える2016年シーズン。25年ぶりの優勝へ向け、男気・黒田の戦いはまだ、終わらないのだ。