多くの日本人に愛される金魚。誰もが、一度ぐらいは飼育の経験があることだろう。とりわけ、祭りの縁日での金魚掬いで掬った「和金」「黒出目金」。最も多く目にする、いや、金魚と言えば殆んどの人がこれらの種類を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、金魚には様々な品種が存在し、その容姿は千差万別。なかなか奥の深い世界で、一般に広く普及する和金などの品種から、熱心な愛好家が多く存在するランチュウなど、その種類も飼育スタンスも多岐にわたる。
その中でも特に、早春の似合う爽やかな、“桜”の名を冠せられた金魚がいる。その淡いパステル調の色彩は、正に桜の名が相応しい―――
一般には、余り知られていないのだが、桜色の地肌に赤い模様が乗った、淡い色味の可愛らしい金魚。
比較的、生産量が少ない為か、観賞魚店などで余り目にする機会がない、珍しい金魚の部類にはいります。今回は、その様な美しさと希少性を兼ね備えた、桜錦をクローズアップしてみました。
折りしも今年は、中国から日本に金魚が伝わって500年目の年。そうなのです!金魚は、もともと中国で作り出された魚なのです。今からおよそ2000年前の中国で、フナの突然変異で現れたフナの赤い体色のもの(ヒブナ)を固定、品種改良を繰り返し、悠久の時を経て現在の形へと作られていったのです。これほど人の手によって、多くの品種が作り出された生物も珍しいかもしれません。
日本に渡来したのが、今から丁度500年前の1502年。大阪の堺市に持ち込まれたとの記録が残っています。今日では、犬、猫に次いで、最も親しまれるペットとして一般に広く普及、また、多くの愛好会、品評会などが行われるまでに浸透しています。なかには、国の天然記念物に指定される高知県の「土佐金」、愛知県の「地金」などの品種もいます。
そんな節目の年である今年は、各地で“伝来500年”に因んだイベントが行なわれ、金魚の静かなブーム!?が巻き起こっているような気配が。
この魚の大きな特徴は、そのパステル調の淡い色彩にあります。透明感のある上品な赤と白の更紗模様は、観る者を惹きつけずに止みません。体型は、ランチュウ型。背びれのない俵型の体型で、頭部に若干のこぶを持ちます。また、モザイク透明鱗(透明なウロコと普通のウロコが混ざる)である事も大きな特徴の1つです。
この「桜錦」が作出される過程は、ランチュウと東錦の交配によって作出された江戸錦の中から、特に体に黒い色素の入らない透明鱗を持つタイプを、選別固定する事により作出されたのです。