“バランスドアクアリウム”という言葉を、という言葉をご存知でしょうか?

例えば、一つのガラスの瓶に田んぼの土、一片の水草とそこにある水を入れ、日の当たる窓際においてみましょう。すると、どうでしょう……!? 2、3日もすれば水が澄み、小さな生き物達が泳ぎだすのを観察できます。ごくごく簡単に解説すると、このように濾過装置などの人工器具のない環境で、生態系のバランスが取れている(換水、給餌が不要、もしくはごく少量)アクアリウムのことを『バランスドアクアリウム』呼びます。このようなガラスの瓶で作る簡易なものから、愛知県名古屋市にある世界のメダカ館の“小さな地球のモデル水槽”のような照明以外の人工物を排除した、完全に閉鎖環境での水槽(アクアリウム)まで存在します。

さて、バランスドアクアリウムを制作するにあたって、重要になるのは以下の3点になります。

  • 一片の水草(生産者)
  • 微生物(消費者)
  • 太陽の光(エネルギー)

これら3つのバランスが取れることにより、換水も給餌も不要(もしくはごく少量の換水と給餌)な水槽ができるのです。具体的に言うと食物連鎖を水槽内に再現することになります。そのことにより、太陽の光を使って植物が育ち、植物の出す酸素を生物が利用し、生物の排出物や死骸は植物がまた利用する、といった小さな生物循環が水槽内に出来上がるのです。

自然環境に目を向ければ分かるのですが、私達の水槽にあるような濾過器もなければ照明器具もありません。自然では、前述の物質循環が上手く行われているため、そのような器具は存在しなくても水は澄み、植物は青々としているのです。

では、ここで一冊の面白い本を紹介しましょう。熱帯魚関連の書籍というよりも動物行動学について書かれた内容なのですが、いくつかアクアリウムについて書かれている項があります。そのなかには、勿論、バランスドアクアリウムに関する記述もみられます。

「ソロモンの指環」 コンラート・ローレンツ

ソロモンの指環——動物行動学入門」

コンラート・ローレンツ
日高敏隆=訳
出版:早川書房
定価1300円(本体1262円)

アクアリウムについての記述

  • 被害を与えぬもの——アクアリウム
  • 水槽の中の二人の殺人犯
  • 魚の血

コンラート・ローレンツ(Konrad Lorenz)博士は、

アクアリウムは、一つの世界である。なぜならそこでは、自然の池や湖と同じく、いや結局はこの全地球上におけるのとおなじく、動物と植物が一つの生物学的な平衡のもとで生活しているからである

と述べています。

正に、その通りだと思います。究極的には、アクアリウムの目指す地点は、そこにこそあると思います。このような生物学的な平衡がとれたものが、バランスドアクアリウムなのです。しかし、私達の家庭にある水槽でこれを再現することは、かなり困難とも言えます。また、それを制作維持するためには、生物学的な知識と経験、優れた観察眼が必要になります。

あくまでそれを理想として、水槽内での生態系を理解した上で、物質循環の大まかな流れを把握し、より近い環境を目指すことによって、素晴らしいアクアリウムができあがることでしょう。そして、いつも気遣っていて下さい。水の中の小さな生き物や植物達のことを。



関連リンク
熱帯魚の飼い方・繁殖方法


メールマガジン発行中
新着記事や更新情報を毎週火曜に無料でお届け! メールマガジンでしか読めない豆知識や連載コラムも大人気。皆様のご購読お待ちしております。
登録・バックナンバーの閲覧はコチラ。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。