アドバイス1 長生きによるリスクも心配いらない
ご主人が完全リタイアした状態で、ご夫婦揃って旅行が楽しめる老後が過ごせるかというご相談ですが、結論から言いますと、おそらく大丈夫でしょう。描かれているプランは十分実現可能だと考えます。では、具体的に試算してみましょう。
まず、ご主人の自営業での収入はなく、奥様が60歳まで働くとします。そうなると、ご主人85歳、奥様80歳までの世帯収入(奥様60歳までの給与+ボーナスとご夫婦の公的年金)は合計で約5150万円。
対して、生活費は奥様が退職するまでは現状と変わらず、定年後は月14万5000円とのこと。これに70歳まで年間50万円、71歳以降は20万円の旅行費用を上乗せすると、トータルで約5450万円。この時点で不足額は300万円ですから、手持ちの資金で十分補えます。
また、リフォーム費用500万円、自動車の買い替え200万円を加えても、まだ手元に残る貯蓄と投資商品は5000万円近く。不測の事態に備える額としては、十分ではないでしょうか。加えて、奥様81歳以降も、例年どおりであれば公的年金が生活費+旅費を上回りますので、長生きによるリスクもありません。
アドバイス2 死亡保障の必要性はないと考えるべき
旅行を十分楽しめて、それでも老後資金が不足しないのは、まとまった貯蓄があることはもちろん、普段の生活費が低く抑えられている点が大きいでしょう。とくに6年前に住宅を建替えた費用を全額現金払いにして、定年前に新たにローンを作らなかったことは実に賢明だったと思います。ただし、保険については奥様も言われているように、ご主人の終身保険は見直すべきだと思います。払済保険にするか主契約以外解約かということで言えば、払済保険がいいでしょう。毎月保険料を支払ってまで、死亡保障1000万円を確保する必要性はありません。貯蓄のつもりであれば、浮いた保険料をキッチリと定期預金などで積み立てた方が合理的です。また、奥様加入の共済も2本は不要。どちらか1本に絞っていいでしょう。
アドバイス3 年間収支でマイナスの時期をどう乗り切るか
貯蓄と投資のバランスについては、投資がやや多めですが、投資の3分の2がリスクのきわめて低い個人向け国債であるため、実質の運用は1000万円程度。この程度でいいかと思います。それよりも、普通預金に2100万円を預けているのはもったいないのでは。地方の金融機関のインターネット支店などでは、1年ものの定期預金で0.4~0.5%の金利を付けています。年間8万円前後の利息を手にできるのですから、ぜひ調べてみてください。
また今後、キャッシュフローで気になる部分は、奥様が60歳で定年を迎えてから65歳になるまでの5年間は年間収支がマイナスになります。それでも、試算として問題ないのですが、実際はそのことで不安に感じるかもしれません。そのとき、手元に資金があるので大丈夫だと思えるかどうか。
加えて、とくにご主人の健康面がやはり気掛かりです。それでなくとも、年齢を重ねるほど、体力は低下していきます。ご旅行が趣味であれば、元気に動けるうちにいろいろ行かれるといいでしょう。年間予算50万円と言われていましたが、60~70万円にアップしてもまったく問題ありません。ご夫婦でぜひ楽しんでください。
「あるひ」さんから寄せられた感想
深野先生、このたびはありがとうございます。老後に対する漠然とした不安がありましたが、現在の生活を維持していれば長生きのリスクも心配いらないのではとのこと。結婚当初、家財道具をローンで揃えたのですが、それがイヤだったので、以後一度もローンを組んだことがありませんでした。家を建て替える時もローンで支払うという選択肢はなかったのですが、それが良い結果に繋がったようなので安心しました。これからは健康に留意しながら、生き生きと前向きな毎日が送れるように、生きたお金の使い方を心掛けたいと思います。こちらで相談させて頂いて、本当に良かったです。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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