アドバイス1 今後の収入だけで老後資金を確保
資産構成について考える前に、即リタイヤされた場合のキャッシュフローを考えてみたいと思います。まずリタイヤ後、アルバイト等はせず、その代わりに生活費は15万~20万円に落とせるとのこと。仮に20万円として、85歳までの38年間で9120万円。一方、今後の収入ですが、退職金1200-1300万円に加え、個人年金保険から55歳以降、終身で年金額99万円支給されますから30年間で約3000万円。公的年金は65歳から月12万円ということなので約2900万円。あと、終身保険から生存金として、計800万円が受け取れます。これらを合計すれば、リタイヤ後の確定している総収入は約8200万円。つまり、あくまで生活費だけで試算すれば、貯蓄や投資に回しているお金から1000万円程度取り崩すだけで、老後生活がカバーできるということになります。
また、85歳以降も公的年金と個人年金保険で月20万円の収入が確保できていますから、長寿によるリスクもさほど心配することはないと言えるでしょう。
したがって、極論を言えば、投資部分の大部分を損失してしまっても、老後の基本生活資金は確保できているということになります。
アドバイス2 それでも資産配分は1対1に
では、今の資産状況について今後も手を付けなくていいかと言えば、やはりある程度、リスク資産は減らしておく方が賢明だと思います。先の生活費の試算はあくまで、老後生活全般にわたって支出が一定と想定した場合です。途中、病気やケガ、実家のリフォーム、その他、不測の事態でまとまった支出が発生する可能性は否定できません。
そもそも、貯蓄は現在250万円ですから、退職金を全額それに加えても1500万円。個人年金保険の年金支給までの8年間、これだけでは生活費が不足すると考えられます。
理想としては、貯蓄と投資の資産配分は1対1。65歳をめどに徐々に投資商品を現金化していく。これまで長年、安定した運用で不労所得を得てきたのですから、売却のタイミング等も熟知していると思います。ご自身の判断で効率よく、リスク資産を減らしてみてください。
それでも6000万円程度、投資商品が残ります。老後の楽しみとして運用する(=リスクを取る)には十分な額ではないでしょうか。
アドバイス3 繰上返済で固定支出を減らす
現金を増やすべきだとするもうひとつの理由は、住宅ローンです。66歳のとき完済ということですが、それを待たずに繰上返済で完済してしまってはどうでしょうか。借入金は2000万円で金利は当初5年が0.75%、以後1.35%。支払う利息は220万円ほどになります。2000万円を投資に回せば、それを超える運用益を生む可能性もあるでしょう。とは言え、なるべく固定支出を減らし、生活費を抑えることは、とくに年金等の収入がまだないリタイヤ生活にとってはプラスです。
ローンがなくなると、家計に余裕が生まれ、結果的に無駄な支出が増えてしまうというケースもありますが、相談者の場合はそういう心配もないと思われます。
「シングルデラックス」さんから寄せられた感想
この度は、私めのような者に親身なアドバイスありがとうございます。漠然たる未来における経済的不安でしたが、大変心強く思っています。少し心の荷が下りたようでもう少し勤め人頑張ってみるかみたいな気持ちも湧いてきました。勤め人現役中は、かような凡人でもタダみたいな当初金利0.75%で借りられた住宅ローンも抱えながら過ごしたいですし、先生からアドバイスいただいた資産再構築工程は、もう数年辛抱して、実行開始したいと思います。先生をはじめ、記事をおまとめいただいた記者様に御礼申し上げます。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
【関連記事をチェック】
50歳、資産は1億3000万円。でも早期リタイアが不安
48歳資産7700万円。55歳からのリタイアは可能ですか?
40歳貯蓄4500万円。夫が50歳でリタイア希望し心配に
45歳貯金200万円。遺族年金と月収6万円で老後は?
60歳間近で貯蓄1000万円のみ。次男は就職に失敗…