小林美樹(ヴァイオリン) サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ、ラヴェル:ツィガーヌ、他
ヴィエニャフスキ国際コンクール第2位となり、一躍日本のトップ奏者となった小林美樹。難関ロン・ティボー国際コンクールで弱冠20歳で第1位となった田村響。現在若手世代でまさに実力派として活躍する2人の才能が煌くアルバムです。小林美樹の卓越したテクニックは見事ですが、注目は彼女の奏でる美しく紡がれる音色とメロディです。一音一音を七色に輝かせ、音楽の起伏を大胆に表現してゆくさまは、まさに圧巻です。
■ガイド大塚の感想
1曲目イザイの『サン=サーンスの「ワルツ形式の練習曲」によるカプリース』から卓越した技術に驚かされる。フランスのヴァイオリンの名曲を若き勢いで、熱っぽく奏でていくが、最後にしっとりと美しい「タイスの瞑想曲」がデザートのように演奏されるのも嬉しい。
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レヴィット(ピアノ) 変奏曲の世界(バッハ、ベートーヴェン、ジェフスキ)
イゴール・レヴィットの3作目は、なんと3枚組! しかも、前2作で取り上げた作曲家の変奏曲と、昨今人気の高まっているポーランド系アメリカ人作曲家ジェフスキが1975年に作曲した「不屈の民」変奏曲という大胆なカップリング。、「不屈の民」変奏曲は、現代音楽作品の中では異例の人気を誇る楽曲の一つです。「変奏曲」にスポットを当てたレヴィットの冷徹な視線に大きな話題が集まることは間違いありません。日本盤のみ高品質BSCD2仕様。
■ガイド大塚の感想
これまたクラシックの歴史に刻まれるとんでもないアルバム。当然ジェフスキに話題がいってしまうと思うが、ゴルトベルク変奏曲からそれだけで十分なほどの衝撃がある。そんなに熟成させたわけではないのに飲み頃のワインのような角の取れた味わいのテーマから美味すぎる。変奏では装飾音を自然に盛り込み心地良く進む。一方、ディアベリは繊細なディナーミクをつけた快速テンポで深遠な未来旅行へ行くよう。ジェフスキは淡々とレーモン・クノーの「文体練習」のように多様な変奏を描く。
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田部京子(ピアノ) ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30~32番
田部京子のトリトンレーベル移籍第1弾は、ベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタ3作品を収録。これまでのリサイタルでも喝采を浴びてきた「ファン待望の楽曲」が、ついにセッション録音されました。田部京子の確かなテクニックによって奏でられる音楽は、繊細かつ緻密に構築されています。音質にもこだわった当盤では、彼女の凛とした美しい音色を、そしてベートーヴェンの世界を、存分にご堪能いただけることでしょう。
■ガイド大塚の感想
この落ち着いていながらも若々しい感性を失わない美しきベートーヴェンは、胸にすとんと落ちた。演奏は(特に30番など)メロディックかつ響きが美しく女性的だ。だが、それは全くデメリットにならない。芯のある佇まいで、何度も聴きたくなる。
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ホロヴィッツ(ピアノ) リターン・トゥ・シカゴ
鍵盤の魔術師と称され、20世紀最高のピアニストの一人として絶大な人気を誇るホロヴィッツの未発表ライヴ音源! その圧倒的スケールとエンタテインメント性で聴衆を熱狂させた巨匠最晩年の貴重な記録です。変幻自在かつ多彩な音色でホロヴィッツの晩年に典型的なレパートリーを堪能させてくれるアルバムです。
■ガイド大塚の感想
ホロヴィッツは長い演奏家人生で、初期には強靭な指でバリバリ弾き、一方、来日公演では吉田秀和に「ひびの入った骨董」と言われた指の回らぬ演奏(薬のせいとも言うが)、また強烈な打鍵でショー的であるが下品でもある演奏など様々な歴史を経た。が、この晩年のライヴでは、解説に「インディアン・サマー」とあるように、正に人生最後期に訪れた小春日和の美しさを見せてくれる。もう春や夏に戻れるわけではないが、それ以上に温かさが身に沁みるような、音楽の優しさ、美しさがある。
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