ブッフェの楽しみ方とは
みなさんはブッフェに行かれたら、どのように楽しんでいますか。ブッフェは、もともと料理が並んでいて、自分で取りに行くという独特なスタイルなので、アラカルトやコース料理とは違った楽しみ方があります。こういった特殊性があるために、ブッフェではどうすればよいのかということがよく語られており、私もテレビや新聞、雑誌で頻繁に訊かれます。
私はブッフェを専門の一つとしていますが、実はブッフェを専門としているジャーナリストやライターは他におらず、思い当たりません。そのせいか、ブッフェのハウツーを述べた記事の中で、本質を知らないために恣意的であったり、経験が少ないために汎用性に乏しかったりする「攻略法」をいくつも目にしてきました。
日頃そういったことを残念に思っていたので、今回、私が考える「本当の楽しみ方」を書くことにしました。この記事がみなさんのお役に立てれば嬉しいです。
<Index>
- 「得する」と「楽しむ」の違いを整理
- ブッフェでは「いろいろ食べ」をする
- ブッフェのコツ:料理台の近くの席よりも遠くの席!
- ブッフェのコツ:「実演された料理」を食べる
- ブッフェのコツ:「のんびり食べ」をする
- 「おいしかった思い出」を持ち帰る
「得する」と「楽しむ」の違いを整理
まず、ブッフェでは「得する」や「楽しむ」が混同されていたり、そもそも違いが認識されていなかったりするので、簡単に整理しておきましょう。「得する」というのは、主に金銭的な価値で判断されることを意味し、例えば割り引きされるだとか、特別なメニューが食べられるだとか、そういったことを指します。そのため、「どの料理が一番高いか」や「どうすれば自分だけが食べられるか」に重点が当てられます。
一方、「楽しむ」というのは金銭的な価値はさておき、本人が楽しめるかどうかだけで判断されるものです。
私は「得する」=「金銭的に得する」ことを主体に据えることに対して違和感を持っています。というのも、ブッフェで何が金銭的に得であるかを判断することはとても難しく、そんなふわふわとしたものに取り憑かれ、楽しめなくなってしまっては仕方がないからです。
例えば、「元を取る」という考え方がありますが、これは実に意味のないものだと考えます。というのも、「元を取る」というのがどういう状態を指すのかが不明だからです。払う金額よりも、食べたものの食材費が高ければよいのか、食べた料理が店で販売されている価格よりも高ければよいのか、どちらなのでしょうか。
前者では、店が仕入れている価格なのか、それとも小売店で売られている価格なのかでも違います。後者では、そもそもブッフェで出されているものと同じ料理がアラカルトで販売されていることはほとんどありませんし、他の店で似たような料理が販売されていたとしても、料理の値段というのは賃貸料や借入金の大きさにも影響されるので、他の店の料理の値段を参考にしてもあまり意味を成しません。
こういった理由から、金銭的なものに囚われることはあまりおすすめできないと考えるのです。
ブッフェでは「いろいろ食べ」をする
ブッフェには、冷前菜、温前菜から主菜、デザートまでたくさんの料理が並べられています。ホテルであれば、40種類くらいはまず用意されているでしょう。せっかくの機会なので、様々な種類の料理を食べた方がよいです。アラカルトやプリフィックスのコース料理では、あまり冒険はできないものです。というのも、1人前がしっかりとボリュームがあるうえに、もしも口に合わないようであれば、無駄になってしまうからです。
でも、ブッフェであれば安心。一口くらいのポーションだけ取って食べてみて、口に合えばもっと取ればよいだけです。普段は注文しないような未知の料理にも気軽に挑戦できます。
ブッフェで食わず嫌いが直って、好きな食べ物が増えるかも知れません。
ブッフェのコツ:料理台の近くの席よりも遠くの席!
ブッフェで様々な種類の料理をただ食べるだけではなく、なるべくよい状態で食べられた方がより楽しめることは明白でしょう。ただ、チェーフィング(保温器具)や冷蔵機能を備えたブッフェ台が増えてきてはいるものの、ブッフェ台に置かれた料理の状態が、時間の経過とともにだんだん悪くなっていくことには変わりありません。では、どうすれば最もよい状態の料理を食べられるのでしょうか。一番よいのは、補充されたばかりの料理を取ることです。
しかし、補充されたらすぐに取れるようにと思っていても、ブッフェ台のすぐ側の席はあまりよくありません。フッフェ台に近過ぎると死角ができて逆に見えづらくなりますし、スタッフや客の往来が激しくてあまり落ち着きません。
そのため、ブッフェ台から程よい距離があって、全体を見渡せる席がよいのです。これだと何が補充されたかを把握できますし、落ち着いて食べることもできます。
ブッフェのコツ:「実演された料理」を食べる
鉄板焼や寿司などを除いて、レストランでは料理を調理する様子を見ることはあまりできません。しかし、ブッフェでは「できたてではない料理が並んでいる」というイメージを覆すため、積極的に実演を行って、できたての料理が食べられるようにしているのです。実演は臨場感があって迫力がありますし、見ているだけでも楽しいでしょう。目立つものなので店も力を入れています。また、実演で料理をもらう際に「ボリューム多め」「ソース少なめ」など希望を述べたり、「今日はどの料理がおすすめですか」と質問したりと、料理人と話ができることも魅力の一つです。
こういったブッフェならではの演出をしっかりと楽しんでください。
ブッフェのコツ:「のんびり食べ」をする
ブッフェは大食い競争をする場所では決してありません。大食い競争は少ない種類(たいていは1種類)をたくさん食べるものですが、ブッフェはたくさんの種類を少しずつ食べるというものだと、私は考えています。今ではブッフェには制限時間が設けられていることがほとんどですが、90分程度というのが多いです。それだけの時間があっても、まるで大食い競争のように急いで食べてしまったら、30分くらいですぐに苦しくなってしまうでしょう。デザート、コーヒーや紅茶も用意されていることが一般的なので、時間を一杯に使ってのんびりと過ごすのがよいです。
食事だけではなく食後のカフェもゆっくりと堪能できると、もっと楽しくなります。
「おいしかった思い出」を持ち帰る
私が昔からずっと言い続けていることですが、ブッフェを楽しむうえで最も大切ことは「おいしかった思い出」を持ち帰ることだと思います。ブッフェは元を取ろうとしたり、大食いしたりするものではないと、私は考えています。そのため、苦しくなるまで食べず、腹8分程度に抑えて店を出るのがよいでしょう。お腹一杯に苦しく食べて、店を出た後に「食べ過ぎて気持ち悪い」「食べなければよかった」と、後悔とともに「楽しくない思い出」を持ち帰ることは楽しいことでしょうか。
それよりも適度に食べて、店を出た後に「おいしかった」「もう少し食べたかった」と名残惜しい気持ちとともに、また次にブッフェへ行きたいという「おいしかった思い出」を持ち帰る方が楽しいのではないでしょうか。
では、「おいしかった思い出」を持ち帰るにはどうすればよいかと言うと、「最後の一皿」を食べないで切り上げるぐらいがちょうどよいのです。あともうちょっと食べられるけれどもどうしようかなという時に、食べるのをやめてみるのです。
こういった最後の一皿は、たとえ食べられたとしても、ただ肉体的に詰め込んでいるだけであって、精神的にはもうおいしいと感じられません。
最後の一皿をぐっと控えて、みなさんも「おいしかった思い出」を持ち帰ってくださいね。
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