絶妙な全高と余裕のあるロードクリアランス
ボルボV60 Cross Countryの美点のひとつとして、先ほど述べたように「全高と最低地上高の絶妙なパッケージング」がある。1540mmというタワーパーキングに入る全高に抑えつつ、本格SUVと遜色のない200mmのロードクリアランスは、駐車場に制約があったり、雪国など悪路走破性を重視したりするニーズにマッチする。ただし、全幅は1885mmとワイドなので、駐車場に幅方向にも制約がある場合は要注意だ。
FF(2WD)のV60 Cross Countryは、D4 SEというグレードで、2.0Lの直噴ディーゼルターボと8ATを組み合わせる。190ps/400Nmというスペックから分かるようにディーゼルらしいトルクフルなエンジンで、試乗した箱根ターンパイクの登り坂でも苦にしない力強い走りが印象的だ。
しかも、最低地上高が高められているのにも関わらずハンドリングはシャープで鈍重さは一切ない。ただし、オールシーズンタイヤを履くV60 Cross Country D4 SE(235/55R17サイズ)はやや突き上げが大きめで、乗り心地はもう少し洗練度が欲しいところ。
2.5Lの直列5気筒ターボに乗り換えると、マルチシリンダーらしい上質かつ滑らかなエンジンフィールが印象的で、トルクフルなディーゼルターボとは違った良さを味わえる。
しかも、235/50R18と1インチ大きなサイズにも関わらず、サマータイヤを履くこともあってか路面からの突き上げも若干マイルド。エンジンフィールやエンジンの静粛性、乗り心地も「T5 AWD SE」の方が一枚上手だから、何よりも優雅に走りたいというニーズにはこちらの方がより応えてくれそうだ。
バイヤーズガイド的にいえばディーゼルが買い!
しかし、イニシャルやランニングコストを考えると、494万円のディーゼル仕様が最有力候補となる人が多いはず。
519万円のガソリン仕様とは25万円の価格差がある上に、自動車取得税と重量税が「免税」になり、自動車税が75%軽減となるディーゼルの魅力は高い。さらに、ディーゼルは軽油でカタログ燃費は19.5km/L、ガソリン仕様はプレミアムガソリンを指定し、12.6km/Lという燃費さもある。
ライバルとの価格差は、グレードによって異なるが、メルセデス・ベンツのC220dとは100万円くらい、 BMWの320dとは約60万円あり、300万円台のVWゴルフ・オールトラックはサイズ、価格ともにひとクラス下だから、実質的にはガチンコとなるライバルは不在。
ディーゼルはFFのみだが、雪国でもない限り必要十分なロードクリアランスも確保されているボルボV60 Cross Country。アウトドア派なら見逃せない一台に仕上がっているし、ややニッチではあるかもしれないが、面白い存在といえそうだ。