ウィーンのクリスマス、心温まるクラフトと椅子のある風景
どこにいても、「何気なくある椅子」が気になる。
そして、その場所、空間の一部になりきっている風景がそこにある。
今回の椅子のある風景は、オーストリアの首都:ウィーンの大寺院に佇む椅子。そして、年末のウィーンの街のクリスマス風景。
ウィーンの旧市街地、ランドマークとしてそびえるシュテファン大寺院。巨大なゴシック建築のその荘厳さは、いつ見ても鳥肌もの。
外観もそうだが、寺院内部もそれはそれは荘厳で、「ああ、神様……」と自然に手を合わせ、お祈りする自分がいる。
寺院内部は、薄暗く古色蒼然。
床は、淡いオレンジとブラウンの大理石が時の経過ともにその色を独特な世界と変え、整然と並ぶ椅子たちのかすかな息遣いが聞こえてくる。
ここにある椅子たちは、どれだけの時間と人々の信仰を紡いできたのだろうか。
誰もが釘付けになる正面の祭壇。あまりの美しさに視線を奪われたまま、そーと椅子に腰掛ける。
顔は見上げたまま……まるで吸い込まれてしまいそうな天井、モザイク細工のようなステンドガラス、そびえる柱、彫像、空間を漂う冷たく透き通った空気……それらを追いながら無心に眺めてしまう。
数百年前にここで演奏したモーツァルトの音が、どこからか聞こえてきそうだ。
外へ出ると、街はクリスマス一色。
シュテファン大寺院の前のケルントナー通り、王宮前のグラーベン通り、どこもかしこも、クリスマス。当地では、11月から年を越して1月頭までクリスマスを祝う。
寺院、宮殿、大学、市場、など街の至る所でクリスマスマーケットが開かれる。もちろん、シュテファン前でも。
また、街ではクリスマスツリーをマーケットで買って帰宅を急ぐ家族を見かけることもしばしば。
日本ではなかなか見慣れない景色である。
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