熱帯魚/水草の育て方・オンライン図鑑

[第7回] 水草水槽に適した底床(2ページ目)

水草の育成において、底砂は重要な位置を占めます。水草の生理を知った上で、適切な底砂を選択することが成功への近道。様々な特徴をもつ底砂を例に挙げて、それぞれの短所長所について考えていきます。

長谷川 秀樹

執筆者:長谷川 秀樹

熱帯魚ガイド

A1(水質をアルカリ側に傾ける)の代表的なものには、『大磯砂』が挙げられます。既に多くの書籍等で解説されているのでご存知かと思いますが、元々は大磯海岸で採集される砂礫に対してこの名称で呼ばれたのですが、既に同所での採取は禁止となり、似たような形状色彩のフィリピン砂や海産砂が『大磯砂』の名で販売されています。

『大磯砂』は海岸で採取されるため、サンゴ片や貝殻の欠片の混入があり、炭酸カルシウムを主成分としたそれらは飼育水のKH濃度を上昇させてしまいます。結果、pHの上昇も引き起こし、水草の管理を行いがたくしてしまうのです。

また、一部の人工底床にもpHを上昇させるものが知られています。


ソイル A2(水質を酸性側に傾ける)の代表的なものには、現在水草水槽で主流と成りつつある『ソイル系』の底床が挙げられるます。これらは天然の土壌を適度な硬さに焼成したもので、その成分に有機酸を豊富に含み、それ自体がイオン交換をする為、pH・硬度(KH、GH)が低下します。

pH、硬度を低い値に引き込んでくれるので、多くの水草の育生が用意になることから水草の育生に適した底床の1つと言えるでしょう。また、それ自体に栄養分を含んでいる事も特徴の1つです。現在人気の南米産の水草が好む環境を、容易に再現できる事も人気の秘訣でしょう。


さて、余りこの事には触れられていないのですが、ソイルの効能(pHの降下、軟水化)は、使用する水道水の水質に拠って初めて選択の意味を持ちます。日本の平均的な水道水は軟水ですが、若干の硬度物質(Ca、Mg)を含みます。

多くの南米産水草は、これらの値が限りなく0に近い方が良いとされるので、ソイル系の底床が珍重される傾向にあるのですが、地域によってはKH、GHともに0に近いところもあります。この様な水質の水道水であれば、硬度物質を上げる底床さえ使用しなければ、同様の環境を作る事は容易です。

まずは、ご自宅の水道水の水質を知った上で選択される事が肝心でしょう(参考までに筆者宅の水道水は、KH、GH共に0に近いため、セラミック製の底床の使用で、トニナやスターレンジも問題なく育っています)。また、RO等を使用して、水質調整を行う場合も必要がありません。その様な場合は、メンテナンス性や保持性を重要視した方が賢い選択といえるでしょう。

上記以外にも、焼成セラミック系の底砂の一部、その他の人工底砂の一部にも一時的(概ね、使用初期)にpHを降下させるものが知られています。大半の商品が、パッケージに明示してあるので、そちらを参考にしてください。


セラミック製の底砂 A3(水質に影響を与えない)の代表的なものには、焼成セラミック底砂や酸処理を施された大磯(※注1)、石英系の底砂などが挙げられます。これらは、水質に変化を及ぼす物質を含まない為、水質に影響を及ぼす事はありません。

大磯砂も混入される炭酸カルシウムさえ取り除いてしまえば、水質への影響は殆んどありません。水溶性の無い石英(SiO2)を原料とした底砂も、水質に変化を与えることはありません。

それでは、A1~3までの特徴とそれら分類に含まれる代表的な底砂について把握できたと思いますので、それぞれの長所短所について考えながら、水草育生に求められる条件を模索していきます。

注1:硝酸や塩酸を使用することによって、砂利に含まれる硬度物質を溶解し、水質に影響を与えなくしたもの

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