一人暮らしの高齢者のほとんどが孤食
一人暮らしの高齢者の栄養の偏りや不足が注目されています。
その結果、食事の栄養バランスについて、同居のタイプは8割以上が「栄養バランスがとれている」と感じているのに対し、独居タイプでは55%に留まりました。「栄養バランスが欠如している」と感じている割合は独居タイプでは45%に上り、同居タイプの3倍に上ることが明らかになりました。
また、独居タイプは同居タイプよりも普段の食生活で不足している栄養素が多くみられました。特に同居タイプと比べて不足の差が大きい栄養素は「タンパク質」「食物繊維」「鉄分」「カリウム」「カルシウム」など。
独居タイプは20代の若者と比べ、「カリウム」以外は不足している栄養素が共通していました。「栄養バランスが欠如する」理由について、
「一人暮らしだから」(80%)、
「毎回きちんと料理を作るのが面倒だから」(56%)、
「いろいろなメニューを作るのが面倒だから」(51%)
という回答が多く見られました。
1日の食事回数やきちんとした食事時間についても、同居タイプよりも独居タイプの方が低下する傾向があり、惣菜や弁当の利用頻度も高く、特に男性一人暮らしの高齢者がコンビニで弁当や総菜を購入する頻度が高いことが明らかになりました。
孤食の高齢者はうつになりやすい
また別の調査では、一人暮らしで孤食の高齢者は、一緒に食事をする人がいる高齢者に比べて2.7倍うつになりやすいとの調査結果が発表されました。この研究は、「日本老年学的評価研究」のプロジェクトの一環として行われたものです。
要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者のうち、2010年にうつ症状のない3万7,193名を3年間追跡した研究で、「孤食」(ひとりで食事をとること)の人ほどうつ症状を発症していることが明らかになった。
研究に参加した高齢者のうち、ひとり暮らしの男性で85%、女性で79%が孤食だった。研究チームは、約4,400人を対象に「高齢者用うつ尺度」(GDS)という評価法でうつ傾向を判定した。
孤食となるかどうかは世帯状況に影響を受けるため、同居か独居かの違いを考慮して検討した結果、独居男性では孤食だと共食(誰かと一緒に食事をとること)に比べて2.7倍うつを発症しやすいことが分かった。
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「高齢者のうつを予防するために、孤食ではなく共食を進める施策が必要とされている」と、研究者は述べている。
子供家族と同居の高齢者の方が、栄養不足の不安は少ない傾向があります。
過去のプロジェクトの調査では、孤食をしている高齢男性は食事の頻度が低下する傾向があり、共食している高齢男性に比べ欠食率が3.74倍高く、体格指数(BMI)が30以上の肥満の割合が1.34倍高いことなどが示されているのも気になります。
過去の記事「都市生活者も無縁ではないフードデザート問題」でもまとめていますが、買い物に便利な都会の生活でも、「孤独な高齢者は、栄養状態が悪い傾向がある」と指摘されていました。田舎暮らしの高齢者は、一人暮らしであっても近くに住む親戚縁者の付き合いが深いお陰で、健康かつ安心して暮らせることもあります。また逆に近隣との付き合いが薄い都市近郊の新興住宅地の高齢者の方が孤独であることもあります。