コスチュームジュエリー/ミリアム・ハスケル

ミリアム・ハスケルジュエリーの特徴

コスチュームジュエリー界のトップブランド、ミリアム・ハスケルは全てのパーツがオリジナルデザイン!しかもハンドメイドで組み上げられています。現代のビーズ作家の方々にとっては、デザインバランス、色彩の取り合わせ方、ビーズパーツの組み方など、内容盛りだくさんの教科書の様な存在なのですから是非とも学んで頂きたいものです。

執筆者:渡辺 マリ

ハスケルジュエリーの特徴


パリュール

パリュール


ローズ2連ネックレス ブレスレット イヤリングのパリュール
(1948~52年頃フランク・ヘス デザイン)
白人好みの華やかなパリュールですが、色白の日本人にもピッタリのサイズで、それぞれ単独で身に着けても大変映えるセット

ミリアム・ハスケルらしさ
そのジュエリーの特徴とは。
1920年代に24歳の若さで起業しアメリカンドリームを実現。
そして少しずつ精神を病んで50年代に入りリタイヤを余儀なくされ、一線を退いた女性ミリアム・ハスケル。
「私は類いまれな魅力を持った女性が選んで身に着けようと思うような、それに及ぶものなどどこにもないという程、非凡で魅惑的なセンスを自分のジュエリー製作に要求しています。」と言った女性です。
飾人と呼びたい程職人気質だったミリアム・ハスケルブランドについて学ぶことは、コスチュームジュエリーを製作する方々にとって必要不可欠ではないでしょうか。
ハスケルジュエリーの特徴をいくつか挙げてみたいと思います。


マルチカラーの作品群

ブローチ

ブローチ


コスチュームジュエリー界のトップブランド、ミリアム・ハスケルは全てのパーツがオリジナルデザイン!
しかもハンドメイドで組み上げられています。
現代のビーズ作家の方々にとっては、デザインバランス、色彩の取り合わせ方、ビーズパーツの組み方など、内容盛りだくさんの教科書の様な存在なのですから是非とも学んで頂きたいものです。

1.マルチカラーの作品群であること。
あらゆる色を使いこなしています。
ブランドカラーというものはありませんでした。
例えばシャネルの赤青緑などのようにブランドデザイナーは自作品の色彩傾向を持っている場合が多いのですが、ハスケルブランドについてはあらゆる色で製作されています。
しかもそれらのカラーコーディネーションには不自然とも思える配色を見事に合わせてしまうマジックがあります。

手作業へのこだわり

裏座も美しく

裏座も美しく


2.パーツを全て手作業で組み接着剤を使用せず、糸やワイヤーを駆使して仕上げ ています。
これは他のデザイナーには殆ど見られません。
従って大量生産はしませんでした。

イヤリング

イヤリング

 

オリジナルパーツにデザインの工夫

ネックレス

ネックレス

3.それぞれのオリジナルパーツにデザインの工夫があり、色々使い分けられる様に作られていること。
デザインに合わせて座金もカット出来るようにしたり、ビーズも組み方で全く違う形を作ることが出来ます。
これらのパーツの使い方には目を見張るものがあり、感心させられることしきりです。


3Dデザインでどこからでも見応えのあるスタイル

ブローチ

ブローチ


4.一番の特徴がデザイン性にあります。
正面、上下、サイドから裏までも鑑賞出来る立体的なデザインであること。
人の身体は立体ですから自然にフィットするのは当然の事です。
ハスケルはビーズと共に使用する葉や茎、実等のメタルパーツや座金にまで曲げたりひねりを入れたりしてナチュラル感を出し、人の形に添うように組み、平面や直線を避けてデザインしています。
又、左右非対称であるなどアンバランスのバランスをとったものが多い事です。
人の姿は左右非対称ですからこれも当然身に着けた時の納まりが良いと言えます。
ちなみにハスケルのブローチは極端に言えば縦、横、斜め、逆さまに着けてもおかしくはないくらいなのです。


そのデザイン性とは

イヤリング

イヤリング


 

2WAY、3WAYと多様な使い方が出来るようにデザイン

5.2WAY、3WAYと多様な使い方が出来、フォーマルからカジュアルまでアレンジの幅が広い事です。
ネックレスはアジャスターを付けて首周りの調節が出来るようにし、しかもフロントへ回してY字チョーカーのスタイルをとる事が出来ます。
また、センターピースのあるネックレスはその部分を鎖骨のあたりに置き、アジャスターで連を首の根元にセットすればお洒落なサイドポイントのネックレスになり、ずれてくる事はありません。

ネックレス

ネックレス


2連のチョーカータイプなら1連に伸ばして首からかぶり、クラスプ部分を首の横に持ってきてロングネックレスとして使用したり、そのまま使う際も細工を施 したクラスプを前、横、後ろと位置を変える事でイメージチェンジさせたり、ブレスと繋いで華やかにマチネタイプの長さにする事も可能なのです。
多連のショートネックレスは半分に割ってロングネックレスに出来ますし、変わったものとしては左右にクリップブローチの付いた多連のラリエットは、前に下 げた両端を交差させてドレスに留めたり、首の前で二重に結んだり、横にずらして長短で結んだりと、色々変化させて使用出来るものもあります。


パリュール

パリュール


白20連 ネックレス ブローチ ブレスレット イヤリングのパリュール
1950年代初め(1951年 フランク・ヘス デザイン)
白でこれだけのボリュームのあるデザインをするのは流石!ハスケルブランド

あまりデコラティブではないので纏めて着けてもオーバーにならず、ブレスレットとネックレスを繋げばロングサイズのネックレスとしても楽しめる大変魅力のあるパリュール

パリュール

パリュール


ブラック3連 ネックレス ブレスレット イヤリングのパリュール 1950年代
地味なのに身に着けると目立ち派手さを感じさせる素敵なデザイン
ネックレスはヘッドを脇にずらせて着けるとグッドバランス

ネックレス

ネックレス


パリュール、デミパリュールなどセットで製作し、フォーマル、セミフォーマルにも 対応出来るグレードを持たせています。
このようにフレキシブルなセンスで纏められたジュエリーを身に付ける方々はきっとワクワクしていたのではないでしょうか。
ハスケルがフランクと共に創り上げたジュエリーの世界は、期待と喜びを、変化の楽しみを、そしてより美しく整える満足感を顧客に与えたのです。

ブローチ

ブローチ


それは既成概念にとらわれず、着ける人をどれだけ引き立たせる事が出来るかにこだわった、本当の優しさから生まれてきたものだと思います。

イヤリング

イヤリング


機械で生産する事が普通になったこの時代に手作業のみで製作したという、しかも最上のものを創ろうという意欲は、19世紀末ウィリアムモリスが提唱したアーツアンドクラフツの精神を彷彿させるものです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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