2015年11月の、クラシックのおすすめ新譜CDをご紹介!
毎月大量に発売されるクラシックの新譜CD。その中からレコード会社が自信をもってオススメするアルバムをセレクト&オススメコメントをもらい、更にガイド大塚が聴き手としての感想をつけて紹介していきます。2015年11月のオススメはこれだ!(発売前、発売延期、売り切れなどの場合もございます。ご了承くださいませ。直接CD店に行く場合などはご注意くださいませ)
ヤンソンス(指揮) マーラー:交響曲第4番
2015年3月20日のコンセルトヘボウ管とのコンサートをもって、首席指揮者より勇退したマリス・ヤンソンス。当ライヴは2015年2月の最新録音で、最終楽章の独唱はドイツの名ソプラノ、ドロテア・レシュマンです。極上の音響で知られる本拠コンセルトヘボウ大ホールでのきわめて優秀な録音が評判を呼んできましたが、すべてエヴェレット・ポーター率いるポリヒムニアのチームが手掛けており、このたびも高水準の仕上がりが期待できます。
■ガイド大塚の感想
ヤンソンスはエレガントながら情緒に溺れず、キビキビとテンポチェンジもはっきり行い、アクセントもアタック強めなど、この穏やかな曲をしっかりと引き締めつつ聴かせる。結果、素材ままの純粋な美しさが際立つ演奏となっているのがさすが。レシュマンも芯のある歌唱でヤンソンスの音楽作りに近く、誇り高く咲く1本の花のような美しさを印象づける。
ユジャ・ワン(ピアノ) ラヴェル:ピアノ協奏曲集
精確無比なテクニックとしなやかな音楽性、キュートな容姿とアスリートのような躍動で人気急上昇のユジャ・ワン。2014年12月のデュトワ指揮NHK交響楽団と共演したラヴェルのト長調協奏曲はテレビ放映され、非常に話題となりました。この録音は今年5月のものですが、2012年に26歳の若さでチューリヒ・トーンハレ管の音楽監督に指名された注目の天才指揮者ブランギエとのフレッシュな共演でラヴェルの精緻な色彩と官能を鮮やかに描いています。
■ガイド大塚の感想
このト長調には驚いた。個人的にユジャはパワフルかつクリアすぎに感じることも多かったのだが、そのクリアさがラヴェルのどの作品にも感じ(てしまってい)るアルカイックなイメージを埃ごと取り去ったかのような演奏。大好きな作品ながら、かくも隅々まで光りを放つ曲だったかと目の覚める思いだ。
2楽章のモノローグは、例えば4小節目、ミからそこまでの最高音であるシに至った際のp気味の表現など、細かな陰影が付き、切なく美しい。技術的には完璧なだけにここまで音楽的にも深みが出てくると圧巻。オケもさすがのトーンハレの技術の高さで、ふわっとした弦、コケティッシュな木管、エアリーな金管など、高次元のサポートでユジャのこの演奏にぴたりと合わせた名演。
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アントニーニ(指揮) ベートーヴェン:三重協奏曲&序曲集
バロック・ヴァイオリンの名手カルミニョーラ、人気チェリストのガベッタ、クロアチアの個性派ピアニストのラツィックという豪華ソリスト陣が結集し、アントニーニ指揮バーゼル室内管弦楽団の共演という、極めて刺激的な組み合わせでの「三重協奏曲」。いずれもピリオド~モダンを縦横に行き来できるセンスと技巧を身に付けた名手であり、LP時代以来顔見世興行的な名盤が多いこの「三重協奏曲」に新鮮な解釈をもたらしています。
■ガイド大塚の感想
1曲目『プロメテウス』の冒頭和音の空気砲のような明るく弾ける感じ、続く旋律の浪々とした歌、更にアレグロ・モルト・コン・ブリオでの疾走と強弱の対比と、どこから聴いてもアントニーニな、パリっと茶目っ気ある演奏。アントニーニ劇場の始まりだ。
そして、三重協奏曲はやはりソリストが達者。最初BGM的にかけたのだが「わぁ、ヴァイオリンの弾き切る感じ、ヴィブラートのシャープさかっこいいな、あ、そうだ、カルミニョーラだった!」とBGMにならない才人たちによる個性が溢れている。そしてそれらがアントニーニの下、最終的に同じ方向に進むのだから面白い。エグモントやコリオランでの、手刀で肉を切るような、かまいたちの如く空を切るような感じがやはりすごい。アントニーニ&バーゼルのベートーヴェンはつくづく面白い。
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鈴木秀美(指揮、チェロ) ハイドン:チェロ協奏曲第2番、他
ハイドンのチェロ協奏曲第2番は録音としては3度目となります。また、ファン・マルデレの交響曲はプログラムで取り上げたことはありませんが、OLC第1回のアンコールに一つの楽章を演奏した思い出の作品です。最後のハイドンの交響曲第71番はパリ・セット辺りと比べると規模はやや小さめかもしれませんが、充実した中身を持っております。有名・無名の作曲家、作品からこぼれる古典派の作品の熱演です。
■ガイド大塚の感想
これまたとんでもなく世界観が確立され、完成度の高い演奏。モーツァルトは、弾き切った和音の響きの輝かしさが眩いばかり。激しさもあるが軽さをもっていて、水の上を走るような軽快で繊細な疾走が心地良い。マルデレは2楽章での楽器の溶け入るような移り変わりがひたすら美しい。ハイドンの協奏曲は鈴木秀美の熟練の弓さばきから彫り出される工芸品のような味わい。その彫塑の深浅が何とも味わい深い。
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