デザインと性能は“実にアメリカ”
新型レネゲードは、メカニズムの多くをフィアット500Xと共有している。フィアットとクライスラーが結婚して、実質的に初めての共同作業ということになる。とはいうものの、完全なジープスタイルの外観を見ても分かるとおり、開発そのものはダイナミック性能も含め別個に行なわれた。先に言っておくと、ライドフィールはまるで違っている。イタリアで生産されてはいるけれども、デザインと性能は“実にアメリカ”なのだった。
日本に導入されるレネゲードは、ローンチグレードの“オープニング・エディション”を除いて、シンプルにFFの“リミテッド”と4WDの“トレイルホーク”という2グレード構成とした。もちろん、よりジープらしいのは、チェロキーと同じドライブトレインをもつ後者のトレイルホークで、2.4L直噴直4ガソリンエンジン+9AT+オンデマンド4WDシステムを搭載する。
売れセンは、前者のFFモデル、リミテッドになるだろう。アメリカンモデルらしいぴかぴかのグリルと、ほどよくラグジュアリーでカジュアルなシートなど、タフネスさをアピールする4WDモデルよりも、価格や経済性も含め、多くの人に受け入れられそうだ。
それゆえ、FF車のライドフィールはいかにも乗用車的である。粘着質な動きと下半身の強さが特徴のトレイルホークに比べて、すべてにわたり軽快だ。そういう意味では、最新のチェロキーFFと同様に、走りの質の根底にはヨーロッパ車流を感じてしまう。決して悪いことではないし、その方が気持ちいいのだけれども、生粋のジープファンは違う反応をみせるかも知れない。
それでも、フィアット500Xよりはアメリカ車っぽいのだから、面白い。わずかな“ゆるさ”が、そう感じさせるのかも知れない。レネゲードFFを単独で乗っていれば欧州車っぽいと思うし、フィアット500Xと乗り比べればアメ車だと分かる。ここにも、グローバルカー造りの微妙なさじ加減があった。
すでにフィアット車ではお馴染みの、1.4L直4マルチエア16バルブターボエンジンが、6速のデュアルクラッチミッションに組み合わされて積まれている。これもまた、ごくごく標準的なヨーロッパスタイルである。実用的には問題なく力強く、DCTの小気味いい変速とあいまって、街中では“ジープ”に乗っているとはまるで思えない、軽やかなステップを踏んで走る。コンパクトカーとして、十分に現代的な走りをみせてくれた。
惜しむらくは、インテリアの見映え質感が、良くも悪くもアメリカンテイストのまま。一部のブランドでは変化の兆しが見えるとはいうものの、未だたいていファストフード店並みの設えであることを思えば、きっとアメリカ人のインテリアに対する欲求要望期待が、“そういうものであること”なのだと諦める他ない。だったら、いっそ、もっとシンプルにデザインしてくれれば、悪目立ちすることもないだろうに。
ちなみに、イタリアでは大ウケなのだそう。確かに、骨太なイメージをカジュアル&カラフルに“遊ぶ”感覚は、とても洒落ていると思う。「こんなのジープじゃない」という、マニアの声はこの際、無視するとしよう。何といっても、コイツは“裏切り者”なのだから。